176ースライム退治 2
颯爽と参戦した、ピカさんは何をしているのかな?
「わふん」
「え……」
マジですか……ピカさん。
「ロロ、ピカは何て言ってんだ?」
「ぴかは、炎がちゅかえないからって」
「マジかよ!? ピカ! 頑張ろうぜ!」
「わふぅ」
だって、仕方ないもん。なんて言っている。張り切って出て行ったはずなのに。
助っ人に出る前に、気付かなかったのかな? 最強だと言っていた、神獣のピカさんや。
「わふわふ」
「えぇー、しょう?」
「わふ」
だってスライムなんて弱すぎて相手にしないから。なんて言い訳をしていたのだ。 本当、惚けた神獣様だ。流石あの泣き虫女神の神使なのだよ。
でも、ピカさん。倒せないのだろう?
「わふ」
そんな事ないよ。って、なら倒そうよ。
「わふぅ」
いやいや、呑気な事を言っているのだ。2人で大丈夫だよ。なんて言ってきたのだ。
もう、いいのだ。とにかくリア姉とレオ兄が、飛んできたスライムに当たらない様にしてくれれば良いのだ。
「わふん」
そこは任せて。なんて言うのだ。
呑気なピカさんがやっと動いたのだ。何か思い付いたのかな?
レオ兄が一々槍でぶっ刺して、空中に放り投げていたスライム。その度に焼いていると、リア姉の魔力量が心配だ。だってリア姉は魔力操作が下手だから、加減というものを知らない。
そこに満を持してピカさんの登場なのだ。
「わおんッ!」
と、軽く一鳴きしたピカ。すると風が起こって、どうやったのか湖からスライムを浮かせて出したのだ。それも、まとめて沢山のスライムをだ。
「おおー! ピカ! スゲー!」
ニコ兄がまた、スゲーと叫んでいる。そうそう、炎が使えなくてもできる事があるではないか。
ピカさんはやってくれると、信じていたのだ。
ピカがまとめて出したスライムを、リア姉が炎で焼いていく。
ところが、ピカが勢いよく放り出したものだから馬車の近くまで、ポヨンポヨヨ~ンと飛んできたスライムが何匹かいた。
「にこにい! あれ、あれ!」
「おう! ロロ! 俺達も行くぞッ!」
「おーッ!」
口では威勢の良い事を言っているが、なにしろ俺はちびっ子だ。
ニコ兄がピョンと馬車を飛び降りたのは良いが、俺は降りられない。
ニコ兄に支えてもらって、よっこいしょと後ろ向きになって足から降りる。
足が地面に着かなくてプランプランしている。どうしよう、どうするのだ?
「ロロ、支えているから大丈夫だぞ。手を離してみろよ」
「うん」
ニコ兄がしっかりと、俺の腰に手を回して支えてくれた。なんとか馬車から降りられた。ふゅ~、ちょっち焦ったのだ。
それでも俺は、例の木の短剣を忘れずに握っている。俺の武器なのだ。
2人で手を繋いで、気持ちは最速ダッシュだ。
「ロロ、それどうするんだ!?」
「ブシュッて!」
「スライムを刺すのか!?」
「しょうなのらッ!」
ニコ兄と一緒に、ポヨンポヨンと動いているスライムに近付く。
「よ、よぉしッ! とおッ!」
俺は躊躇せず……いやいや、恐々で屁っ放り腰なのだけど、スライムの真ん中目掛けて木の短剣をグサッと刺したのだ。頑張った!
プニュッとなんだか変な手応えだったのだけど、なんとか真ん中に短剣を刺した。
俺は、やる時はやるちびっ子なのだ。
「ニコ! ロロ! 何してんだよ!」
「ニコ! 踏み付けるのよ! グチャグチャに踏ん付けたら分割しないわ!」
「おうッ! リア姉、分かったぞ! ロロ! やるぞッ!」
よしッ、グチャグチャに踏み付けるのだな。
「えいッ!」
と、ニコ兄と一緒にスライムを踏んづけ出したのだ。
木の短剣を刺した事で、動きが鈍くなっている。これは、どんどん踏ん付けよう。
ブニブニと余り手応えがないのだけど、それでもバタバタと踏み付ける。ちょっと固めのゼリーみたいな感じなのだ。
スライムの形がどんどん無くなっていく。小さな欠片も逃さずグッチャグチャにエイヤッと踏み続ける。すると欠片になったスライムが、干からびてきて動かなくなったのだ。
小さなスライムを相手に、大騒動なのだ。
「やったぞ!」
「やったのだ!」
「ロロ、あっちもだ!」
「おーッ!」
ニコ兄と2人で、また別のスライム目掛けて走って行く。勿論、俺の武器も忘れず持って行く。
「にこにい、ブシュッてしゅるのら!」
「ロロ、いけー!」
「とぉッ!」
またスライムの真ん中を目掛けて、短剣を思い切り刺した。もう、怖くないぞ。
「よしッ! 踏むぞ!」
「おぉー!」
またまた、ニコ兄と2人でバタバタと踏み付ける。
「ピヨヨッ!」
「キャンキャン!」
んん!? この声は!? 声のした方を見ると、ちびっ子戦隊もいつの間にか馬車から降りていて、同じ様にスライムをバタバタと踏み付けていた。
寄ってたかって、小さいのが踏み付けているのだ。見ていると、なんだかスライムに同情してしまうくらいにグチャグチャなのだ。
そんな事をしていると、あっという間に終わったのだ。
全部のスライムを討伐したら駄目だ。塩分を吸収してくれるから、そこそこ残しておかないといけない。
「ニコ、ロロ、びっくりしたよ。大活躍だね、怪我はないか?」
「ふふふ! 2人とも凄いわ!」
リア姉とレオ兄、ピカが走り寄って来て、ニコ兄と俺に抱きついたのだ。
ナデナデしながら褒めてくれた。
「どうってことないぞ!」
「やっちゅけたのら!」
「ピヨヨ!」
「アンアン!」
「フォーちゃん達やイッチー達もよくやったね」
レオ兄がちびっ子戦隊も忘れず褒めてくれる。ちびっ子戦隊も頑張ったのだ。




