218ー夕ご飯のおかず
俺がコネコネして作っていたもの。それは……
「ぴこぴこはんまー」
「え?」
だから、ピコピコハンマーだよ。正式名称は『ノックアウトハンマー』て、言うのだって。知ってた? 俺は知らなかったのだ。
ちょっぴり可愛くアレンジして、円筒にした頭の部分と柄の境目に羽の様な飾りを付けている。コッコちゃんの手羽みたいな感じだ。いやいや、違うのだ。天使の羽と言ってほしい。
ちゃんと羽の部分には、木の枝で模様を描いてあるのだ。クオリティーに拘るのだよ。
なんなら円筒の側面に『5t』て書こうか? て、勢いなのだ。
俺の手に持てる程度の大きさだから、おもちゃみたいだ。
強く硬くと思いながら作ったから、ちゃんと武器になると期待しておこう。
「いいね、ロロの手に丁度良い大きさじゃない」
「ふふふん」
俺もなかなか上手に出来たと思うのだよ。でも土だから、『ピコン!』と音は鳴らないだろうな。そこが残念なのだ。
それに色だ。土だから土色なのだ。当たり前なのだけど。乾いたら色を付けようかなぁ。もう1個作ろうかな? ニコ兄の分もさ。
「あらあら、また土を弄っていたのですか?」
マリーとセルマ婆さんが出てきたのだ。
「俺は畑に行くぞ」
「どるふじい、らめ」
「ロロ、どうした?」
「あれ。まんどらごら、もっていって」
マンドラゴラを忘れてはいけない。ドルフ爺が、育てている一画に戻して欲しいのだ。
「ああ、忘れてた」
そんな緩い感じで良いのか? ドルフ爺は腰から鉈を取り出した。そして、池に歩いて行くと片っ端からバシコーンバシコーンとマンドラゴラを殴り出したのだ。
「ぴぇッ!」
俺は驚いたのなんの。思わず、側にいたディさんの足にしがみついたのだ。
全部で六つ。マンドラゴラを殴って気絶させたかと思うと、端からズボズボッと抜いて全部抱えた。いやぁ~んと、ちょっぴり色っぽい足がプランとしている。
「アハハハ!」
「しゅ、しゅごいのら」
「びっくりだねー」
ドルフ爺、手慣れている。一応、マンドラゴラは魔物なのだろう? 最弱ではないか?
クタッと気絶しているマンドラゴラ。お爺さんみたいなお顔はあるけど、むっちりとした白い体が美味しそうなのだ。
「まりー、いっこもらう?」
「あらあら、夕ご飯にしますか?」
「ぽとふがいいな~」
「美味しそうだ。バターで焼いても美味しいんだよ」
もうみんな、食べる事しか考えていない。魔物と言うよりは食料なのだ。
「一個食うか?」
「はい。夕ご飯にしますよ」
「よし」
ドルフ爺は迷いもせず、マンドラゴラにブスッと鉈をぶっ刺した。きゃぁ~。
「そら」
「はいはい、有難うございます」
夕ご飯に決定なのだ。
「他のお野菜を採ってくるよ!」
と、ディさんが畑に走って行った。
「ロロ、気絶させられなかったら直ぐに呼ぶんだぞ」
「うん、わかったのら」
俺はまだ力が無いからなぁ。ピコピコハンマーに期待なのだ。
午後からは、ドルフ爺とニコ兄も一緒に教会へ向かう。
いつもはマリーも一緒なのだけど、今日はお留守番なのだ。ピカとチロはもちろん一緒だ。
俺達の前をニコ兄が歩き、後ろからピカが付いて来る。完璧な布陣なのだ。
ドルフ爺とニコ兄は農具を持っている。ドルフ爺なんて軽々と鍬を担いでいて、肩から大きな袋も掛けている。ちょっぴり、かっちょいいのだ。
俺は珍しく、ディさんとドルフ爺と手を繋ぐ。
ドルフ爺の手は、大きくてゴツゴツとしているのだ。掌に、マメが沢山ある。しかもとっても硬くなっている。
毎日、畑仕事をしている人の手なのだ。
お昼寝もしたし、お天気も良い。午前中にあんな雨が降ったとは思えない様な、爽やかな青空が広がっている。
そよ風にのって、樹々の香りがしてくる爽やかな午後だ。
俺のテンションも、良い感じで上がっちゃうぞ。
こんな時は、スキップだ。もう恒例になっている。
「アハハハ! ロロ、スキップになってないぞ」
「え、にこにい、しょお?」
「そうだよ。見てな、スキップはこうするんだ」
え? 俺は完璧だと思っていたのだ。ニコ兄がお手本を見せてくれる。うぅーん、どう違うのか分からない。おれも、そうやってスキップしているつもりだぞぅ。
「ロロは足を前に上げ過ぎるんだよ」
ディさん、分かっていたなら言ってくれれば良いのに。今まで何も言わずに見ていたじゃないか。
「だって、ロロが可愛いからね」
そんな事は聞いていない。できていないのに、俺はとっても自慢気に毎回スキップをしていたのだよ? 恥ずかしいじゃないか。
「あげしゅぎる?」
「そうそう。ニコを見てごらん」
スキップスキップ、ランララ~ン。て、感じでとっても軽いステップなのだ。ふむふむ、俺は足を前に上げ過ぎると。
足を意識し過ぎるのかな? こうかな? あれれ? と、考えながらスキップをしていると、余計に変な感じになってしまう。繋いでいる手にまで力が入ってしまうのだ。
片足で2回軽く跳びながら前に進んで、今度はもう片方の足でまた2回だ。あれあれ~?
「アハハハ! ロロ、なんだよそれー!」
「にこにい、わからなくなったのら」
「ほら、一緒にやるぞ。せーの」
「しゅきっぷしゅきっぷ」
「そうそう、ロロ上手だよ」
そうか、俺は2回軽く飛ぶ時にもう片方の足を前に上げ過ぎるのだな。
よし、分かったのだ。スキップスキップ、ランララ~ン。あれれ? また分からなくなったのだ。




