233ーフラグ
「ロロ、起きられたのか」
「うん、れおにいに、おこしてもらったのら」
「アハハハ、そうか」
「君がニルス?」
「おう、そうだぜ。ロロの兄ちゃんだよな?」
「そうだよ、レオって言うんだ」
「レオ兄ちゃん、Cランクなんだろう!?」
「あら、私もCランクよ」
「スゲー!」
おやおや、ニルスがまるで推しを見つめるような眼差しで、リア姉とレオ兄を見ている。推し活のための、うちわでも作っちゃうか?
ニルスからしてみれば、Cランクの冒険者なんてきっと憧れなのだろう。
「いつもロロと遊んでくれて有難う」
「全然良いよ。俺も楽しいんだ」
「ふふふ、お兄さんね。ありがとう」
「いや、マジで。かっちょいいな!」
レオ兄の手を両手で握って、ブンブンと振っている。ニルスも男の子なのだ。強い冒険者には憧れちゃうよね。
俺も大きくなったら、強くなる予定なのだ。未定なのだけども。
「男の子には白色の花の花冠ですよ。リアちゃんとマリーさん、ユーリアには黄色のレイです」
そう言って、ハンナが掛けてくれた。
その花冠は、ちびっ子の俺には少し大きい。ちょっぴり恥ずかしくて、リア姉の足にしがみ付いた。
「あら、ロロったら恥ずかしいの?」
「しょんなことないのら」
なんて言いながらもお顔を隠す。
「ピカちゃんにも花冠をあげましょうね」
「わふん」
ピカさん、お似合いなのだ。女神様と同じ、プラチナブロンドの毛にとっても映える。
「ぴか、かっちょいいのら」
「わふ」
ふふふ、少し照れ臭いよね。
「はい、これは女神様に飾り付けてくださいね。こっちは広場の精霊様の像の分です」
「はんな、ありがと」
「はい。楽しんでくださいね」
「うん」
其々に花冠とレイを貰って、教会の中を見回した。ビオ爺は何処にいるのかな?
て、いたいた。女神の像の前で、街の人達に囲まれているのだ。
年に一回の出番なのだもの、頑張ろう。
「ロロ、手を繋いでおこう。人が多いから危ないよ」
「うん、れおにい」
レオ兄に手を引かれて、ビオ爺のいる女神様の像のところへと行く。
「おう、ロロ。来たか」
「うん、びおじい。がんばって」
「アハハハ、頑張るさ」
そうだよ、今日くらいは不良司祭なんてやってないで頑張ろう。
「女神様の足元に置くんだ」
「うん、れおにい」
俺達が花を置こうとした時だ。女神像の上にあるステンドグラスから、朝日が入ってきて虹の様な神秘的な光に照らされた。その光の中、女神像にお花を置いて礼拝する。
『よく来てくれました〜! 楽しんで下さい! ただしぃ、夜は要注意ですよーぅ……よーぅ……よーぅ……』
え……? 今泣き虫女神の声が聞こえたのだ。俺は思わずキョロキョロとしてしまった。
「ぴか、きこえた?」
「わふん」
「ロロ、どうした?」
「なんれもないのら」
ピカが、ロロにしか聞こえてないよ。と、言った。
態々、俺に声を掛けてくれたのか?
それにしても、こんな時でも泣き虫女神らしい。声がエコーの様に消えて行くなんて、まるで時間切れの時みたいなのだ。
「けろ、ぴか。らいじょうぶなの?」
「わふ」
僕がついているから何があっても大丈夫だよ。と、とっても男前な返事をくれたピカ。
でも、これって完全にフラグが立ってしまったよね。とにかく、夜は気をつけよう。
「ロロ、行くよ」
「うん、れおにい」
気をつけるよ。泣き虫女神、有難う。
俺は心の中で、そう思った。女神は干渉できないと、前に話していた。それでも、伝えようとしてくれたんだ。
ちょびっとだけ、好感度をアップしておこう。
広場に戻って、鳥さんの像に花冠とレイをかける。俺は届かないから、レオ兄に抱き上げてもらった。
いつも、低い目線からしか見ていなかった鳥さんの像。レオ兄に抱っこしてもらって、ゆっくりと見た。可愛らしい、ふくよかな鳥さんなのだ。お胸の部分がまん丸なのだ。
真っ白な石でできているのか? 白い鳥さんの精霊だと言い伝えられているから、像も白くしたのだろう。
尾羽を孔雀の様に広げている、この街の人達を救った精霊の鳥さん。
女神が干渉できないから、苦肉の策だったのかなぁ?
「きれいな、とりしゃんなのら」
「そうだね、とても立派な尾羽だ」
「あたまも、かんむりみたいれ、かわいいのら」
「冠かぁ、本当だね」
鳥さんの像はあっても、一緒に戦った四英雄の像はないのだね。
「そんな恥ずかしい事は止めて欲しいと言ったんだよ」
「でぃしゃん」
後ろから声がしたと思ったら、ディさんだったのだ。
今日は、ずっと会えないかと思っていたのだ。だって、ディさんはパレードに出る人だから。
「おはよう。ロロ、花冠が似合っているよ。よく起きられたね」
なんだか、みんなに言われてないか? 俺も同じ事を繰り返し答える。
「れおにいに、おこしてもらったのら」
ディさんが、俺の頭を撫でてくれる。朝日に当たって、ディさんの淡いグリーンブロンドの髪が宝石を散りばめたように光っている。
「午前中は雨も降るから、その後から賑わうよ。一度家に帰って少し眠るといいよ」
「しょうなの?」
「うん、パレードもお昼過ぎからだよ」
お昼過ぎなのか? それはヤバイのだ。どうしよう。
「ロロ、ピンチだね。アハハハ」
レオ兄は分かっていて笑っているのだ。俺はお昼を食べると眠くなっちゃう。




