203ーニコ兄にも
「エルフの魔法杖はね、国にいる長老が作ってくれるんだよ。ロロに作るのはそんな大きな物じゃなくて30センチほどの物だね」
なんだかよく分からないけど。それでも嬉しいのだ。
俺はまだちびっ子だ。だから魔法を使おうとしても、魔力が安定しないのだそうだ。
「うん、楽しみだ。どんなのにしようかなぁ」
ディさんの気持ちがとっても嬉しいのだ。
「ロロ、それ着けて帰るの?」
「うん、れおにい。かっちょいいのら」
「アハハハ、それは良かったよ」
それからディさんも一緒に家に帰ったのだ。
「なんだよ、なんだよ! ロロ、かっちょいいじゃん!」
家に帰ったら、ニコ兄が真っ先に見つけて寄ってきたのだ。
「ふふふん」
胸を張ってみよう。どうだ? 俺ってかっちょいいだろう? ポッコリとお腹が出ているのは見なかった事にしてね。
あ、そうだ。あの木の短剣だ。ゴソゴソとお道具箱から取り出し、それを片手に持って掲げる。ちょっとポーズをとっちゃうよ。もう片方の手は腰だ。そして、足は肩幅に広げて立つ。完璧ではないか。
「アハハハ。ロロ、カッコいいよ!」
「可愛いわ!」
リア姉、こんな時はかっちょいいと言うのだよ。可愛いは駄目なのだ。
「ニコにもあるよ」
「レオ兄、そうなのか!?」
ニコ兄もレオ兄に剣帯を着けてもらっている。ニコ兄の剣帯の模様もとっても綺麗なのだ。
植物の葉が手を広げた様に、1枚1枚が生き生きとしている。あの親方、良い仕事をするのだ。
「スゲー! レオ兄、これ軽くて柔らかいからいいな!」
「そうだろう? 良い革だからね」
色や模様は違うのだけど、みんなお揃いだ。
そういえば、ニコ兄も剣を持っていない。俺の木の短剣を貸してあげようか?
「ニコも、まだまだ剣は持たせられないな」
「ええー! 折角剣帯があるのにー!」
あ、そうだ! と、ニコ兄が何か思いついたみたいなのだ。
ニコ兄の薬草を手入れする道具を入れている、お道具箱を持ち出してゴソゴソとしている。
「俺はこれだ!」
と、何かを剣帯に付けたのだ。
「俺はやっぱコレだろう!」
ニコ兄が選んだのは、薬草を採取する時に使っている小型のナイフだ。
ニコ兄はいつもそれで、丁寧に採取するのだ。茎を傷付けないように、下葉を残してまた育つように。
「ニコも良い子だね」
「なんだよ、レオ兄。かっちょいいって言うとこじゃんか」
「アハハハ、そうだった」
いやいや、本当にニコ兄も良い子なのだ。あの年頃だと、欲しいと拗ねたっておかしくない。なのに、自分ならこれだと持ってきた。当然の様に、ちょっぴり自慢気に。
「にこにい、かっちょいいのら!」
「だろう? アハハハ!」
「まあまあ、ご飯にしましょうね」
マリーはマイペースだ。
マリー、少し褒めたりしても良いのだよ。と、ニコ兄と2人でデデンとポーズを取る。
ニコ兄は片手に採取用の小型ナイフを、俺は木の短剣を掲げる。
ニコ兄の小型ナイフに被せてある、木のカバーに掘ってあるお名前がちょっぴりガタガタで締まらないのだけど。
「はいはい、手を洗ってきてくださいね」
「「はぁーい」」
いや、スルーなのか? 俺とニコ兄がポーズを決めているのに。
マリーには勝てないのだ。ふとキッチンを見ると、ディさんがお野菜に齧り付いていた。マイペースな人がもう1人いたよ。うん、スルーしよう。
「にこにい、てをあらうのら」
「そうだな、ロロ」
その日、俺は嬉しくて貰った剣帯を持ってベッドに入ったのだ。
翌日、レオ兄がまたプレゼントを持って帰ってきた。昨日から大盤振る舞いなのだ。
お墓参りに行く前に、頼んでいたのが出来上がったかららしい。
「ひょぉー! かっちょいいのら!」
「レオ兄、スゲー!」
ニコ兄と俺が何に感動しているかと言うと、レオ兄の弓なのだ。
以前話していた、ララマニの木でできた弓だ。
しなやかにカーブを描いた木の部分を伝って、成長するかの様に丁寧に掘られた木の模様。剣帯とお揃いなのだ。
ララマニの木の地模様が、細波のように走っている木目だ。年輪がとても細かいのだ。ララマニの木は、暗い場所に生えている所為でなかなか育たない。その為、年輪がとても詰まった良材になるのだと話していた。
その木は森の奥にしか生えていない。それをお墓参り前にレオ兄は採取していたらしい。
光沢のある木に彫りこまれた繊細な模様が美しい。手で持つグリップの部分には藍色の革が巻いてある。しかもこの藍色もシックだ。剣帯の色と合わせてある。
「れおにいの、おおきいのら」
「そうだろう。前に持っていたのより大きいんだ。これ位ないとね」
ほうほう、レオ兄も成長しているのだ。
「ニコとロロにもあるよ」
「ひょぉーッ!」
「本当か!?」
ニコ兄と俺に子供用の弓矢だ。俺の弓なんて、本当に小さくておもちゃみたいだ。こんな良い木で作るのは勿体ないのではないか? 贅沢なのだ。
「明日からディさんが直々に教えてあげよう」
「でぃしゃん!」
「ええぇッ!?」
おやおやぁ? ニコ兄が引いているのだ。どうしてなのだ? ディさんなら最高の師匠ではないか? ディさん以上の人はいないぞぅ。
「もちろん、魔法の練習もするよ。ニコ」
「ああー、やっぱりかぁー!」
なんだ、そんな事か。ニコ兄もリア姉と少し似ているのだ。練習とか毎日コツコツとか苦手なのだ。俺はレオ兄似なのだよ。ふふふん。




