152ー魔獣退治
それでも、俺はリア姉とレオ兄が心配なのだ。
「ぴか、おねがい」
「わふッ」
ピカが、任せてとシュタンッと馬車を降りて走って行く。
どうやら、馬車の前方の森側に魔獣がいるらしい。森から出て来たのだろう。
ニコ兄と一緒に、前の御者台の後ろから顔を出して見る。危ないのは分かっているのだけど、やっぱ見たいし心配なのだ。
あのちびっ子戦隊、どこに行ったのだろう? 1番先に飛び出して行ったのに姿が見えない。大丈夫かなぁ?
「うひょぉ……」
「な、スゲーな」
「うん」
馬車の前に魔獣が出て来た。ニコ兄も身を乗り出して見ている。
馬車を襲ってきた魔獣は、三つ角アナグマというらしい。額の部分に3本の小さな角があるのだ。
そう大きくはないけど、最低4~5頭の群れで行動している。今回も馬車の前に出て来たのが5頭だ。
体長2メートルはない位かな? 見た目は狸かな? と思う位だ。ずんぐりむっくりしている。でも鮮やかな黄色の爪が、とっても大きくて鋭いぞ。
このアナグマは普通の獣ではない。あるはずのない角が3本もある。
獣とは違って角が生えた魔獣は、とても獰猛で人を襲うのだ。
一説には人の肉を、食べた事がある獣が魔獣になるとかなんとか。あくまでも一説なのだ。ダンジョンの瘴気に長時間さらされた獣が魔獣になるという説もある。
1番確実視されているのは、魔獣を食べた獣は魔獣になる。
ディさんも、クーちゃんは魔獣を食べていないから魔獣になる事なく、霊獣になれたのだと話していた。
あれれ? いつの間にかチロが俺の頭に乗っている。チロさん、起きたのだね。
もしかして、守ってくれているのか?
「キュルン」
「しょっか、ありがと」
守るから任せろと言ってくれる。
よし、俺もと思い出したのだ。俺が家を出る時に持って来た木の短剣なのだ。
それを手にし、レオ兄とリア姉がいる方へと向ける。
「いたいいたいはらめ……いたいいたいはらめ……じぇったいらめ!」
「ロロ、何してんだ?」
「にこにい、ボクも守るのら!」
手を腰にやり、木の短剣を掲げる。ヒーローベルトがあれば完璧なのだ。
「おー! それ、持って来たのか!?」
「りあねえ! れおにい! がんばれー!」
その時チロが鳴いたのだ。
「キュルン」
すると俺の体から、何かが抜けた感覚がしてチロが光った。次の瞬間、俺が持っている木の短剣から白い光が伸びて、リア姉とレオ兄が一瞬光に包まれたのだ。
「ちろ?」
「キュルン」
リア姉とレオ兄に、回復力アップと身体強化の補助魔法を使ったらしい。俺の魔力も少し借りたと言っている。
チロはいつの間にそんな事が出来るようになったのだ? 成長しているのだ。
でも、思っていたのと少し違う。俺は勇ましく短剣を掲げたのだ。木で出来ているのだけど。
俺も一緒にやるぞ的な感じだ。どうせなら、魔獣をやっつけたかったのだ。
なんだか、ちょっぴり違うのだけど、まあいいや。それよりも……
「レオ、さっさと片づけるわよ!」
「ああ!」
リア姉とレオ兄が同時に走り出した。
先陣を切ったのはピカだ。ピカは最初に襲ってきた1頭をもう倒している。ピカさん、相変わらず強いのだ。
よく見るとあの魔獣さん達、フラフラしていないか?
「ピヨヨ!」
「キャンキャン!」
ああ、居た。ちびっ子戦隊だ。小さいから下からジャンプして、足を狙って蹴りまくっている。だから、魔獣はフラフラなのだ。
こうなったら、レオ兄やリア姉は余裕だ。
レオ兄が真正面から、槍で首を貫き1頭倒す。そのまま流れるように次の1頭も倒していく。
レオ兄の使っている槍は刃の部分が普通より少し長い。薙ぎ払いもできるがその分扱いが難しいらしい。
でも、レオ兄は父からそれを教わっている。槍の柄の部分には細かな彫刻で意匠を凝らしてあって、父から貰ったものだ。
リア姉は剣だ。父に貰ったロングソードと呼ばれるものだ。刀身に彫刻を施した綺麗な薄刃で細長く80センチほどある。
あの細い腕と体に、ロングソードというギャップがカッコいい。
リア姉は、低く腰を落として三つ角アナグマの首を狙っている。
剣を振り抜き1頭倒す。そして、横から飛び出てきた最後の1頭を難なく仕留めた。
「スゲーッ!」
「ぴゃぁーッ!」
思わず木の短剣を持っていた手を、ブンブンと振ったのだ。ニコ兄も興奮して両手を挙げている。
「こら、ニコ、ロロ! 危ないといっただろう!」
「だってレオ兄、見たいじゃん! 凄かった!」
そう叫んでいるニコ兄の隣りで、俺はまだ木の短剣を振っていた。凄いぞ。リア姉もレオ兄も強いぞ! ナイスファイトなのだ。
全然危なげなく、あっという間に倒してしまった。
森に行った時にも魔獣は出て来たけど、あの時はサッサとピカが倒していたのだ。
こうしてリア姉とレオ兄が、魔獣を討伐するのを目の前で見ると感動だ。
2人共、流石Cランクだ。強いのだ。
「アハハハ。ロロが何かしてくれたんだろう? 体が軽くなったよ」
「ちろと応援したのら! りあねえ、れおにい、ちゅよい!」
「有難う。ロロ、木剣はもう仕舞っておこうか?」
「え、しょう?」
「うん、振り回したら危ないからね」
「分かったのら」
よし、仕舞っておこう。役に立ったのだ。ん? 立ったのか? 役に立った様な、必要なかったような?
お読みいただき有難うございます!
ロロも参戦?しませんよ〜^^;
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