224ー手紙(レオ視点) 2
「あー、なんだ。戸惑うかも知れないが、こういう家系なんだ。言ったろう? 親父さんは熱血だって」
「お兄さんもなの?」
「親父さんほどじゃないが、熱血は血筋だろう。人情に厚く、曲がった事が嫌いで正義感が強い」
それに、放っておけないんだろう。と、ギルマスが言った。
僕達の事を知らないのに? 会った事もないのに?
有難い事なんだけど、僕達はそんな貴族を知らなかったから驚いたんだ。
フィーネのお兄さんがくれた文。そこにはフィーネとマティの命を助けてくれて、感謝してもしきれないと、丁寧なお礼の言葉がびっしりと書かれてあった。
流石、熱血だと言われる人だ。
あれは、ロロだ。偶々いつもポーションを持っているロロが、ピカと一緒にギルドの近くを通ったからだ。
お礼を言われるほどの事じゃないのに。
それに、是非とも僕達に会いたいとあった。我が家にみんなで遊びに来て欲しいと。『みんなで』だ。
ニコやロロだけじゃなく、マリー達も入っていた。それどころか、ピカにも会いたいって、フィーネは一体どんな話をしたのだろう?
その前に、ルルンデのお祭り『ルルウィン祭』で会おうとあった。え? 来るって事なのか?
「いいじゃねーか。みんなで会うと良いぞ」
「でも、ギルマス。僕達はもう貴族じゃないから」
「それはあの人達には関係ねーんだ」
そんな事はない。あるはずがない。貴族と庶民の間には、見えない高い壁があるんだ。
それを僕達は1年前に思い知ったのだから。
「いいや、そういう人達なんだ。俺にだって気さくに話してくれる。貴族や庶民とかじゃなくて、その人自身を見てくれるんだ。少なくとも俺はそう思っている。フィーネとマティだって、お前達が庶民でも気にしなかっただろう? それにお前達は二人の命を救っている」
ギルマスは言わずもがな『ギルドマスター』だ。ダンジョンで繁栄しているこの街のギルド長だ。
だから、何かで会ったりする事もあるのだろう。
でも、僕達は違う。家を追われた、ただの庶民だ。
フィーネ達の事だって、偶々ポーションを持っていただけなのに。
「毎年、アウグスト卿は祭りに来ているぞ。だから気にするほどの事じゃねーよ」
「そうなの?」
「ああ。四英雄の話は知ってるか?」
四英雄、何百年も前にこの街を救い、延いては国を救ったとされる四人の英雄の事だ。
その事を忘れないように、との意味もあるお祭りだと聞いた事がある。
「武官家系は、女神様と同じくらいに崇拝しているんだ」
「武官家系だからなの?」
「単純にそれもある。だが、この国を救ったんだ。それにルルンデが堕ちたら、次はアウグスト領だった」
なるほど、そうか。自分達の領地が守られたって事にも繋がるのか。
でも、残念な事も書いてあった。
調査の申立てをするにはアウグスト伯爵と、領主のフォーゲル子爵だけでなくあともう一人は貴族の者が必要だと。
あと一人と言われても、僕達に貴族の当てはない。やっとここまできたのに、こんなところで躓くのか?
「リア、レオ。俺も手を貸そう」
「え? ギルマス? 何言ってるの? ギルマスって貴族に知り合いなんているの? いないでしょう?」
姉上ったら、ストレート過ぎる。失礼だよ。
「だって、レオ」
「それがな、大っぴらには言ってないんだが俺も一応貴族なんだよ」
「「ええーッ!?」」
「なんだよ、なんでそんなに驚くんだ?」
だって、ギルマスだよ? いつもパッツパツのシャツを着て、ツンツンした赤髪の頭に大きなサングラスを乗せている無精髭の厳ついおじさんじゃないか。
「ま、俺一代限りなんだけどな」
ギルマスは一代貴族といって、一代限りの爵位らしい。それでも確かに男爵位を拝命していて、貴族簿にも載っているのだそうだ。
一代貴族とは、何か武功を立てたり国に貢献した者に送られる爵位。
ギルマスは、今から数十年前に起きたスタンピードの時に、活躍した事で叙爵されたのだそうだ。
その時はまだ現役バリバリの冒険者だったギルマスは、組んでいたパーティーと一緒にスタンピードの元である上位の魔物を倒した。
その功績もあって、引退後はこのルルンデの街のギルドマスターをしているのだそうだ。
そんな事、全然知らなかった。
今日一番のビックリかも知れない。思わず、姉上と一緒に声を上げてしまったよ。
しかもポカーンと口を開けて、少しの間思考が止まってしまった。
「ギルマス、本当に良いんですか?」
「おう、俺の使っていない貴族って立場が役に立つなら協力するさ」
「ギルマス、ありがとう!」
「本当なの? 信じらんないわ!」
だから、姉上。本当に失礼だよ。僕だってそう思うけどさ、言ってはいけないよ。
「アハハハ! まあ、そういう事だ。書類を作らないといけないし、貴族簿の閲覧の事も領主様に聞いておいてやるよ」
「よろしく頼みます」
「やだ、まだ信じられないわ」
「姉上」
「だって、レオ。ギルマスよ? 一番貴族から遠くない?」
「アハハハ! 俺もそう思うさ!」
男爵といっても、普段はギルマスだ。勿論社交なんてした事もないらしい。
ただ、数年に一度行われているギルドマスターの集まりには、必ず顔を出さないと叱られるらしい。
「ギルマスで貴族籍を持っている者ってのが、そういねーんだ」
「そりゃそうよ。ギルマスだもの」
「リア、お前本当に失礼だな! アハハハ!」
でも良かった。これで申立てができる。やっとだ。1年掛かってやっとここまでくる事ができた。
僕達には力がないと、思い知らされた1年だった。
結局は色んな人達に助けられた。その縁の発端がロロだと僕は思う。
お読みいただき有難うございます!
ギルマスが意外にも貴族でした。
少しこの場をお借りして。
毎日感想を頂くのはとても嬉しい事なのです。有難うございます!
ですが、感想欄に悪意を感じられるものや、登場人物を貶めるもの、校正の真似事をされるもの、あまりにも読むに耐えない感想を書かれた場合は削除させて頂いてます。また、その度合いによっては同時にブロックもさせて頂いてます。
どうか、不特定多数の方が見られるという事を忘れないで頂けますようお願い致します。
感想は本当に嬉しいのです!お待ちしてますよ〜!誤字報告も有難うございます!
今日も応援して下さる方は、是非とも下部↓にある☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします!
今日はハルちゃんです!
今はリリは待っている状態で、ハルちゃんの原稿チェック中なのですよ〜。




