246ー夕ご飯
ディさんの側にはセルマ婆さんがいた。
「あら、ロロちゃん」
「しぇるまばあしゃん、たらいま」
「はい、おかえりなさい。楽しかったかしら?」
「うん、たのしかったのら」
ふふふ、セルマ婆さんの雰囲気は好きだ。ほんわかするから。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。ロロちゃんのお友達かしら?」
「うん、しょうなのよ。ららなの」
「ララちゃん、可愛らしいわね」
人見知りもしないみたいだ。
「仲良しになったのね~」
「おともらちなのよ~」
セルマ婆さんとララちゃんって似てないか? ほんわかした雰囲気が似ているのだ。
ディさんはまだお野菜を吟味中だ。今日また食べるつもりなのだろう。
コッコちゃんの卵を食べたいとクリスさんが言ってたから晩ご飯に出るだろうな。
「ピヨピヨ」
「ククッ」
「ピヨ」
フォーちゃん達が走って来たのだ。なんだか張り切っていないか?
「うん、ららちゃんなのら」
「ピヨヨ」
「うん、夜ね」
「クック」
「ピヨ」
「れも、はぐれないようにしゅるのら」
「ピヨヨ!」
はいはい、分かったのだ。夜は一緒に行くアルよ! と、念押ししてきたのだ。
良いのだけど、逸れたら駄目だよ。
もしも、悪い人に掴まったら食べられちゃうのだ。
「ピッ!?」
「しょうらよ」
「ピヨピヨ~」
「クック~」
そんな奴はやっつけるアルね! キックするアルね! なんて強気な事を言っている。
だから、それよりも逸れないように付いて来るのだ。
「ろろはとりしゃんと、おはなしれきるのね?」
「しょうらよ、ボクはていまーらから」
ふふふん、ちょっぴり自慢なのだ。
「ていまー?」
「しょうなのら。ていまーらと、おはなしれきるのら」
「ららも、ていまーになるのよ!」
「うん、いっしょら」
「坊ちゃま! ご飯ですよ!」
「わかったのら!」
マリーが家の前から大きな声で呼んでいる。
「でぃしゃん、かえるのら」
「うん、そうだね。お野菜あらわなきゃ」
どんどんお空が夕焼け色に染まって来る。ララちゃんのお顔も、茜色に照らされる。
ピカが歩く度に、ふんわりとした髪が揺れる。心がほんわかするのだ。
「よるのおまちゅりは、ろんなのかな~?」
「ロロ、眠くない?」
「うん、らいじょぶなのら。ららちゃんは?」
「ららも、らいじょうぶなのよ」
「よるもいっしょにいくのら」
「うん、いっしょなのよ」
今日はとっても良い日だと思うのだ。
夕ご飯に、ドドンとマリー作のコッコちゃんの卵を使ったとろふわオムレツが出たのだ。
俺達は毎朝食べている。だからもう、別段珍しくもない。
「おおー! これがフォリコッコの!?」
と、クリスさんは感動していた。
「とろとろれ、ふわふわなの~!」
ララちゃんも美味しそうに食べている。
ディさんは相変わらず、自分で採ってきたお野菜の特盛サラダを満足気に食べている。
「これは、父上と母上にも食べさせてあげたかったな」
「本当ですね」
「マリー、腕を上げたんじゃないか?」
「あらあら、マティ様。有難うございます。今日街にお泊りなのでしたら、明日の朝産む卵を持って帰られますか?」
「それは有難い!」
なんて、マリーが話している。
とっても賑やかだったのだ。
いつもなら夕ご飯を食べると直ぐに眠くなってしまう俺なのだけど。
今日は頑張るのだ。まだお祭りが残っている。
「まだ早いから少し眠っても大丈夫だよ?」
「れおにい、らめ」
「駄目なの?」
「しょう。いくのら。おまちゅり」
「アハハハ、じゃあそうしよう」
フォーちゃん達も張り切っているしね。夜はドルフ爺がクーちゃんを連れて行くのだろう? 大変だ。重いぞ。
「クーちゃんを、川で泳がせてあげたいんだって言ってたわよ」
「いけに、はいれないから」
「ふふふ、そうね」
「あの亀さんは大きいな」
「捕まえたの?」
クリスさんとフィーネが聞いてきた。
「もりからきたのら。のっしのっしって」
「えぇ!?」
「アハハハ!」
またレオ兄が笑っている。最近、本当によく笑うようになった。良い事なのだ。
「森からやって来たのよ。畑の野菜を食べようとしていたの」
「そうなの!?」
「しょうなのら。のっしのっしって。おしょいのら」
「ふふふ、大きいものね」
大きくて重い。そのクーちゃんを連れて行こうなんて、ドルフ爺は本当に優しい。
その為に荷車を作るなんて、俺は思いつかないぞ。
「リアとレオは冒険者なのだろう?」
「はい、そうですよ」
「ランクはフィーネと同じなのかい?」
「いえ、僕と姉上はCランクに上がったんです」
「「ええぇッ!?」」
フィーネとマティの声がハモッたのだ。知らなかったっけ?
そういえば、フィーネ達がいた頃はまだDランクだった。
俺は食べるよ。ララちゃんも、モグモグとお上品に食べている。
貴族の女の子って、ちびっ子の頃からお上品なのだね。俺みたいに、ほっぺに付いていないのは何故なのだろう?
「ほら、ロロ。ほっぺについてるぞ」
「ん、らってちゅくのら」
ニコ兄がいつもの様に拭いてくれる。
「Cランクか。それは強いな。二人共、川へは念のため自分の武器を持って行くんだよ」
「え? そうですか?」
「ああ。みんなが行くと言っても、防御壁の外だからな。もしも何かあったら冒険者は出ないといけない。もちろん、私達も出るが」
クリスさんも強いのだろうな。だって、騎士団の副団長だと聞いた覚えがある。




