220ースーパー?
「ロロったら何で自慢気なんだよ」
「らって、にこにいなのら」
「アハハハ! 意味が分かんないよ」
「自分の兄ちゃんだって、言いたいんだろうよ」
ビオ爺が通訳してくれたのだ。うんうん、その通り。俺の自慢の兄なのだ。
「ビオ爺、また畑を作る時は呼んでくれ」
「ドルフ爺、すまんが頼むよ」
2人共『爺』なのに、お互いを『爺』と呼んでいる。これ如何に?
「ふふふ、ロロったら」
あ、ディさんは俺の心を読んだね?
「読まなくても分かるよ」
と、バチコーンとウインクをした。
あ、分かったのだ。きっとディさんも、俺と同じ事を考えていたからなのだ。
「ロロの周りにはスーパーなお爺さんがいるね」
「しゅーぱー!」
スーパー爺さんなのか!? あんまりゴロが良くないなぁ。
爺さんだけでなく、俺の周りには凄い人が沢山いるのだ。それの筆頭がディさんなのだよ。分かっているのかな?
俺にとってはヒーローなのだ。
だって、俺が攫われた時に助けに来てくれた。あの時、ディさんの顔を見て心から安心した。それに、凄くかっちょよかったのだ。
「そう? 僕なの?」
「うん、しょうなのら」
「嬉しいよー!」
ディさんに抱きつかれて、そのまま抱っこされてしまった。自分のほっぺを俺のほっぺにスリスリしている。これは……リア姉と同じ攻撃なのだ。
最近ディさんのする事が、リア姉に似て来たと思うのは俺だけなのだろうか?
「ビオ爺、裏も見ていいか?」
「おう、見てくれ」
ほらほら、ディさん。裏に移動するみたいだよ。
「ほら、ディさんも行くぞ」
「うん、ニコ」
ディさんが俺の自慢のほっぺでご満悦だ。俺を抱っこしたまま移動する。
まだ俺のお腹を、モミモミしないから許してあげるのだ。
「畑も作りたいんだが、木も植えたいんだ」
「ディさん、木はどこら辺りに植えるんだ?」
「そこの隅だよ。地下水脈の流れが、その辺りが一番良いんだ」
なんですとッ!? 地下水脈ですと!?
「ろうしてでぃしゃんは、しょれがわかるのら?」
「ん? だって僕はエルフだから」
またバシコーンとウインクが出たよ。あれだな、精霊眼だろう。そんな事まで分かるのか?
やっぱ精霊眼って良いなぁ~。
「じゃあ、畑を作るとしたらその木の辺りだな」
「そうだね、前の住民もその辺りに、小さな畑を作っていたみたいだよ」
「なんだ、そうなのか? なら此処も、土から作らないと駄目だな。木を植えてからだ。また声を掛けてくれ」
「そうだね」
ああもう、俺の周りは本当に凄い人ばかりなのだ。俺は恵まれているなぁ。
「ししょーが、いっぱいなのら」
「なにかな? ロロ」
「ボクのししょーが、いっぱいなのら」
「アハハハ、そうなの?」
「しょうなのら」
ニコ兄が建物の裏側を、見に行っていたかと思うとドルフ爺を呼んだ。
「ドルフ爺、ディさんも見てくれよ!」
「どうした?」
「何かな?」
家が建っている奥にも少し空き地があった。そこは雑草だらけになっている。俺の腰辺りまであるのではないか? ずっと放ったままだったのだろう。
「これってさ、薬草じゃないか?」
「ニコ、そうなのか?」
「どれどれ」
薬草となると、ディさんの出番なのだ。ドルフ爺は畑のプロフェッショナルだけど、薬草の事はよく知らない。薬草を実際に育てているのはニコ兄なのだ。
「本当だ。色んな薬草があるね。此処で育てていたのだろう」
「そうだよな」
「ニコ、此処の薬草をそのまま生かせる?」
「ああ、もちろんだよ。これだけあるんだから、このまま育てないと勿体ないぞ。この裏側は薬草畑にできるな!」
「孤児院の新しい収入源になるね」
「ニコ、ディさん、そうなのか?」
「先ずは雑草と、選別しなきゃならないけどね。薬草はギルドに売れる」
おお、良いではないか。ディさん、俺を降ろして。ニコ兄を手伝ってあげて欲しいのだ。
「ロロ、大丈夫だよ。ニコ、できるだろう?」
「おう。任せてくれよ」
え? 何なのだ? と、思って見ていると、ニコ兄がまた地面に手を突いた。
すると、さっきと同じ様に地面がボコボコした。さっきよりもゆっくりと、土がふんわりするようにしている。
「薬草はデリケートだからだよ。薬草は根を使うものもあるんだ。だから根を切ってしまわないように、さっきより深く優しく掘り返しているんだ」
なるほど、これもニコ兄の経験なのだ。実際に家で薬草を育てているからこそなのだ。
それからまた籠に、薬草だけを選別してそっと入れている。
ドルフ爺も薬草と雑草の区別はできないから、ここまでニコ兄一人で黙々と進めて行く。
「ドルフ爺、いいぞ」
「よし」
ドルフ爺がさっきと同じ様に肥料を撒いていく。それをニコ兄が土属性魔法で耕す。ニコ兄が指示をして、ドルフ爺がさっきよりも低い畝を作る。薬草と野菜は違うのだろう。ニコ兄が薬草を植え直す。
この作業を流れる様なコンビネーションでやって行く。
ニコ兄は土属性魔法を、使い熟しているように見える。
「畑の土を耕したりするのは、お墓参りから帰って来てからやってたんだ」
なんだ、なら地面を掘るのだってお手の物じゃないのか?
「ロロ、掘るのと耕すのは違うぞ」
「しょう?」
「そうだぜ」
大して変わりないと俺は思うぞぅ。
俺なんて、土属性魔法といえば、コネコネだからね。なんだかちょっぴり落ち込むのだ。




