221ーえ? 知らなかった?
「ロロ、何を考えてんの?」
「らって、でぃしゃん。にこにいもしゅごいのら」
「ロロだって凄いじゃない。プチゴーレムなんて僕でも作れないよ」
「え、しょうなの?」
「そうだよ。土属性魔法だけじゃなくて、付与魔法が必要だからね」
ほう、そうなのか。じゃあ、いいか。俺も凄いのか?
「まだちびっ子なのに、凄い事だよ。でもロロの能力は、秘密だって覚えているかな?」
「あ、わしゅれてたのら」
そうだった。ディさんと初めて会った時に、そんな事を言っていたのだ。偉い人に知られたら、俺は教会に連れて行かれてしまうって話していたのだ。
「ひみちゅ」
「そう、秘密だよ」
俺はぷにっと人差し指を唇に当てた。コロッと忘れてたよね。
そういえば、ピカやチロも秘密なのだ。ピカさん、大人しいね。暇なのかな?
「わふん」
「しょう?」
「わふ」
「もうちょっと、がまんなのら」
「わふ」
ピカは畑に興味なんてないのだろう。オヤツはまだかな? なんて言っている。きっとマリーが持たせてくれた、チーズケーキを早く食べたいのだ。
俺が土をコネコネしていた間に、マリーはチーズケーキを焼いてくれていた。
マリーのチーズケーキはふんわりしているのに、中はしっとりしている。ケーキの底に、レーズンを入れてあるのがまた絶妙に美味しい。
マリーは大雑把なのに、作るものは全部美味しい。
思い出したら、俺も早く食べたくなってきた。まだかな?
「ロロ、飽きちゃった?」
「でぃしゃん、おやちゅのちーじゅけーきがあるのら」
「ああ、そうだったね。早く食べたいのかな?」
「しょうなのら。ぴかも」
「おやおや、ピカもなの?」
「わふん」
「じゃあ、オヤツにしよう。ドルフ爺さん、ニコ、オヤツにしよう」
「おう!」
孤児院へ戻ると、ニルスが帰って来ていた。
「あ、ロロ! ディさん! 畑が凄い事になってるぞ!」
ドルフ爺とニコ兄が、作り直した畑を見たのだろう。そうだろう、見違えちゃうだろう。
「どるふじぃと、にこにいがしゅごいのら」
「そうなのか?」
「にこにい、にるしゅなのら」
「おう、いつもロロが遊んでもらってんだよな?」
そうそう。いつもマメに俺の世話をしてくれる良い兄貴分なのだ。
もう冒険者ギルドに登録もしているのだぞぅ。
「スゲーな! 俺も登録したかったんだ」
「え? まだなのか?」
「俺はまだ9歳だから、できないんだ」
「俺も最近したばっかだ」
同年代だから良いお友達になれるのではないか? ニコ兄はいつも大人に囲まれているから。いや、大人というよりも爺ちゃん婆ちゃん達にだ。
なにしろ一番歳が近いのは、5歳年上のユーリアなのだから。
「にこにいは、おやしゃいしょだてるのも、まほうもしゅごいのら」
「そうなのか!?」
「アハハハ、まあな〜」
おやおや、ニコ兄がちょっぴり自慢気だ。でもニルスだって、コッコちゃんをお座りさせた実力の持ち主なのだよ。
「ロロ、オヤツがあるんだろう?」
「しょうらった」
忘れていたよ。ピカさん、出してね。マリーが持たせてくれた、チーズケーキを入れた大きなバスケット。
マリーは張り切って焼いていたのだ。大きめのチーズケーキが、ホールのまま二つも入っている。みんなが沢山食べられるようにと、思ってくれているのだろう。
「わふん」
「まりーが、ちーじゅけーき、やいてくれたのら」
ふんわりしているだろう? 余熱を取って直ぐに、ピカに収納してもらっていたからまだほんのり温かいと思うよ。
ケーキの上の部分に、マリー印の焼印でもつけようか?
「まあ、美味しそうですね! みんなで食べましょうねー」
ハンナがそう言うと、ちびっ子がワラワラと集まってきた。
「ロロ、前よりちびっ子が増えてないか?」
「ふえたのら。こっこちゃんのたまごを、うってるから」
「ああ、なんかディさんが言ってたな」
俺はニコ兄とニルスの間に座る。特等席なのだ。
「ふふふん」
「なんだよ、ロロ?」
「にこにいと、にるしゅといっしょなのら」
「おう、一緒に食べよう」
「いつも遊んでくれているんだろ? ありがとうな」
「いいんだ。ちびっ子には慣れてるし、ロロは可愛いから」
ハンナがみんなにチーズケーキを切り分けてくれている。
忘れずにピカさんにもあげてほしいのだ。
「キュルン」
「ちろ、たべる?」
「キュル」
チロが俺のポシェットから、ヒョコッと顔を出した。最近は前よりも、起きている時間が長くなった。
前はずっと眠っていた。お墓参りに行った事も関係あるのではないかな? あの時はチロも大活躍だったから。
みんなが怪我しない様に、いつも魔法で補助してくれていたのだ。
「ロロ、それ……」
ニルスが俺のポシェットからお顔を出しているチロを指さしている。ちょっぴりお顔が引きつっているぞ。何故に?
「ロロ、チロじゃないか?」
「え、ちろ?」
おやおや? もしかしてチロを見るのは初めてだったかな?
こんなに何度も来ているというのに。普段チロはポシェットから、出ないようにしていたからかな?
オスカーさん達はとっくに知っているけど。実はチロもいつも一緒なのだ。
「ちろ。へびのあかちゃん」
「怖くないのか?」
「ニルス、平気だぞ。可愛いんだ」
「そ、そうなのか?」
「おう、チロも食べるんだろ?」
「しょうなのら」
ニコ兄が平気な顔で、当然の様にチロにチーズケーキを食べさせる。それをジッとみていたニルス。




