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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第3章 領地に行ったのら

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185ー覚えてない

「姉上、掃除もするよね?」

「勿論よ」

「じゃあ僕は水を汲んで持って行くよ」

「お願いね」

「レオ兄、俺も行く」


 レオ兄とニコ兄が、入り口の側に作られた水場へと向かう。俺達は真っ直ぐ奥へと歩いて行く。

 墓地といっても、明るくて綺麗だ。緑が多い。芝生の様な緑の地面に、白っぽい墓石が映える。

 周りには木が等間隔に植えてあり、その間には花壇がある。小さな色とりどりの花が、柔らかい日差しを浴びて気持ち良さそうだ。ちゃんと整備されているのだ。

 入口付近に水場が作られていて、レオ兄とニコ兄がそこで水を汲んでいる。おや、ちびっ子戦隊がレオ兄とニコ兄のそばに集まっている。ああ、お水が欲しいのだね。

 俺は黙ってマリーと一緒に歩く。俺のすぐ横にはピカだ。


「いいお天気れよかったのら」

「そうですね」

「わふ」


 そんな墓地の一番奥に、領主だった両親の墓がある。

 父方の祖父母のお墓もあるらしい。両親の事さえ覚えていない俺は、祖父母はもっと覚えていない。俺が産まれる前に亡くなったらしいから当然だ。

 この世界の、両親のお墓に来たかったのだ。何も覚えていないから……せめて本当に生きていたのだという証拠を、見たかったのかも知れない。

 前世でも、親とは疎遠だったからなのかも知れない。

 この世界ではどうだったのかを、知りたかったのかも知れない。

 自分でもよく分からない。

 でも兄弟や、マリー達には可愛がってもらっている。ピカとチロもいる。コッコちゃん達やちびっ子戦隊、クーちゃんだっている。

 最近では、ディさんやドルフ爺だっていつも一緒だ。

 だから寂しくてそう思ったのではないのだ……多分。

 1番奥に並んでいる、墓石の前でリア姉が立ち止まった。


「お父様、お母様……来ましたよ。やっと来る事ができました」

「ロロ坊ちゃま」


 リア姉が墓石に向かって静かに話しかけている。父と母の墓石が並んでいる。

 マリーが俺の背中をそっと押した。

 ゆっくりと、俺はリア姉の隣りに立った。


「ロロもいます。みんなで来たんです」


 リア姉が跪いて、横にいる俺の肩を抱いた。


「りあねえ……」

「ロロ、お父様とお母様よ」

「うん……とーしゃま、かーしゃま……」

「大きくなったでしょう? もう3歳なのよ。毎日元気に暮らしているわ。だから、安心してね」

「ろろれしゅ。ボク……おぼえてなくて……ごめんなしゃいぃ」

「ロロ……」

「ロロ坊ちゃま」


 どうしてだか、涙が溢れてきたのだ。我慢できずにポロリと流れてしまったのだ。

 リア姉が抱きしめてくれる。


「大丈夫よ……みんないるわ」


 そう言いながら背中を撫でてくれる。それでも涙が止まらなかった。


「う……うぇ……」

「ロロ!」

「どうした?」


 後からやって来た、レオ兄とニコ兄も驚いている。


「れおにい……にこにい……ボク」

「ロロ、泣いてしまったか……」

「れおにい……ボク、おぼえてないのら。とーしゃま、かーしゃまがいないのらぁ……グシュ」

「2人共見守ってくれているよ」

「そうだぜ、ロロ。俺達がいるだろ」

「れおにい……にこにい……グスン」


 ああ、3歳の俺はなんて弱いのだ。中身の俺は、もう社会人だった。立派な大人なのだ。リア姉やレオ兄よりも年上だ。

 なのに、どうした? どうしてこんなに寂しいのだ? どうして少しも覚えてないのだ?


「ボクらけおぼえてない……ぐしゅ……」

「小さかったのだから仕方ないんだよ」


 ポロポロと流れる俺の涙を、レオ兄が(ぬぐ)ってくれる。


「ロロの分も覚えてるぜ。父様と母様はいつもロロを抱いて、優しく微笑んでたぞ」

「にこにい……」

「ロロが元気にやってるよって、見せよう」

「うん……れおにい」


 俺のこの世界での最初の記憶も泣いていた。両親が亡くなって、ただ泣いていたのだ。

 よくある転生物語の様に、何かを一生懸命考えたり転生した事に驚いたり、何かをやりたいと思う事はなかった。

 気付いたら、ただ泣いていた俺がいたのだ。

 まだ2歳の何もできない俺が、レオ兄に抱っこされながら泣いていた。

 泣く事で前世の俺と、今の俺に折り合いをつけていたのかも知れない。

 思い返せば、俺は泣いてばかりなのだ。今も泣きじゃくっているし。夜泣きをして心配かけるし。今の環境に慣れるまで、俺はよく泣いていたのだ。


「ゔ……ゔぅ……もうなかない……ヒック」

「ロロ……」

「もう……もう、なかないのら……えぇ〜ん」


 いや、また泣いている。


「ロロー!」


 ニコ兄が俺に抱きついてきた。涙をボロボロ流している。ニコ兄もやっぱ、まだまだちびっ子なのだ。

 ニコ兄は覚えている分だけ、両親が恋しいと思う気持ちも強いのだろう。それが溢れ出したように、涙を流している。ニコ兄が泣くのなんて、とっても珍しい。

 いつも俺の世話を焼いてくれて、元気に畑へ出掛けて行くニコ兄しか知らないのだ。


「にこにい……ヒック……なかないのら」

「うん……うん……ロロ!」

「ほら、みんなでお掃除しよう。また次は、いつ来られるか分からないから綺麗にしておこう」

「うん……れおにい」

「おう」


 それからみんなでお掃除をした。俺も小さな手で、一所懸命拭いたりした。

 マリーの息子さん夫婦や、祖父母のお墓もだ。

 どのお墓も、ピカピカにしてお花を供えたのだ。

 フワリと柔らかい風が、吹き抜けていった。キラキラしていた気がしたのだ。

 俺は覚えていないけど、両親が励ましてくれているような気がしたのだ。


「わふぅ」

「らいじょぶら」


 ピカにも心配を掛けてしまった。


「さあさあ、あっちでお茶にしましょう」


 マリーが態と明るい声で言った。


お読みいただき有難うございます!

今日は少しでも、ウルッとして頂ければ大成功って事で^^;

応援して下さる方、次も読むよと思って下さる方は、是非とも下部の☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします!

ハルちゃんなら、ちゅどーん!と、ロック鳥をやっつけちゃうかも!?

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
肖像画もないのかー まぁ、若かったみたいだし、歳を取らないと描こうとは思わないよなー
[一言] ロロくん覚えていない事が悲しいのか でもなー、3歳だよ覚えていないのも当然じゃないかと 前世の記憶がある分賢いからそうなってしまうのかもな 沢山食べて沢山遊んで沢山寝て すくすく成長していく…
[一言] ニコ兄も泣いちゃった。いつも偉いのら~!
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