192ー成長
帰ってきた翌日、ディさんはみんなを精霊眼でしっかり見たのだ。そのディさんの見解だ。
レオ兄は、鑑定眼のスキルが各段に上達していた。
それに風属性魔法だ。あの大きなヒュージスライムを、湖から出した時にピカを補助していた。とても強力なのだ。
今なら中級魔法まで使えるだろうと、ディさんのお墨付きだ。
それ以外にレオ兄は、今までもリア姉を補助魔法で強化していたりする。全属性が使える訳じゃないけど、魔法に関してはレオ兄が1番だろう。
ニコ兄も土属性魔法と水属性魔法が使えるようになっていた。水やりをしていたように、自在に水を出す。土属性魔法の方はまだよく分かっていない。ただ、少しの壁なら作れるらしい。
それに、以前ディさんが話していた『緑を育む手』だ。植物を上手に育てるから、ディさんは比喩のつもりで言っていた事だ。
それがニコ兄の、土属性魔法の特性なのかも知れないと俺は思うのだ。
俺はと言うとだ。
「ロロ、風の刃を飛ばせるようになったの?」
「え? しらないのら」
「なんでだよ、ロロ。ほら、ロック鳥に飛ばしてたじゃんか」
「え? にこにい、あれがしょう?」
「アハハハ! ロロは無意識なんだよ」
またレオ兄が笑っている。最近レオ兄はよく笑うようになったのだ。良い事だ。うんうん。
確かに俺は、ロック鳥に向かって風の刃を飛ばしていた。あの時、手に持った木の短剣から飛んだのがそうだ。
だからといって、またできるかと聞かれると、分からないとしか答えられない。
だってあの時俺は、無意識だった。みんなを守らなきゃと、必死だったのだ。
さて、お待たせしました。リア姉だ。
リア姉は今までも炎は出せていた。でも、今回は剣に火属性を付与したんだ。その上、炎を飛ばした。
そこで俺が一つ、重要な情報を出そうではないか。
「でぃしゃん、あおいほのおらったのら」
「ロロ、本当に青い炎だったのかい?」
「しょうなのら、びっくりしたのら」
「そうなの? それが本当なら凄い事だよ」
ディさんは、炎の温度を知っていた。流石なのだ。
魔法は初級、中級、上級と区別されているらしい。俺は知らなかったのだけど。
「ロロは枠に収まらないから、特殊なんだけどね」
ディさん。俺の事は良いのだ。それで、リア姉の炎なのだ。
火属性魔法が使える人は結構いる。一番メジャーな属性と言っても過言ではない。
だが、その中で青色の炎を出せる人はほんの一握りらしい。それは上級魔法に属するからだ。
あの時、ピンチだったのだ。とんでもなく大きいヒュージスライムが、リア姉に飛び掛かろうとしていた。そしてリア姉も怒っていた。その事が一気にリア姉の魔力を覚醒させて、あの強力な青い炎を出せたのだろうと、ディさんは推測している。
「れもなぁ」
「ロロ、どうしたの?」
みんなが出掛けて行って、相変わらず元気にやって来たディさんと一緒に、畑の中を歩いているのだ。
何処かから、ちびっ子戦隊の鳴き声が聞こえてくる。今日も元気に、パトロールだと言って走り回っている。いつもの事なのだ。
「らって、りあねえは、ポカポカぐるぐるしないのら」
「そうなの? 今もしないの?」
「うん、しない」
「駄目だね」
「なのら」
「わふ」
おやおや、ピカさんまで、駄目だよ。なんて言っているのだ。
「ロロ坊ちゃま! 行きますよ!」
マリーが家の前で手を振りながら、大きな声で呼んでいる。俺も大きな声で、お返事しよう。
「わかったのら!」
「ロロ、何処に行くんだい?」
「まりーといっしょに『うまいルルンデ』と、きょうかいにいくのら」
「そう、僕も一緒に行こう」
うんうん、みんなで一緒に行こう。あ、ちびっ子戦隊はお留守番なのだ。と、いってもみんな畑に出て行って、誰も残っちゃいない。
どこかで鳴き声だけ聞こえる。きっとドルフ爺と一緒にいるのだ。
柵の近くにいるのは、クーちゃんと、親コッコちゃん、そして普通の雛だけだ。みんな軒下でのんびりしているのだ。
「そうだ、あのピンクの雛だけどね」
ああ、そうだ。忘れていたのだ。一羽だけチロが温めて孵った、ピンク色の雛がいたのだ。
「普通の色になっちゃったんだ」
「え? しょうなの?」
「うん、なんか色が薄くなっているなぁとは思っていたんだ。もう今は他の雛達と変わらないよ。能力もないんだ」
「えー、しょんなことがあるんら」
「ね、チロが孵したから一時的に能力が移っていたのかも知れないね」
「へえー」
なんだ、残念なのだ。回復は大事だ。今はチロしかいない。状態異常でも怪我でもチロに頼るしかないのだ。じゃあ、チロがいなかったらどうするのだ? ちょっぴり不安なのだ。
「ロロがいるじゃない」
「ボク?」
「そうだよ。ロロだって、回復魔法が使えるじゃない」
そうか、そうだった。でもなぁ、心許ないのだ。
「アハハハ、ロロが作った中級ポーションもあるし充分だよ」
「しょっか」
「そうだよ」
「ロロ坊ちゃま、行きますよ!」
また、マリーが呼んでいるのだ。
「よし、ロロ。行こう!」
「あい!」
ディさんがヒョイと俺を抱き上げた。畑の小道を走って行く。慣れたものなのだ。




