247ールルウィン祭 夜の部 1
防御壁の外だから、魔獣が出るかも知れないという事なのだろう。防御壁の内側には魔獣はいない。そんなに危険な獣だっていない。
防御壁の外は、お墓参りの時も道中魔獣が出てきた。
「ロロは分かってないね?」
「れおにい、わかってるのら。ボクもぶき、もっていくのら」
「ぶふふッ」
あ、笑ったね。笑いたい気持ちは分かるけど。
「ロロの武器って、アレ?」
「リア姉、ぴこぴこはんまー」
「おう、俺も持って行くぞ」
そうなのだ。俺達だって武器があったら戦うのだ。
ララちゃんは意味が分からず、心配そうな目をして見ている。
「ろろ、あぶないのよ」
「らいじょぶなのら。ぴかもいるのら」
「わふん」
「キュルン」
あ、お久しぶりに登場のチロさんだ。ピカと一緒にお肉を貰って食べている。
まだまだ、よく寝るのだけど。ほんの少し大きくなったのだ。
「しかしなぁ、その小さな蛇が神獣だとはな」
最初にチロを見た時の、クリスさんの反応が面白かった。
「はふぇッ!?」
と、変な声を出して、お目々をまん丸にしていたのだ。
チロは小さいけど、回復できるからね。怪我しないようにもしてくれるし。
でも、それは秘密なのだ。
「くりしゅしゃん、ひみちゅなのら」
「なんだ、ロロ」
「チロがかいふくれきるのは、ひみちゅなのら」
「ロロ、言ってるじゃない! アハハハ!」
ディさんに爆笑されてしまった。
「あ、ひみちゅなのら」
「プハハハ! 秘密が多いなー!」
クリスさんまで笑っている。もう慣れたのかな? 驚かなくなったのだ。
プチゴーレム達はお留守番して家を守っていると言っていた。
フォーちゃん達は行く気満々だった。
後は、クーちゃん。お庭でお野菜を貰って、小亀さん達と一緒に食べている。
リア姉とレオ兄も強い。多少の事は大丈夫なのだ。
夕ご飯を食べて、それからみんなで川へと向かった。
夕焼けだったお空は、俺達がご飯を食べている間にもうすっかり夜の色になっていた。
お外は夜の匂いがする。緑の匂いに、少しお花の香りが混じっている。
こんな時間にお外に出る事がないから、まだまだワクワクが続くのだ。
リア姉とレオ兄と手を繋いで歩く。
「ふわぁ~」
「ロロ、眠くなっちゃったかしら?」
「りあねえ、らいじょぶなのら」
「いつでも抱っこしてあげるわよ」
ふふふ。リア姉の抱っこには漏れなくほっぺにスリスリと、お腹をモミモミが付いてくるからなぁ。
「ロロ、ララ、川で何をするのか知っているかな?」
前を歩くディさんが振り向きながら聞いてきた。
「おはなをながしゅのら」
「はっぱで、おふねをちゅくるのよ」
「そうだね、葉っぱで作ったお舟に花と小さな魔石を乗せて流すんだ。覚えているかな?」
と、ディさんが話してくれた。
前もディさんが教えてくれた。邪神との戦いで沢山の命が失われた。その鎮魂の意味と、これ以上は入ってこないようにと結界の意味もあるのだと。
「忘れてはいけないよ。みんなが笑って暮らせるのも、その時に戦い守った人達がいたからだ」
「うん、でぃしゃん」
「わしゅれないのよ」
「二人共、良い子だ」
家から少し歩くと、お墓参りの時にも通った防御壁に着く。いつもなら身分証明を見せないと通れないのだけど、今日はみんなスルーだ。
防御壁の門のところには衛兵さんが立っている。だけど、お気をつけて~とか言っているだけなのだ。
でも、俺達が通る時にビックリしたお顔をされた。何故なら。
「ピヨピヨ」
「クック」
「ピヨヨ」
そうなのだ。フォーちゃん達がトコトコと付いて来ているからなのだ。
「レオ! リア! それ、それッ!」
と、衛兵さんがリア姉とレオ兄に大きな声で聞いていた。
「アハハハ、気にしないでください」
「ふふふふ」
「いやいや、普通気にするだろう!」
「大丈夫ですよ。うちのペットみたいなものです」
「ペ、ペ、ペットってか!?」
フォーちゃん達で驚いていては駄目なのだよ。
まだまだ上手がいるのだ。
俺達の直ぐ後ろを、ガラガラと荷台を引いているドルフ爺。真打ちの登場なのだ。
「ド、ド、ドルフ爺!」
「おう、すまんな」
ほら、びっくりしている。
その一連を見ていた、クリスさんとディさんはお腹を抱えて笑っている。
フィーネ達まで大爆笑なのだ。でもドルフ爺の優しさなのだよ。
「もう、ロロ達は最高だよ!」
「いや、とんでもないぞ!」
俺ではないのだ。ドルフ爺なのだ。
「ドルフ爺! 何乗せてんだよ!」
「ああー? 亀だよ。見て分かんねーか?」
「そういう事じゃなくてだな!」
「大人しいから大丈夫だ。川で泳がせてやりてーんだ」
「おいおいおいおい!」
ふふふふ。ほら、流石ドルフ爺なのだ。とっても面白い。
「かめしゃん、おとなしいの?」
「しょうらよ。くーちゃんなのら」
「くーちゃん!」
「しょうなのら。おはなしれきるのら」
「ええッ!? そうなのか!?」
「アハハハ! ロロ、ほらまた秘密だよ」
「あ、ひみちゅなのら」
全然秘密になっていない。
ディさんが笑い過ぎて、涙を拭いていたりする。そんなに面白いかな?
クリスさんは驚いているぞ。
「あの亀さんは聖獣なんだよ」
「ディさん、せ、聖獣って!? 森に聖獣はいないはずだ。もしかして進化したのですか!?」
「そうなんだよ。ロロがテイムした時に、進化しちゃって。アハハハ!」
ずっと笑っているのだ。ディさん、秘密なのだよ。




