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☆第6回ESN大賞W受賞☆④発売中☆元貴族の四兄弟はくじけない! 〜追い出されちゃったけど、おっきいもふもふと一緒に家族を守るのだ!〜  作者: 撫羽
第3章 領地に行ったのら

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150ーみんな一緒

 俺は不思議に思って、ハンザさんが手に持っているギルドカードを見つめていたのだ。


「ほほい? どうしました?」

「はんじゃしゃん、ぼうけんしゃ?」

「ほぅッほぅッほぅッ、違いますよ。ああ、ギルドカードですか?」

「しょうなのら」

「私のギルドカードは、冒険者ギルドではなく商人ギルドなのですよ」

「ほぉ〜」


 そんなのがあるのか? 初めて聞いたのだ。だからハンザさんに教えてもらったのだ。

 商人なら、皆持っているらしい商人ギルドのギルドカード。

 店を持つ持たないに関係なく、物を取引する人は商人ギルドに登録しないといけないそうだ。


「持っていない人は、モグリだから気をつけないといけません」


 ほぉ〜。あれれ? でも、ニコ兄の育てた薬草を売ったりしているけど、商人ギルドのカードは誰も持っていないのだ。

 もしかして、モグリになるのか? 俺達、悪い事をしてしまったのか!?


「ロロ、あれは私とレオが冒険者ギルドに納品しているのよ。だから商人ギルドのカードは必要ないの」

「ひょぉ〜」


 良かった。ちょっぴり心臓がドッキドキしたのだ。


「ほほい、可愛らしいのぉ。孫が小さかった頃を思い出しますね」


 ハンザさんのお孫さんはもう大きいらしい。嫁にいっていたり、店を任せていたりするのだそうなのだ。


「マリーの孫も、立派なお嬢さんだね」

「はいはい。助かってますよ」


 リア姉は、家事が出来ない。元貴族の令嬢って事もあるのだけど、それ以前にリア姉は大雑把を通り越して不器用なのだ。

 本人曰く、包丁と剣は違うらしい。

 なので、早々にマリーの手伝いは諦めた。

 マリー1人で、俺達兄弟と孫娘2人を世話するのは大変だ。エルザとユーリアがいつも手伝っている。

 それでマリーは助かっているのだろう。

 俺は手伝っても大して役には立てない。まだちびっ子だから。


「りあねえ、うしろにいきたい」

「ロロ、どうしたの?」

「おしょとを見るのら」

「景色を見たいの?」

「しょうら」


 リア姉と一緒に馬車の1番後ろに移動する。どんどん防御壁が遠ざかって行く。

 俺は防御壁の外に出たのは3度目だ。コッコちゃんを捕まえに森へ2回行った。

 でもそれよりも前に出た時の事は、覚えてないのだ。

 幌馬車の後ろから、外を見る。外の世界は広いのだ。ずっと遠くまで続いている平原。そこに通っている街道をガタゴトと進む。

 少し離れたところに、樹々が鬱蒼と茂っているのが見える。あそこが森だ。

 フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんの親コッコちゃんの故郷なのだ。気にしないらしく、よく眠っている。

 その奥にはダンジョンがある。そこには魔物がいる。

 いつも、リア姉とレオ兄はこんな場所まで来て、クエストを熟しているのだ。


「ロロ、珍しい?」

「うん、ひろい」

「そうね。ロロは、前に外へ出た時の事を覚えていないのね?」

「うん」

「まだ小さかったものね」

「りあねえ、まらとーしゃまと、かーしゃまが生きてたとき?」

「そうよ。あの頃はまだ家の馬車だったわ」

「しょっか……」


 俺は覚えていない。でも、リア姉達はちゃんと覚えている。貴族だった頃を。そして、悲しい思いで両親のお墓を建てた時の事を。不安と悲しみにすっぽりと包まれた気持ちを、俺は想像できない。

 リア姉達はそれを乗り越えて来たのだ。

 今はこんな幌馬車で領地に向かう。どんな気持ちなのだろう。何を思っているのだろう?


「ディさんに言われたものね」

「でぃしゃん?」

「そうよ。焦ったら駄目だって言われちゃったわ」


 ああ、ギルマスと一緒に会った時だ。

 リア姉が、やるせないような……それでいて少しスッキリしたような、複雑な表情をしている。

 リア姉は焦っていたのだろう。両親が亡くなって、突然やって来た叔父夫婦の事を調べたいのに調べられない。

 納得できない事が、色々あるのだろう。

 それでも、ディさんという信頼できる大人に話せた事で、少しは安堵できたのかも知れない。

 でも、俺は……


「りあねえとれおにい、にこにい、まりー、えるざ、ゆーりあ。みんないっしょ」

「ロロ?」

「みんな元気れいっしょがいい」

「ロロ……そうね。そうだわ」

「うん」


 今の俺の家族はみんななのだ。焦って無茶はしないで欲しい。

 毎日冒険者として出掛けて行くのだって心配なのだ。怪我をしないか、万が一の事があったらと思うと、俺の小さなお胸がキュッと締め付けられてしまう。

 だからニコ兄だって、薬草を育てている。俺はその薬草でポーションを作る。お守りのリボンを刺繍する。

 誰かが怪我をしたり、いなくなったりは嫌なのだ。


「ロロ、大丈夫よ。必ず元気に帰って来るわ」

「うん」


 リア姉が俺の気持ちを読んだかのようにそう言った。父に似ていると言う、ダークブルーの瞳で優しく微笑んだ。

 こうしていると、クールビューティーなのに……残念な事に、手はずっと俺のお腹をフニフニと揉んでいる。何度言っても、やめられないらしい。

 俺のお腹はクセになるみたいなのだ。

 馬車の前にある御者台で、ニコ兄がレオ兄に馬の操り方を教わっている。

 レオ兄とリア姉は馬にも乗れたはずだ。

 いいなぁ、俺も教わりたい。前に行こうかな?

 よいしょと立って前に移動しようとした。


「ロロ、じっとしていないと危ないわよ」

「え、らって見たい」

「ふふふ、ロロは何にでも興味津々なのね。きっと大きくなったら、何でもできるようになるわ」


 そんな事はない。だって俺は2人みたいに冒険者になれる気がしない。剣も弓もきっと苦手だと思う。体を動かす事は苦手なような気がするのだ。


お読みいただき有難うございます!

連休も終わりましたね〜

ロロのお話で、少しでも癒しになればと^^;

宜しければ、下部にある☆マークで評価をして頂けると嬉しいです!ブクマも宜しくお願いします。

今月30日にはハルちゃんが発売されます。

宜しくお願いします!

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] ロロ君のお腹、触ってみたい···♡
[良い点] 幌馬車から見る景色は、電車か見る車窓とは違ってゆっくり流れているのでしょうね。 もしかしたら、ロロが覚えていないだけで亡くなったお父様やお母様と馬車乗って家族で遊びに行ったかも知れませんね…
[一言] ピカ「ワシに乗りゃあええがね
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