128ー遅い
ん? ちょっと待つのだ。ドルフ爺が、この辺りでマンドラゴラを見つけたと話していた場所だよ。
「でぃしゃん、ここって」
「そうだよね」
なんだ、気付いていたのだ。これはちゃんと本人に確認しないといけないのだ。
本人……いや、本亀さんにだ。きっと今も家の軒下でお昼寝中なのだろう。
「でぃしゃん、かえるのら」
「そうだね。ドルフ爺さん、マンドラゴラは任せてもいいかな?」
「おう、チビ助達もいるから大丈夫だぞ」
「じゃあ、頼んだよ」
チビ助だって。ちゃんとお名前があるのだ。今度、ドルフ爺にも教えておこう。
あ……でも、みんな一緒だから区別がつかないかな? またおリボンで区別しようか? 色の方が分かりやすいよね。いや、どうしよっかな~。
家に到着すると、やっぱ眠っていたのだ。のべっと手足やお顔を伸ばして幸せそうに眠っているのだ。
森だといつも危険と隣り合わせだ。うちに来て、きっと安心しきっているのだろう。でも、ちょっと起きてほしいのだ。
「くーちゃん」
「すぴ~……シュルシュルシュル……すぴ~……」
これ、亀のクーちゃんの寝息なのだ。クーちゃんの寝息で俺の前髪が揺れる。本当、気持ち良さそうに熟睡なのだ。
「くーちゃん、おきてー」
「シュルシュルシュル……すぴ~……」
「くーちゃん!」
起きてくれないから、俺はクーちゃんの甲羅をペチペチと叩いた。
甲羅はとっても硬い。俺の手の方がやられてしまいそうなのだ。
「んん~、もうご飯なのかしらぁー? ムニャムニャムニャ」
ディさんがクスクスと笑っているのだ。寝るか食べるかなのか? それ以外の選択肢はないのだろうか?
「くーちゃーんッ!」
「んん〜……あらぁ、ロロちゃんじゃないのよーぅ。どうしたのかしらぁー?」
「あのね、くーちゃん」
俺は、亀さんのクーちゃんに聞いたのだ。森から出て来る時にクーちゃんだけだったのかと。
何故なら、くーちゃんを最初に見つけた場所にマンドラゴラが集中して生えていた。
もしかして、クーちゃんの大きな甲羅に乗ってきたのではないかと思ったのだ。
「そうねぇ~……」
やっぱ、喋るのが遅い。
「ええーっとぉ~……」
考えるのも遅い。
「……よく分かんないわよーぅ」
なんだよ。引っ張っておいて、その答えなのか?
「えぇー、くーちゃんほんとに?」
「だってぇ、勝手に背中に乗られちゃっても分からないのよーぅ」
「しょうなの?」
「そうなのよーぅ。だって重くないのだものぉ」
そうなのか? え? 本当に? 重くないの? だったら俺が乗っても大丈夫なのか?
「アハハハ。ロロ、無理だね。でもきっと、クーちゃんの知らないうちに乗って来たのだろうね。でないと、マンドラゴラが自分でこの距離を移動するのは無理だよ。乗って来たのは良いけど、途中で落ちちゃったんじゃない? だから仕方なく街道沿いに生えていたんじゃないかな?」
「しょうらね」
本当、お騒がせなクーちゃんなのだ。自分では分かっていないし、クーちゃんの所為でもないのだろうけど。
「ねえねえ、ロロちゃーん。もうご飯かしらぁ?」
「まららよ。まらまらなのら」
「あら、そうなのぉ? じゃあ、もう少し寝ようかしらぁ~」
はいはい、お昼寝のお邪魔しちゃってごめんなのだ。
とってもマイペースな亀さんなのだ。大らかと言うか、鈍感と言うのか。細かい事には拘らないと言うのか。
「あー、らから長生きれきたんら」
「アハハハ! ロロったら」
何故に笑う? その通りだと思うのだ。
細かい事に拘らない。ストレスフリーのあの性格が、きっと長生きの秘訣なのだ。
「じゃあ、少し街道の方へ行ってみよう」
「わかったのら」
俺はディさんと手を繋いでトコトコと歩く。畑の中の小道を通って街道に出る。今度は街とは反対方向、森に向かって歩くのだ。だけど、そう簡単には生えていない。
と、言うか俺が遅いのだ。なにしろ、まだちびっ子だからね。
畑の横を歩いていると、キャンキャンとプチゴーレム達の声が聞こえて来る。きっと、ここにも生えているよとドルフ爺に知らせているのだろう。
やっぱ畑の土がいいのかな? 土がフワフワだもの。
プチゴーレム達の声がした方へと、ドルフ爺が走っている。元気なお爺さんだ。
んん? キャンキャンという声に混じって、ピヨヨッて声がするのだ。
「ま、ましゃか……」
「アハハハ!」
ディさんが歩きながら爆笑している。あの鳴き声は、フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんだ。
ドルフ爺と一緒に、畑の小道を爆走しているのだ。ああ、本当に元気がいい。
そりゃ、親コッコちゃん達の手に余るよ。親コッコちゃん達は大人しく、クーちゃんと一緒にお昼寝しているもの。
確かに、あの子達を統率する子が必要なのだ。俺はそう確信したのだ。
なら、あの子達と同等の身体能力があって、統率する能力も持ち合わせていないといけない。
ああ、だからレオ兄なのか。なるほど、納得したのだ。
ディさんは俺の歩く速度に合わせてゆっくりと歩いてくれる。
それでも、森が遠くに見えてきた。その手前にある防御壁も見えている。
ギルドへの往復で、マンドラゴラは2体見つけてディさんがやっつけた。
いくらクーちゃんが大きいと言っても、甲羅に乗れる数は限界があるだろう。
「ロロ、抱っこしようか? 疲れない?」
「まら、らいじょぶなのら」
「そう? 沢山歩けるようになったね」
「ふふふん。ボクもせいちょうしているのら」
「アハハハ。成長かぁ。そうだね、ヒューマン族は成長が早いもんね」
んん? またまた引っ掛かる事を言ったのだ。
お読みいただき有難うございます!
本日19時頃にチラッと何かをお見せできるみたいです!
ちゅどーん!のアレです。^^;
ロロも頑張れ!と、応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをして頂けると嬉しいです!
あともう少しで第3章です。頑張りますよー!
宜しくお願いします(๑˃̵ᴗ˂̵)/




