134ーこれから
亀さんのクーちゃんは、何も言わないけどいいのかな?
「あたしはぁ、お留守番しているわよーぅ」
「しょうなの?」
「そうなのよーぅ」
進化して聖獣になったらしいけど、相変わらずのんびりとしたクーちゃんなのだ。
でも、良かったのだ。だって、クーちゃんは大きいし重い。移動するのも遅いし、沢山食べる。それは、無理なのだ。
「大所帯だねー。ディさんはコッコちゃん達とお利口に待っているよ」
いやいや、ディさん。大人なのだから、お利口とかないのだ。
「ちょうど、孤児院のコッコちゃん達の事があるんだよ」
みんなで増やしていた雛の事なのだ。まだ全然増えていない。だって数日しか経っていないから。
でも、今後どんどん増やす予定なのだ。そして、卵を売る。それを孤児院の資金にするのだ。
街にいるストリートチルドレンの、働く場所と住む場所を提供できる。お勉強もだ。
その予定で計画は進んでいるらしくて、孤児院の裏にコッコちゃん達の小屋を造るのだそうだ。
「ちょうど、空いたんだよ。住んでいた人が引っ越しちゃって、空き家になったからリフォームするんだ」
どんどん、大きな事になっている。先ずは、ルルンデの名物にするのだ。
ルルンデに来れば、コッコちゃんの卵が食べられるぞ。みたいな感じなのだ。
ストリートチルドレンが保護できたら、次は街の子供達なのだ。教育をしたい。家計の足しになるようにもしたい。
子供達を育てるという事は、街の未来を切り開く事にもなるのだ。
子供達に教育を施す。その子供達の子供は当然、教育を受けるようになる。そうして、生活の基盤を底上げするのだ。
それはきっと、ルルンデの街を豊かにする筈なのだ。
大変な事なのだけど、それをディさんはやろうとしている。
「だからコッコちゃん、僕が卵を温めるのは帰って来てからでもいいかな?」
「コケッ!?」
「ククク」
レオ兄がそう言うと、仕方ない。と、渋々納得している。親コッコちゃんは最近大人しい。いや、違うのだ。フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんが目立ち過ぎるのだ。
とにかく元気だ。まだ雛なのに。走り回っている。
プチゴーレム達と一緒に畑を爆走していたりする。あの細くて短い足で、よくあれだけ走れると感心するのだ。
「元気らね」
「コッコッコ」
「クック」
「あらら」
もう、自分達の手には負えないと遠い目をしている。でも、元気が一番なのだよ。
「コッコ」
「しょうらね」
元気で育っているのはとても嬉しい。と言っている。親心だね。
「ディさん、ランクアップの試験って何するの?」
「リアは剣だよね?」
「はい」
「剣ならギルマスが相手をするんじゃないかな?」
「え?」
なんですと?
「だから、ギルマスだよ。ギルマスと対戦するんだ」
「ええッ!? そんなの敵う訳ないじゃない!」
「アハハハ。そうだよねー」
「ディさん、笑い事じゃないですー!」
「アハハハ!」
ディさんは楽しそうに笑っている。なのに、リア姉は見るからに肩を落としている。
「ダメだわ、私、落ちたわ」
そんな事はない。頑張って欲しいのだ。だって、そのギルマスが大丈夫だと言っていたのだぞ。
「え、じゃあ槍は誰なんですか?」
「槍だと、オスカーさんじゃない?」
「え? オスカーさんは引退したって」
「そう言っているだけだよー」
「そんなー!」
『うまいルルンデ』のご主人、オスカーさん。強いらしい。ガチムチだし、イカツイし。
ふむふむ、これは二人とも頑張らないといけないのだ。
「オスカーさんはCランクだよ。レオ達とそう変わらないさ」
「そんな事ないです。毎日活動している僕達がやっとCランクに上がる為の試験なんですよ。オスカーさんは毎日活動していないのにCランクを維持しているんだ。そんなの敵わないよ」
「弓なら僕なんだけどね」
「えぇー、ディさんは余計に駄目な気がするんだけど」
おやおや、レオ兄まで弱気なのだ。これはいかん。俺が一言言ってあげようではないか。
両手を腰にあて、ちょっぴり偉そうに言ってみよう。
「りあねえ、れおにい、きもちれ負けたららめ」
オマケに、短いプクプクとした人差し指を立てて、フリフリしてあげようではないか。
「ロロ……」
「らめ。がんばるのら」
「アハハハ! ロロの言う通りだよ」
「らってしょうなのら」
「そうだね、ロロはお利口さんだ」
ディさんに頭を撫でられた。優しい手だ。ディさんと数日会えないのは、ちょっぴり寂しいのだ。
今日はとても長い1日だったのだ。
朝早くから、ボア騒ぎだった。午後からはギルドに行く途中でマンドラゴラを見つけた。どっちも、もうみんなのお腹の中だ。
ディさんやチロと一緒に回復もした。
クーちゃんを無事登録して、ギルマスにもらった首輪はクーちゃんが着けている。とってもお似合いなのだ。
ああ、そうだ。クーちゃんが進化して聖獣になった。
レオ兄も鑑定眼が使えるようになっていた。凄い事なのだ。
俺は……とっても……心がポカポカする1日だったなぁ……ふぁ〜……
「ああ、ロロがもう眠りそうだ」
「今日は頑張ってくれたからね」
「ロロ、家に入ろう。もう眠いだろう?」
「ん……れおにい。ポカポカなのら……」
「アハハハ、何の事だか分からないや。ほら、抱っこするよ」
「うん……ふぁぁ〜……」
「ロロ、また明日ねー」
ディさんだ。明日も来てくれるのだ。嬉しいなぁ……
「おやしゅみー……」
俺は、レオ兄に抱っこされてベッドへ。
今日は良い夢が見られそうなのだ。




