195ー増えてる
お肉や、ベーコン、ハムも沢山買ってきた。やっぱお塩が美味しいからなのだろう。ベーコンやハムも旨みがあって、とっても美味しいのだ。
ちょっぴり暑い季節になったから、街を行く人達の服装が変わった。少し軽装になっている。
冒険者の大きな剣を、背中に背負っている人は暑くないのかなぁ?
そんな人達が多く行き交う街の中心部に『うまいルルンデ』がある。冒険者御用達のお店だ。
何しろ、ボリュームの割にお値段が良心的。その秘密は、店主のオスカーさんと奥さんのメアリーさんが時々森へ討伐に行って、お肉を調達している。
2人共、Cランクの冒険者だから、つよつよなのだ。その為に、お店を始める時に頑張ってマジックバッグを買ったらしい。
俺も欲しい。小さくて良いからマジックバッグ。俺より、リア姉とレオ兄に持ってもらいたい。
「わふ」
「うん、しょうらね」
僕が付いて行くから大丈夫だよ。と、ピカが言ってくれる。ピカは沢山収納できる。それに、ピカは強いから付いて行ってくれると安心なのだ。
「こんちは〜」
と、元気よく『うまいルルンデ』に入って行くと、エルザがパキパキと働いていた。
「ロロ坊ちゃま、おばあちゃん、ディさんまで」
「あらあら、お邪魔するわね」
「おばあちゃん、お土産よね? オスカーさん呼んでくるわね」
「あ、エルザ。裏にまわるよ。コッコちゃんの雛を見たいから」
「はい! 分かりました」
ディさんと手を繋いで『うまいルルンデ』の裏庭へと移動する。いたよ、いたいた。やっぱり柵の外に出ている。どこのコッコちゃんも自由だね。
「あれれ? 雛がふえてるのら」
「そうなんだよ、また孵したんだ」
小さな雛と、少し大きくなっている雛。この雛は家にいる雛達と、同じくらいの大きさなのだ。
コッコちゃんと言えども、さすが魔鳥さんで普通の鳥さんより成長が早い。
もう親コッコちゃんの半分くらいの大きさに成長している。淡い黄色の雛達は、かなり体毛の色も白に近くなってきている。
オレンジ色の雛達も、同じ様に大きくなったのだよ。色は、相変わらずなんだけど。あのオレンジ色のまま大きくなるのかなぁ?
「おう、久しぶりじゃないか」
オスカーさんが、お店の裏から出て来た。
「こんちは〜」
「ロロ、元気そうだな」
そう言いながら、俺の頭をガシガシと撫でる。ちょっぴり力が強すぎるのだ。
「げんきなのら。おしゅかーしゃん、おみやげがあるのら」
「そうか、墓参りに行ってたんだったな」
「しょうなのら」
裏から厨房に入らせてもらう。『うまいルルンデ』の厨房は、思ったよりも広かった。お野菜がドン、お肉がドドンと沢山置いてある。
もう1人、厨房で男の人が働いている。今も『うまいルルンデ』名物のお肉料理を作っているのだ。
「ぴか、らして」
「わふん」
ピカが、はい。と、お土産を出した。
先ずは美味しいお塩、3色なのだ。それに、塩漬け野菜とブロックベーコンに、まん丸いままのハムだ。
「おー! これ、有名な塩だよな?」
「はいはい、そうですよ」
マリーが3色ある塩の説明と、塩釜焼きを教えた。
「おう、今度作ってみるな」
「とっても、じゅーしぃーれ、おいしいのら」
「アハハハ、そうか! こんなに沢山有難うな!」
いつもお世話になっているからね。
「こっこちゃん、ふえてるのら」
「おう、また孵したからな。卵料理が超人気なんだ」
「うまうまらから」
「そうなんだよ。数量限定だって言ってんのに、それ目当ての客もいるからな」
ほうほう。それはオスカーさんの調理の腕もいいのだ。
「デザートも作りたいんだ」
「ぷりん、うまうまらった」
「おう、エルザに聞いたぞ。スゲー美味かったそうじゃないか」
お鍋プリンだったから、見た目は何ともだけど、味は良かった。
きっとプロのオスカーさんが作ったら、もっと美味しくできるだろう。『うまいルルンデ』の名物になっちゃうかもなのだ。
「コッコちゃんの卵を、ルルンデの街の名物にしようとしているんだよ」
「でぃしゃん、しょうなの?」
ディさんが言うには、孤児院でどんどん卵を孵しているのだそうだ。
今は孤児院にいる子供だけでお世話をしている。でも、近いうちに大人も加わる予定なのだとか。
「ひょぉー」
「凄いだろう?」
「しゅごいのら」
毎日美味しい卵を食べたいからと、軽い気持ちで飼いだしたコッコちゃん。
それが、ルルンデの街の名物にまでなろうとしている。これは、凄い事なのだ。
「君たち兄弟が、ルルンデの名物を作る切っ掛けを作ったんだよ」
そんな大それた事ではない。食べたかっただけなのだ。
「こっこちゃんが、おりこうしゃんれ、よかったのら」
「アハハハ、そうだね。それもそうだけど、ロロ達の功績は大きいよ」
コッコちゃんは警戒心が強いから、滅多に人の前に姿を現さない。
だから、それまで誰も捕まえようと考えなかったし、捕まえられるとも思わなかったらしい。
それも、ププーの実が切っ掛けだ。どれも偶然、偶々なのだ。
「本当に、ロロは欲がないね」
「ディさん、意味が分かってないんだろうよ」
いやいや、分かっているのだ。




