194ーお出掛け
雨が降っていたのに、クーちゃん親子はお外に出たままだったのだ。雨がかからないように、軒下に入ればいいのに。
「びしょびしょなのら」
「まあまあ!」
「あらぁ〜、いいのよーぅ。気持ち良かったわぁー」
ええー、そうなのか? 小さな赤ちゃん亀が、水溜まりに入ってバシャバシャしている。どろんこになってしまうぞぅ。
「大きくなるまでは、水に入りたい時があるのよーぅ」
「しょうなの?」
「そうなのよーぅ」
なら、どうしよう? 小さな池があれば良いのにね。
「朝と夕方にドルフ爺さんが、水をかけてくれているのよーぅ」
そうなのか? ドルフ爺ったら面倒見が良いのだ。でも、レオ兄が帰ってきたら相談してみよう。
クーちゃんの赤ちゃん、5匹孵ったのだ。亀さんって、もっと沢山孵ると思っていたのだけど。
「クーちゃんは特殊だし、もうお年だからじゃない?」
「でぃしゃん、しょお?」
「多分ね。でも聖獣になっちゃったから、まだまだ生きるだろうね。まさか、卵を産むと思わなかったけど」
そうなのか? 聖獣ってどれくらい生きるのだろう?
「何百年と生きるだろうね」
「ぴょぉー!?」
凄い長生きなのだ。俺達より長く生きるのか。
「でぃしゃん、あかちゃんかめしゃんに、いけをちゅくってあげたいのら」
小さい池で良いから、いつでも水遊びできるようにしてあげたい。水なら俺も出せるのだし。
「そっか、まだ水浴びが必要なのかな? なら、ニコだね」
え? ニコ兄がどうして関係あるのだ?
「ニコの土属性魔法で掘ってもらえば良いよ。ああ、レオもできるかな?」
俺の兄達は、凄いのだ。俺なんかよりずっとチートだぞぅ。俺はそんな事全然できない。
「むむむ」
「ロロ、どうしたの?」
「ボクは、れきないのら」
「何言ってんだよ。ロロが一番凄いじゃないか」
ディさんはそう言うけど、俺はそう思わない。だって、まだまだちびっ子だしぃ。
「ちびっ子なのに、回復魔法が使えるだろう? テイムもできる。風属性魔法だって、使えるようになったよね。それに付与魔法だ。そんな事ができるちびっ子なんていないよ」
「しょお?」
「そうだよ。まるでエルフみたいだ」
ん? エルフならできるって事だよな?
「エルフ族のちびっ子は、種族的に魔力量が多いし、魔法が得意だからね」
「へえ〜」
やっぱエルフって凄いのだ。
「あらあら、行きましょうか?」
「うん、まりー」
俺は、家の中にお出掛け用のポシェットを取りに行く。
「キュルン」
「わふ」
チロもピカも行くよ。みんなで、お出掛けなのだ。
ディさんとマリーとお手々を繋いでお出掛けなのだ。チロは相変わらず俺のポシェットの中に、ピカは後ろを付いて来る。俺はもちろんスキップだ。
雨上がりの畑は、葉っぱがピカピカしている。緑が綺麗なのだ。
「きれいらね〜」
「とっても美味しそうだ」
お野菜大好きディさんには、美味しそうに見えるらしい。
「まあまあ、ふふふ」
お墓参りから帰って来てからは、マリーが何か吹っ切れた様な顔をしている。マリーだけじゃない。エルザやユーリア、そしてリア姉とレオ兄にニコ兄もそうだ。
あの叔父だという人の問題が、解決したわけではない。それでも、お墓参りできた事。それに、ロック鳥が持っていた魔道具の映像を見た事が大きいのだと思う。
リア姉は、スライムを退治した事で満足したのかも知れないけど。ちょっぴり脳筋気味だからね。
「ヒュージスライムは、最低Cランクで魔法が得意な冒険者が、何人も一緒に討伐する魔物なんだ。普通のスライムじゃないからね。リアはよく頑張ったよ」
と、ディさんが話していた。あの時のリア姉は、超かっちょよかったのだ。
「マリーはロック鳥に乗ったと聞いて、クラッとしましたよ」
「えへへ、たのしかったのら」
「まあまあ、怖くなかったのですか?」
「こわくなかったのら。まりー、おしょらからおやしきをみたのら」
「あらあら! そうなんですね! それは良かったですね」
「うん。えへへ」
そんなお話をしながら、俺のスキップも絶好調なのだ。短い足を、ピョコピョコ出してスキップスキップ。
俺もお墓参りから帰ってきて、なんだか少し心が軽くなった気がするのだ。違うな、ポカポカが大きくなったのだ。
上空からだけど、実際に住んでいたお邸を見る事ができた。俺は覚えていなかったけど、映像で両親を見る事ができた。
母様は『愛している』と、話していたのだ。まだ赤ちゃんだった俺を抱っこしてくれていた。チュッて、してくれた。
「むふふ」
「ロロ、なんだい?」
「こころが、ポカポカしゅるのら」
「それは良かった」
「はいはい、良かったですね」
「お墓参り、本当に良い旅になったんだね」
また行きたい。年に一度は行きたい。塩釜焼きや塩漬け野菜も美味しかった。
「こんろは、ディしゃんもいっしょにいくのら」
「本当に? 僕もいいの?」
「あらあら、それはいいですね」
ディさんが一緒だと、楽しそうだ。
「今日は、お土産を持って行くのかな?」
「しょうなのら」
フューシャの街でお土産を買ってきた。それを『うまいルルンデ』と教会に持って行くのだ。
ディさんにと、沢山買ってきたお野菜の塩漬けは、直ぐにバリボリと食べていた。
「生野菜もいいけど、これも美味しいね!」
と言って、嬉しそうに食べてくれたのだ。




