243ールルウィン祭 7
「でもこれで、ピカをどうにかしようなんて奴はいなくなるよ」
「でぃしゃん、しょう?」
「そうだよ。みんながロロのワンちゃんだって知っているからね」
「なるほろ~」
教会ではビオ爺が待っていた。一緒に馬車に乗っている俺達を見てびっくりしていたのだ。
「なんだ、ロロも乗っていたのか?」
「しょうなのら」
「アハハハ! そりゃあいい!」
よくないのだ。
「ロロもララも可愛いかったよ」
「でぃしゃんは、いちばんきれいらったのら」
「そう? ありがとう」
ララちゃんと順に馬車から降ろしてもらっていると、みんながやって来た。
リア姉達やフィーネ達もみんな一緒だ。
「ララ! 心配したぞ!」
「とーしゃま! たのしかったのよ~!」
フィーネのお兄さんだろう人が、ララちゃんを抱き上げる。
「そうか! 楽しかったのか! アハハハ!」
ララちゃんを抱き上げ、そのままくるくると回った。
良かったのだ。俺の服を握って泣いていた時は、どうしようかと思ったのだ。
「ロロ、おつかれさま」
「りあねえ、びっくりなのら」
「ふふふ、そうなの?」
「しょうなのら。ボクがのるなんて」
「でも、見つかって良かったじゃない」
「うん、よかったのら」
リア姉が俺を抱っこしてくれる。俺の家族なのだ。
◇◇◇
俺が馬車に乗った頃だ。
俺達を、物陰から見ていた人がいたなんて全然気づかなかったのだ。
「やっと見つけた」
「はい、確かに」
二人の旅人らしき男性。フードを被っているが、一人の男性は藍色の長い髪が見えていた。
◇◇◇
「ディさん、この子達ですね」
「そうだよ。よろしくね」
ララちゃんのお父さんが、俺達を見た。
大きくてガタイがいい。でも、ギルマスやオスカーさんとも違う。やっぱ貴族なのだ。
着ている物が違うという事だけではなく、纏っている雰囲気が違うのだ。
フィーネと同じ色でサラサラの髪を短くしていて、ララちゃんと同じ藍色の瞳の爽やかさん。熱血だとは思えない。優しそうな人なのだ。
「アウレリア・レーヴェントです。この度はお世話になります」
リア姉が、とっても丁寧にお辞儀をした。家名まで言うのは滅多にないことだ。こうしていれば、ちゃんと品のある綺麗なお姉さんなのだ。
「レーヴェント家のご令嬢だね。君達の事はフィーネとマティから聞いているよ。私にできる事なら力になろう」
「有難うございます。僕はレオナルト・レーヴェントです。次男のニコラウスと……」
「ろろなのよ!」
ララちゃんが横から俺を紹介してくれた。ちょっぴり恥ずかしい。
「アハハハ、はい。末っ子のロロアールドです」
「こんちは~」
「はじめまして」
俺とニコ兄も挨拶をした。流石に手をフリフリするのは止めておいた。
「ララが世話になったね。ロロくんか」
「ろろれいいのら」
「アハハハ、そうかい? ロロ、有難う」
「いいのら」
マリーとユーリアも紹介して、俺達はディさんも一緒に『うまいルルンデ』に移動した。
エルザは忙しくしているのかな? 『うまいルルンデ』は忙しいだろうなぁ。
ララちゃんはずっと抱っこしてもらっていた。
「わふ」
「ぴか、いいのら。あるくのら」
「わふん?」
「へいきなのら」
人が多いから大丈夫? て、心配してくれている。でも、レオ兄やリア姉と手を繋いでいるから大丈夫だ。
まだまだ街はお祭りなのだ。
『うまいルルンデ』の中はお客さんでいっぱいだった。みんなコッコちゃんの卵料理を目当てに来ているらしい。オスカーさんが大きな声で言っていた。
「すんません! フォリコッコの卵料理はもうないんだ! 売り切れだ!」
するとお客さんから、ええー! と、声が上がる。仕方ないのだ。限りがあるのだから。『うまいルルンデ』は他のお料理も美味しいぞ。
「なんだ、もうないのか。食べたかったのに」
と、残念がっているのはフィーネとマティのお兄さんで、クリスティアス・アウグストさん。
「クリスでいいよ」
と、言っていたからクリスさん。フィーネより4歳上のお兄さんだ。
「ねえ、リアの家にないの?」
「え? コッコちゃんの卵? どうかしら? マリー」
「はいはい、ありますよ。食べにいらっしゃいますか?」
「マリー、本当!? いいの?」
「はい、構いませんよ」
「ええッ!? いいのか!? それは嬉しい!」
それは良かった。
でも、俺は少し休憩したいのだ。
ジュースを飲んでも良いかなぁ?
「ロロ、疲れたかな?」
「れおにい、おのどがかわいたのら」
「あらあら。ジュースをたのみましょうか?」
「うん」
「ららも、のみたいの」
ふふふ、可愛いのだ。
「いっしょにのむのら」
「うん」
あらあら。と、言いながらマリーが見ている。
エルザがお水を持って来てくれた。
「いらっしゃい。ロロ坊ちゃま、パレードの馬車に乗ったんですって?」
「しょうなのら。びっくりなのら」
「ふふふ、見たかったです」
見なくて良いのだ。もう恥ずかしい。
「エルザ、僕いつものちょうだい」
「はい、ディさん」
いつものなんて注文をしている。常連さんなのだろう。
きっと特盛サラダだぞ。絶対にそうなのだ。
「ロロ、当たりだよ」
「しょうらとおもったのら」
俺達はジュースを貰って、ディさんは特盛サラダをシャクシャクと食べていた。
その間リア姉とレオ兄は、クリスさんとお話しをしていたのだ。




