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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第4章 お祭りに行くのら

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193/485

193ー雨

 今日も良いお天気だ。ちょっと暑くなって来たけど、湿気がないから過ごし易い。

 蝉とかいるのかなぁ? 梅雨はないだろうな。だって日本とは湿度が全然違うから。

 と、思っていたら突然の大雨なのだ。

 ザザーッとお野菜の葉っぱを打ち付ける強い雨が降ってきた。ディさんと、家に戻った直後だったのだ。

 急にお空がゴロゴロし出して、暗くなって来たと思ったら降ってきたのだ。

 バケツをひっくり返したような雨。でも、大きな雨粒ではないのだ。細い蜘蛛の糸の様な雨が、あっという間に地面に水溜りを作っていく。

 一瞬の内に、まるで水のヴェールが掛かっている様な景色に変わる。

 この世界のスコールなのだ。


「わあー」

「危機一髪だったね」

「直ぐに止みますよ」


 そうなのだ。細い雨がザザーッと降って、直ぐに止む。そして、その後はカラッと晴れるのだ。

 1日に1度くらい、そんな雨が降る。それがこの季節なのだ。

 梅雨ではないけど、そんな雨が約1カ月続く。その後、夏本番なのだ。

 俺は家の軒下で雨宿りをしながら、雨を眺めていた。

 雨の音、雫、そして匂い。全部日本と同じなのだけど、ここは日本ではない。

 この世界で、一番古い俺の記憶も雨の日だった。

 上空から見たあのお邸で、レオ兄に抱っこされながら泣いていた。それが最初の記憶なのだ。


「わふん」

「なんれもないのら」


 ピカが、どうしたんだ? と、聞いてくる。ちょっとだけ、あの魔道具にあった映像の母様や父様を思い出しただけなのだ。

 とても優しい眼差しで、俺を大事そうに抱っこしていた母様。きっと前世の母も、そうやって育ててくれたのだろう。大人になって、縁遠くなってしまったけど。


「ロロ坊ちゃま、暫く止みませんよ。お茶にしましょう」

「うん、まりー」


 ヨイショと立ち上がって、トコトコと家の中に入る。

 そしたら、ディさんがお野菜を食べていた。キッチンで立ったままなのだ。

 これは、つまみ食いというやつなのではないか? だって、ディさん。ギクッとした顔をしているのだ。

 俺は立ったまま、お野菜を手に持っているディさんをジッと見る。


「だって、ニコのお野菜が僕を呼ぶんだ!」


 意味が分からないのだ。


「でぃしゃん、べちゅにいいのら」

「え? いいの?」

「うん、たくしゃんあるし。でぃしゃんが、しゅきなのしってるから」

「ロロ! なんていい子なんだ!」


 そう言って、手にお野菜を持ったまま抱き着いてきた。

 なんだか、リア姉に似ているのだ。


「そうそう、卵はどうしているの?」

「おいしくたべてるのら」

「アハハハ! 違うよ、ロロ」


 ディさんが言っていたのは、お墓参りから帰ってきたら温めると、コッコちゃんに約束していた卵の事なのだ。

 レオ兄と俺とで温める。そしたら、ハイパーな雛が産まれてフォーちゃんリーちゃんコーちゃんを統率してくれるのではないかと、コッコちゃん達は期待しているのだ。


「あ、わしゅれてたのら」

「そうだと思ったよ」

「クックックッ」

「コケッ」


 あ、コッコちゃん達がみんな家の中にいるのだ。雨だからだね。

 忘れてると思った。忘却の彼方だ。と、言われちゃった。また難しい事を言っているコッコちゃんがいるのだ。

 それって、ディさんが温めたらどうなるのだろう?


「え? 僕?」

「しょう。でぃしゃんも魔力量が多いし」


 超ハイパーな雛が産まれるのかな?


「アハハハ! どうだろう? 僕は魔力を調節するのは得意だからね。そんな事にはならないよ」

「なんらー」


 試して欲しいのだ。エルフのディさんが温めた卵。どんな雛が孵るか楽しみなのだ。


「んー、残念ながら僕は何かを残す様な事は、あまりしないと決めているんだ」

「のこしゅ?」

「そう」


 ディさんはエルフ族なのだ。それも、ハイエルフだそうだ。この国で生きている人とは何もかもが違う。魔力だけでなく、身体能力も何もかもなのだそうだ。

 そんなディさんだから、軽く何かを作ったとしてもこの世界では特殊な物になり兼ねない。

 だから、ディさんの影響を受けた何かを、極力この国に残さないようにしているのだそうだ。


「僕が国に帰った後に、争いの種になったりしたら嫌じゃない? だからだよ」

「なるほろ~」


 色々と考えているのだね。と、いうか長い年月生きてきた中で、そんな事もあったのかも知れない。ディさんの経験値は想像ができないのだから。


「ロロ、だからね」


 ディさんが俺達兄弟にくれたアミュレット。あの事なのだ。


「秘密だよ」

「ひみちゅ」


 人差し指をぷにっと唇にくっつけて、約束なのだ。

 ふふふ、なんだか特別みたいで嬉しい。


「れおにいがかえってきたら、たまごもひみちゅもいっとくのら」

「うん、卵は楽しみだからね」


 なんだよ、楽しみなのか。という俺も楽しみなのだ。どんな雛が孵るのかな?


「ぐふふ」

「ロロも楽しみなの?」

「うん、たのしみなのら」


 そんな話をしていたら、もう雨が止んできた。雲間から光が射してきたのだ。雨に濡れた葉っぱが、キラキラ光っている。

 庭先に出てみて、びっくりしたのだ。


「くーちゃん!」

「あらあら、どうしました?」


 マリーとディさんも出て来たのだ。


お読みいただき有難うございます!

感想も有難うございます。毎日、楽しみに読ませて頂いてます。

応援して下さる方、明日も読むよ!と思って下さる方は、是非下部にある☆マークから評価をして頂けると嬉しいでっす!

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有難うございます!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふと思ったんだけど、チロが孵せたんだからピカも出来るよね?ロロ達を守れる強い子を願って魔力多めに 与えて孵したらハイコッコより強い子産まれるんじゃ?w
[良い点] 雨の日の一時、ロロとディさんの穏やかな会話。 スコールの後の晴れ間から溢れる虹。綺麗ですよね。散歩している時空を見上げると虹が掛かって綺麗でした。国によって違うらしいですね。何やら色の認識…
[一言] お野菜つまみ食いでぃしゃん♪
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