167ー珍しい
レオ兄は、俺達を置いて行くつもりだ。そうはいかないのだ。
「ニコ、ロロ、危険だから駄目だ」
「らってれおにい。ちろがいるのら!」
「そっか、チロの補助魔法は必要だね」
そうなのだよ。チロに耐性を強化してもらえば、俺達は大丈夫なのだ。麻痺にはならない。
「でも駄目よ。危ないわ。チロだけ連れて行くわ」
「らめ! じぇったいらめ!」
「そうだよ、俺達も行くぞ!」
ここは譲れないのだ。あんなに大きなロック鳥を、2人だけで相手するなんて何があるのか分からないではないか。
いざという時には、直ぐに俺が回復するのだ。回復が間に合わなかったらどうするのだ? そんなの絶対に駄目なのだ。
「ボクは、いたいのいたいのとんれけしゅるのら!」
「お、俺は何もできないけど! でも一緒にいるぞ!」
そりゃそうだ。兄弟で1人だけお留守番なんて嫌に決まっている。
ニコ兄と2人で、絶対に付いて行くと訴えたのだ。
俺なんて両手をギュッと握り締めて、もう涙目だ。それでもジッとレオ兄を見る。
「ニコ、ロロ、2人も見ただろう? 本当に危険なんだ」
「レオ兄、分かってる! それでも一緒に行くぞ!」
「れおにい、ボクはていまーらから、らいじょぶなのら!」
「え? テイマー? ロロ、テイマーが関係あるの?」
「わからないのら。れも、らいじょぶなのらッ!」
「わふん」
「ピカ、でもね」
「わふ」
ほら、ピカだって大丈夫だと言っている。僕が守るよと言ってくれているのだ。
それに、どうして急にあの岩場に巣を作ったのかだ。
俺はそれも気になるのだ。俺はテイマーなのだ。だから、もしも話せるのなら話してみたいのだ。
ちょびっと野望があるのだけど。あのロック鳥、乗れたら凄いと思うのだ。ぐふふ。あ、ちょっとにやけてしまった。
「ロロ、何か悪い事を考えているのかな?」
「え……考えてないのら」
「本当に? まさか乗ってみたいとか思ってないよね?」
「お、お、思ってない……のら」
あ、バレているのだ。ちょっと、挙動不審になってしまう。目が泳いでしまうぞぅ。俺って正直だから。
「ロロ……駄目だよ。絶対に駄目だ」
「わかってるのら」
俺はポーカーフェイスを覚えないといけない。レオ兄にバレバレなのだ。
だって乗ってみたくないか? 大空を飛べるのだよ? それは是非とも乗ってみたいと思うのだ。
「ロロ」
「あい、ごめんなしゃい」
「約束だ。絶対に危ない事はしない、僕と姉上の言う事を聞く事、離れない事、いい?」
「分かったぞ!」
「わかったのら!」
ふむ、仕方がないのだ。ここは我慢だ。俺は聞き分けの良いちびっ子なのだ。
「レオ、いいの?」
「姉上、仕方ないよ」
「そうね、私が守るわ」
「僕だって」
「わふん」
「アハハハ、そうだね。ピカがいるから大丈夫だ」
「わふ」
ピカさん、頼りになる。それにしても、本当にどうしてなのだろう?
「むむむ」
「ロロ、どうしたんだ?」
「らってれおにい、ろうしてなのら?」
「何がかな?」
俺は話したのだ。今まではあの岩場に巣を作っていなかった。どうして急に岩場に巣を作っているのだ?
しかも、人を寄せ付けない。まるで守っているみたいなのだ。
何かあるのではないのかと思うのだ。
「なるほど、そんな事よく気が付いたね」
レオ兄が頭を撫でてくれる。だろう? 俺、結構良い所に気が付いたと思うのだ。
だからと言って、どうしてなのかは全然分からないのだけど。
そこは、レオ兄とリア姉にお任せなのだ。
「そんなの決まってるじゃない」
「姉上、気が付いていたの?」
「レオ、分からなかったの?」
おやおや、レオ兄よりリア姉の方が気付いていたのだ。これはとっても珍しい。
「ロロ、その目は何なの?」
「なんれもないのら。めじゅらしいとか思ってないのら」
「思ってるじゃないぃ!」
あ、しまった。つい言ってしまった。思わずお口を両手で覆ったのだ。やっぱ俺って、正直だから。
「アハハハ、ロロったら」
「酷いわよぅ」
それよりもだ。リア姉は何に気付いていたのだろう?
「岩場に巣を作っていて、この時期なのよ。そんなの決まっているわ。きっと卵を守っているのよ」
「あ、そうか。なるほど、そうだね」
この時期、魔獣は産卵の時期らしい。以前、森に魔魚を捕りに行った時もそうだった。
魔魚さんが産卵の時期だから、美味しいって。
そうなのだ、ロック鳥も同じなのだ。岩場に巣を作り、卵を産んで守っているのだ。
「通りたいらけって、はなしてみるのら」
「ロロ、ロック鳥と話すの?」
「しょうなのら。ボクはていまーらから」
「いくらテイマーでもそれは無理よ」
そんな事、やってみないと分からないのだ。
諦めたらそこで試合終了だと言うではないか。何かのアニメのセリフじゃないけど。
「姉上、意外といけるかもしれないよ」
「レオ、でも相手はロック鳥なのよ」
「ピカがいるよ。魔鳥よりもずっと格上の神獣だ」
「そうね、そうかも知れないわね」
そうなのだ。ピカさんは無敵なのだろう? 鬼つよの神獣なのだ。
「わふん」
当たり前だよ。なんて言っている。こんな時、ピカさんはとっても頼りになるのだ。
「兄さん達、また行くのか?」
心配してくれているのだろう。宿屋のご主人が話しかけてきた。




