133ーボア鍋
最初は心配してくれていたのだろう。でも、今はもうディさんも仲間なのだ。家族じゃないけど、大事なお友達だ。
俺はそれがとっても嬉しい。だから、ちょっとスキップを披露してみよう。
「えへへ~、ごはんはなにかなぁ~」
「ロロ、きっとアレだよ」
そう、レオ兄が言ったアレなのだ。
帰ったら家の前で近所のみんなが集まっていた。外に集まって大きな鍋で煮ている。
「おう! 帰ったか!」
「ロロ! ドルフ爺のボア鍋だぞ! マンドラゴラ入りだ!」
ニコ兄とユーリアが手伝っている。手に大きなお玉を持っているのだ。
朝倒したボアなのだ。それにやっぱ食べちゃうのだ、マンドラゴラ。もうボア鍋に入っている。良い匂いがして美味しそうなのだ。
――キュルルル~
「アハハハ、ロロのお腹が鳴っているよ」
「でぃしゃん、お腹がしゅいたのら」
「はいはい、みなさん食べましょう!」
マリーが仕切っているのだ。『お茶をどうぞ』の上級バージョンなのだ。
誰もそれには抗えない。俺は特にそうなのだ。
「ロロ、こっち来いよ!」
「にこにい!」
呼ばれたニコ兄の隣に、トコトコと走って行く。
コッコちゃん達も、何が始まるのかと興味津々でみんな集まっている。亀のクーちゃんも、流石にこの騒ぎだと起きているのだ。
「さあさあ、みんなでいただきましょう!」
「いただき!」
「いたらきましゅ」
「沢山食べろよ! いっぱいあるからな!」
ドルフ爺だ。今日はドルフ爺の奥さんセルマ婆さんも一緒だ。それに、ドルフ爺の息子夫婦と孫もいる。
「ここに来てない家にもボアの肉をお裾分けしたんだ。近所全部に配ったんだぞ」
「しゅごいのら」
「大きなボアだったからね」
「れおにい、おおきいの?」
「うん、あのボアは獣にしては大きいよ」
「ひょぉ~」
よく、雛とプチゴーレムで足止めしていたのだ。あんなに小さいのに。
みんなはボア鍋をつついているのに、ディさんはシャクシャクといつもの様に特盛サラダを食べている。
「でぃしゃん、おいしいのら。たべないの?」
「食べるよー。先にサラダを食べるんだ」
ほう。まあ、いいや。ボア肉から出汁が出て、マンドラゴラが良い感じに煮込まれている。魔物とは思えないのだ。
コッコちゃんファミリーが、お野菜を沢山貰って食べている。亀のクーちゃんもだ。
ピカとチロはボア鍋のお肉を貰って食べている。チロさん、ちょっと大きくなってないか?
「ちろ、おっきくなった?」
「ロロ、そうか?」
「うん。かいふくまほうも、しゅっごくちゅかえるようになったのら」
「そうなのか?」
「うん。今日は、ちろもだいかちゅやくらったのら」
「アハハハ、そうだねー」
「いつも寝てるのにな」
ニコ兄、それを言っては駄目なのだ。確かにいつも寝ているけど。
「あ、そうだ。ニコ、ロロ。明後日ギルドのランクアップの試験なんだ。それが終わったらお墓参りに行くよ。やっと馬車を借りられそうなんだ」
「みんなで行くのかしら? ロロちゃんはまだちびっ子なのに、大丈夫かしら?」
初登場、セルマ婆さんだ。ちょっぴりおっとりとしたお婆さんなのだ。ドルフ爺さんは賑やかでせっかちなのに。
俺の話の中に出てきた事はある。日向ぼっこ友達だから。でも、ご本人の登場は初めてだ。優しいお婆さんなのだ。
今も、ニコ兄と一緒に俺の世話を焼いてくれる。俺が食べやすいようにお肉を小さく切ってくれたり、俺のほっぺを拭いてくれたり。ありがとう。
コッコちゃんも懐いている。一緒に日向ぼっこしているからなのだ。
「らいじょぶら。ボクも行きたいのら」
「そうよね、ご両親のお墓参りですもの。でも、ロロちゃんがいないと寂しいわねぇ」
「ちょっとのあいららけら」
「そうね、待っているわ。ちゃんと無事に帰って来てね」
「うん」
この、おっとりとした雰囲気が安心するのだ。何度も言うようだけど、ドルフ爺さんは賑やかでせっかちだから。
「儂がコッコちゃんの世話をしとくぞ」
「うん、ドルフ爺頼んだよ。クーちゃんも頼むよ」
「おう! ニコ、任せとけ!」
と、そこに物言いがついたのだ。大人しくお野菜を食べていると思っていたのに、聞いていたのだね。俺達の前に整列している。こんな時は行動が早いのだ。
「ピヨッ!」
「ピヨピヨ!」
「ククッ!」
そう、フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんだ。
自分達も行くアルね! どこに行くアルか!? 付いて行くアルよ! と、訴えている。
既に親コッコちゃんは諦めモードなのだ。あの子達はお手上げだと、諦めて遠い目をしている。寧ろ、よろしく頼むといったスタンスなのだ。
「ロロ、どうする?」
「えー、おるしゅばんれきない?」
「ピヨヨ!」
「ピヨ!」
「クック!」
どうしてアルか!? 守るアルね! 役に立つアルよ! なんて口々にアピールしている。
ああ、もう仕方がない。
「おりこうにれきる?」
「ピヨヨッ!」
いつもお利口アルね! だって。自信満々に言っちゃってるのだ。でも、親コッコちゃんは心配しているよ?
君達を統率できる様な、雛まで産み出そうとしているのだよ。
「まあ、いいんじゃない? プチゴーレムもいるんだし」
「え……?」
ディさんが大変な事を言ったのだ。
俺は、プチゴーレム達を連れて行くつもりはないぞ?
「ロロ、あの子達はロロの魔力が必要なんだよ?」
「あ、わしゅれてたのら」
「わふ」
「しょお?」
「わふん」
魔力はあげてほしいと、ピカにも言われちゃったのだ。待てよ……なら、結構な大所帯になるのではないか?
マリー一家も行くのだよ? だって息子夫婦のお墓参りも兼ねている。それに、雛3羽とプチゴーレム5体なのか?
「完璧じゃない、ロロ」
「えー」
「アハハハ!」
どう考えても多いのだ。
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もう少し2章が続きます。3章は何が起こるのでしょうね〜^^;
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