151ーギルド
さっきハンザさんに良い事を聞いた。俺は冒険者ギルドしかないと思っていた。
でも商人ギルドがあるなら、俺はきっとそっちの方が良いと思うのだ。
うん、どう考えても俺は冒険者より商人ギルドだ。だって戦えないのだ。作ったポーションを売る方がずっと現実味がある。
ちょっと、待てよ。冒険者ギルドに商人ギルド。ならもしかして、他にもギルドがあるのか? 聞いてみよう。
「はんじゃしゃん、ぎるど」
「ほいほい?」
「ぎるど、ほかにもある?」
「冒険者ギルドと、商人ギルドの他にという事ですかな?」
「しょう」
「ありますよ。職人ギルドに薬師ギルド、錬金術ギルドもありますね。あとは何だったか?」
「ひょぉ~! しょんなに!?」
そんなにあるのか? どこのギルドにするか迷ったりしないのか?
「ギルドは複数登録できるのですよ。1つのギルドしか駄目だという訳ではないのです」
「へぇ~!」
「ですから、冒険者ギルドだけでなく商人ギルドにも登録している人もいますよ」
なら、俺はポーションを作るから薬師ギルドかなぁ? でも、商人ギルドもいいなぁ~。思わず短い腕を組んで考える。
「むむむむ……」
「ロロ、また何か考えているのね?」
「りあねえ、まようのら」
「ふふふ、ロロはまだ登録できないわ」
「あぁ~、10しゃいじゃないから?」
「そうね」
そうなのだ。俺はまだまだちびっ子だったのだ。あと7年もあるぞ。
うぅ~ん、登録できる年齢になったらまた要相談なのだ。ディさんにも相談したいなぁ。
ポーションを、作るだけじゃなくて売りたいぞ。
フィーネ達が怪我をした時に、ギルマスに急遽ポーションを売って結構良い収入になったのだ。
それにハンカチだ。あのハンカチは良いってディさんも言ってくれてた。他に何があるかなぁ?
「ほほい、ちびっ子はまだ未来が幾つもの枝葉に分かれているのですね」
ん? ハンザさんが、なんだかちょっぴり難しい事を言い出した。
「この年になると、未来なんてそう考える事はなくなります。あと何年生きられるか分からないですからね」
「まあまあ、ハンザさん。そんな事を仰っては」
「ほいほい、マリー。もう店も息子夫婦に任せてあるし、孫が何人もいる。後はのんびりゆっくりできると思っていたのですよ」
「あらあら、なのに隣領までお仕事ですか」
「そうなのです。ほぅッほぅッほぅッ」
なるほど、もうゆっくりしようと思っていたのだな。
それが、息子さんの怪我で丸1日馬車に揺られて、隣領まで納品に行かなければならなくなったと。それは大変なのだ。
「ふわぁ~……」
「わふ」
する事がなくて、ちょっと眠いのだ。ピカの首にポフンと抱き着く。
このもふもふ感は格別なのだ。ピカの少し高めの体温も心地良い。
「ロロ、抱っこしましょう。眠ってもいいのよ」
「うん」
俺はリア姉のお膝に乗せられて抱っこしてもらう。でも……だ。
んん~……ポジションが決まらない。お眠のポジションがね、あるのだよ。
もぞもぞとリア姉の膝から降りる。
「やっぱ、まりー」
「あらあら」
そう言って、俺はマリーの膝にヨイショと乗る。マリーがガッシリと膝にのせて、抱っこしてくれる。
包まれる感じがいいぞぅ。お尻とか、俺の身体全体だね。そうそう、この感じなのだ。
「えぇー! ロロ、あたしが抱っこしてあげるわよ!」
「ん、まりーがいい」
「ふふふ、あらあら」
だって安心感っていうのかな。こう、マリーの方が弾力があるというのかな。ちょっと失礼かも。
リア姉は、ちょっぴりゴツゴツしているのだ。筋肉なのかな? 女の子なのに。いや、細いから骨か?
「ほぅッほぅッほぅッ」
ハンザさんが独特な笑い声で笑っている。うん、平和なのだ。良い人で良かった。
俺は少しウトウトとしていたのだ。馬車の揺れも、マリーのお膝の上だと丁度良い感じになる。
そんな時に、馬車が急に止まったので目が覚めたのだ。
大人しく眠っていた筈のちびっ子戦隊が、ピクリと反応して起きたかと思うと、あっと言う間に走り出し馬車から飛び降りた。
「ピヨヨー!」
「キャンキャン」
「姉上!」
「降りるわ!」
何だ? どうした? 俺はショボショボとした目を擦りながら、リア姉を目で追いかけた。
手にリア姉の剣と、レオ兄の槍を持って馬車から飛び降りた。
え? 何があったのだ?
「ニコ、危ないから馬車の中に移動するんだ。出て来たら駄目だよ!」
「分かった!」
ニコ兄が、御者台から荷台の方へ移ってきた。
リア姉が槍を投げると、レオ兄がパシッとそれを受け取り走り出した。
「魔獣が出たんだ」
「まあまあ、大丈夫かしら」
まじゅう……魔獣……俺はまだ動かない頭を頑張って動かそうと考える。魔獣が出た……いやいや、危険なのだ。
「ほうほう。森の近くを通る時に、魔獣が街道にまで出てくる事があるんですよ。珍しい事ではないのです」
そうなのか? そんな危険な場所を街道が通っているのか? 駄目じゃないか。
「だから商人は、護衛に冒険者を雇うのです。でも、強い魔獣はもっと森の奥にいますからね。大丈夫ですよ」
魔獣といっても、まだ弱いという事なのだろう。




