225ーロロ!?
(レオ視点)
「なんだ、レオ。何考えてんだ?」
「いや、ロロのお陰だなってね」
「アハハハ、ロロか!?」
だってギルマスやディさんと、こんなに懇意にしてもらう切っ掛けもロロだ。
領主様の事もだし、オスカーさんや、ビオ爺だってそうだ。
それに、ドルフ爺とセルマ婆さんだ。俺達の事を自分の孫の様に心配してくれる。
ロロを外に連れ出してくれた。ニコを畑に誘ってくれた。
僕達は、色んな人達に支えられているんだ。僕の力なんて大した事ない。
「お前達はよく頑張っているさ。だから大人が手を貸したくなるんだ」
「ギルマス、ありがとう」
帰ったらマリーに報告しなきゃ。マリーも気にしているから。
先ずは『ルルウィン祭』だ。去年はそれどころじゃなかったけど、今年はみんなで行こう。ロロも楽しみにしているから。
ギルマスとの話を終えて、姉上と家に急ぐ。今日はニコとロロは何をしていたのだろう?
「早くニコとロロの顔を見たいわ」
「ふふふ、姉上は本当に好きだね」
「当たり前じゃない、可愛い弟だもの」
僕もその弟だって覚えているかなぁ?
家が見えて来た。遠目でみると池の近くに、ロロとピカがいるのが分かる位の距離まで帰って来た。
歩きながら、そのロロを見ていたんだ。
いつもの様に「ただいま!」と、声を掛けようとした時だ。
「とおッ!」
――きゅぽん!
と、大きな声を出したかと思うと、手に持っていた何かで力一杯地面を叩きつけた。あれは何を持っているんだ?
「え……!?」
「やだ、ロロったら何しているのかしら? 可愛い!」
呆気にとられて、思わずジッと見ていると。
「たあッ!」
――きゅぽぽん!
何だろう? 池の端で何かを叩いている。あの手に持ったものは何だ?
ロロは側にいたピカに、よいしょと乗ったかと思うと畑の中へと走っていった。
「ぴか! すぴーろあっぷなのら!」
「わふん!」
ロロの声通りにピカがスピードを上げて走って行く。
ああ、ロロが何かを持った片手を挙げている。危ないから、両手で手綱を持って欲しい。
「え!? ちょっとレオ。ロロったら速くない? ピカは早く走り過ぎよ、危ないじゃない!」
「姉上、よく見て。ピカがハーネスをしているよ。だからロロは手綱を持っているんだ」
「それにしても、ロロは片手を挙げているじゃない。あの速さはないわよ」
「確かに、そうだね」
ちょっと焦った僕と姉上は、走って帰った。
姉上が言う通り、あの速さはないだろう。畑の中をピカに乗って駆け抜けて行く。
ピカが全速力じゃないのは分かる。それでも速い。乗っているロロの髪が靡いているじゃないか。
いつの間にあんな速さで走っているピカに、乗るようになったんだ?
僕は知らないぞ。しかも、ロロは慣れてないか? もしかして、ロロを乗せる為にピカは側で待っていたのか? 今迄も乗っていたのか?
そして、ロロの大きな声が聞こえてきた。
「どーるーふーじいー!!」
「わおーん!」
ピカも一緒になって、ドルフ爺を呼んでいる。
ああ、ほら。直ぐにドルフ爺が駆けつけて来た。2人で何かを話していたかと思ったら、戻って来た。ドルフ爺が先頭を切ってダッシュしている。
いやいや、ドルフ爺。どうしてだよ。走らないで歩こうよ。
ロロに危ないと注意してほしい。
お願いだから、走ったりしないで。
ドルフ爺と、ピカに乗ったロロが畑の中を爆走じゃないか。
ああ、もう心臓がキュッてなるよ。とにかく早く家に戻ろう。ロロに注意をしないと。
◇◇◇
ピカの背中に乗ったまま、俺はドルフ爺を大きな声で呼んだ。
「どーるーふーじいー!!」
「わおーん!」
ピカも一緒に呼んでいるつもりだ。風を切って走るピカさん。かっちょよくて、超気持ちいいのだ!
ピカは勢いよく地面を蹴って、全身の筋肉を使って走って行く。
俺は、自分ではこんなに速く走れない。俺の短い髪も靡いている。おでこを撫でていく風が気持ち良い。
それでもピカさんは、全然全速力じゃないのだ。俺が乗っているから、ちゃんと加減してくれている。背中が出来るだけ上下しないように、揺れないように走ってくれている。
ピカのハーネスが、とっても良い感じなのだ。手綱を持っていられるから、乗っていて安定する。
俺は毎日ドルフ爺に頼んで、ピカにハーネスを着けてもらっていた。ピカに乗って走るのも、もう慣れたものだ。
俺は気分良く、ピコピコハンマーを持った手を掲げる。なんだかヒーローになった気分なのだ。ふふふん。
あ、ドルフ爺が走って来た。
「おう、ロロ。どうした!?」
「どるふじい、またいたのら! まんどらごら!」
「そうか! 殴ったか?」
「うん! ばしこーんしといた!」
「よし! 行くぞ!」
「おー!」
それからドルフ爺の後を追いかけて、ピカに乗って爆走だ。ドルフ爺って走るのが速いのだ。
もうおじいちゃんなのに、どうしてそんなに速く走れるのだ? やっぱドルフ爺は普通じゃない。
池の側に戻って来て、ドルフ爺に見てもらっていた。
「ロロ!」
「ロロ! 危ないじゃない!」
あ、リア姉とレオ兄が帰って来た。
「おかえりー!」
と、いつも通りに俺は手を振った。どうした? 何を焦っているのだ? マンドラゴラかな?
俺がバシコーンと殴って気絶させたし、もうドルフ爺を呼んだから大丈夫なのだ。




