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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第3章 領地に行ったのら

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173/486

173ー原因

「これは大変だわ。塩が作れないじゃない」

「領主は一体何をしているんだ」


 元は自分達の両親が治めていたのだ。将来は自分達が継ぐと思っていた領地だ。自分達ならこんなになるまで放っておかないのに、と思う気持ちもあるのだろう。


『そこが川だぞ』


 ロック鳥がずっと低空飛行をしてくれている。フューシャン湖から流れ出ている川が2本ある。

 その川とフューシャン湖との境目が異様な色になっていた。

 薄い紫の様な、グレーの様な色だ。それが、川の手前に広がっている。


「あの色は何が原因なのだろう?」

『なんだ、知らねーのか?』


 意外にも、ロック鳥は分かっているらしいぞ。


『あれはスライムが集まってあの色になってるんだ』

「スライムなのか!?」

「でも、スライムは普段からいるじゃない。スライムがフューシャン湖の塩分を吸収して除去しているから、川の水に塩分が含まれないのでしょう!?」

『そうなのか? そんな細かい事は知らねーけど、いつもはあんな色じゃねーんだよ。淡い紫とピンクのグラデーションになってるんだ。それが今はグレーっぽく見えるだろ? あれは、スライムが沢山集まっているからあんな色になってるんだ。ま、スライムなんて腹の足しにもなんねーんだけどな! ガハハハ!』


 ほうほう、よく知っているじゃないか。ロック鳥さん、本当に知性が高いのだ。

 要するに、スライムの異常増殖だ。

 フューシャン湖は塩湖だ。その水源は地下水なのらしい。塩分を含んだ塩水が湧き出ているのだ。

 その塩分を、フューシャン湖が川に流れ出している付近に生息しているスライムが、いつもは除去している。

 だが、今年は何が影響したのか分からないが、スライムが異常に増殖してしまった。それが原因で、川に流れ出している部分が詰まり出したのだ。

 フューシャン湖自体の水量はいつも通り増える。だが、フューシャン湖から流れ出す事ができない。その上、いつもより多くのスライムが塩分をどんどん吸収する。それで、フューシャン湖の水位が上がって塩分濃度が低くなったのだ。


「有難う、よく分かったよ」

『おう! 態々見る必要もねー事だったな。俺様に話してくれたら教えてやったんだ』


 いやいや、そんな事をしたら俺の野望が叶わなかったじゃないか。


「戻ろう。原因が分かったから後は僕達で何とかするよ」

『おう! いいのか!?』

「うん、大丈夫だ」


 レオ兄が大丈夫と言った。なら、大丈夫なのだ。

 俺はスライムをどうするのかなんて分からないのだけども。


「ねえ、隣街までって遠いかしら?」

『何言ってんだ。俺様ならひとっ飛びだ。あっという間だぜッ!』

「姉上」

「いいじゃない、こんな機会はないわ。ねえ、隣街まで飛んでくれない?」

『おう! 任せとけ!』


 ロック鳥がブワンと翼を大きく動かして高度を上げた。そして翼を広げたまんまで滑るように、まるで風に乗るように悠々と空を飛んで行く。

 正面から陽の光が当たって眩しい。世界が輝いているように見える。


「しゅごいのら!」

「スゲーッ!」


 ニコ兄と2人で、テンション爆上がりだ。だけど、リア姉とレオ兄は違ったのだ。

 静かに前を見ている。俺は、レオ兄の懐にいるから表情が見えない。でも、少し緊張している様に感じたのだ。

 肌からピリピリとしたものが、伝わってくる。


「れおにい?」

「うん、見てごらん。もう僕達が住んでいた隣街が見えるよ」


 ああ、そうなのか。リア姉が言った隣街とは、両親が生きていた頃に住んでいた街なのだ。

 ロック鳥は大きく何度か羽搏いただけだ。なのに、もう隣街の上空まで来たのだ。


「ほら、ロロ。あそこだよ。父上と母上の邸だ。ロロが生まれた家だ」


 レオ兄に言われて見る。フューシャの街よりずっと大きな街だった。

 ちゃんと区画整理されている真っ直ぐに伸びる道路。半放射状に街ができている。その1番奥の少し高台になっている半放射状の中心にお邸があった。

 そっか、俺が生まれた家なのだ。


「ねえ、ここで少しだけ旋回して欲しいわ」

『お? 構わねーぞ』

「あんまり高度を下げて騒ぎになったらいけないから、このままでお願い」

『おう』


 白っぽい煉瓦の様な物で建てられているのか? 真っ白ではなく、淡い白。お屋根は茶色だ。庭があって、四阿なのか? 小さな屋根が見えた。

 よく見ると、街も同じ色の家が多い。綺麗な街だ。

 ここが、父様と母様が守ってきた街なのた。


「良かった、変わってないみたいね」

「庭の手入れはされているようだね」

「庭師のおじさんが残ってくれていたもの」

「母様の好きな花もまだあるぞ! あの色はそうだ!」


 こんな上空からでも分かるのか? 俺は全然覚えていないのだ。いや、あの窓を雨が打ち付けていた事を覚えている。


「有難う! もういいわ、戻りましょう!」

『いいのか?』

「ああ、いいよ」


 ロック鳥がゆっくりと旋回し、巣のある岩場へと戻って行く。

 あまり羽搏かないのだ。それでも一気に風にのって、悠然と大空を飛ぶロック鳥。ああ、もう終わりなのだ。

 楽しかった。風の強いのが難点だったけど、こんな体験はきっともう2度とできないぞ。

 俺達が住んでいたお邸を、見る事もできた。リア姉とレオ兄は、どう思ったのだろう? 変わってないと話していたから、安心したのかも知れない。

 でも、リア姉とレオ兄は帰りはあまり喋らなかった。


お読みいただき有難うございます!

感想や誤字報告も有難うございます。

宜しければ、是非とも下部の☆マークから評価をして頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

本日、ハルちゃん第1巻が発売です!

お手に取って頂けると嬉しいです!

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] 野望抜きでお話だけで解決の糸口がつかめてた件 まあ結果オーライ
[良い点] 原因がスライムだとは、その大量発生した原因があるはずʕʘ‿ʘʔ ロック鳥さん案外優しい魔鳥さんね。(^O^☆♪ 序でにご両親の思い出が詰まったお屋敷の様子がわかって良かった。 リア姉やレオ…
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