122ー名付け
「マリーさん、今日の午後はロロがお昼寝から起きたら一緒にギルドへ行ってくるよ」
「あらあら、そうなんですか?」
「でぃしゃん、ぎるどに行くの?」
「そうだよ。亀さんを登録しないとね」
ああ、そっか。大きな亀さん。ほとんど1日中眠っている。昼間は家の軒下で、夜は柵の中でコッコちゃんに埋もれてスピーッと熟睡しているのだ。
亀さんの寝息で近くの草が揺れている。どんだけ熟睡しているのだ。
これでよく森で生きてこられたよ。
「きっと、安全だから安心しているんだよ」
「しょう?」
「うん。もうお年だしね」
霊獣だという亀さん。一体何年生きているのだろう?
あの甲羅、とても綺麗なのだ。見方によってはゴールドにも見える。なんだか、少し神々しいぞ。なのに、あの寝息だ。
「ねえ、ロロ。亀さんにお名前はつけてあげないの?」
「えぇー、かめしゃんにぃ?」
「そうだよ。付けてあげたら?」
そんな事をして、またペカーッて光っちゃったらどうするのだ?
ディさんが、ニッコニコしている。これは確信犯だな。面白がっているだろう?
「でぃしゃん、ペカーッて光ったらろうしゅんの?」
「ん? いいじゃないか!」
いいのかよッ! 分かりやすく確信犯だな。
「ん〜……かめしゃん……かめしゃん……」
とにかく、何かないかと考えてみる。プクプクの指を顎の下に持っていき、ちょっぴり博士のような感じを醸し出してみよう。
そう言えば……霊亀と聞いて思い浮かぶのが玄武だ。でも、それはちょっとお婆さんの亀さんには似合わないかな? 他にないかな? 神話に出てくる亀さんがいたぞ。確か……
「くーるま……らっけ? くーちゃん」
俺がそう言うと、亀さんがペカーッと光っちゃったのだ。
それだけじゃない。なんだか色も少し変わったのだ。金色が濃くなったのだ。当の亀さんは、全く気付かずにスピーッと眠っている。
「ほらぁ、でぃしゃん」
「うんうん、光っちゃったねー。でも、ちょっと待ってよ。色が変わったような? もしかして……」
ディさんはまた亀さんをじっとみている。亀さんの色が変わったから、きっと精霊眼で見ているのだ。
なんだか、ちょびっと居心地が悪いのだ。俺、もしかしてまたやっちまったのか? でも、名前を付けてと言ったのはディさんなのだ。
「フゥ〜、ロロ……亀さんは霊獣だったんだ」
ん……? だった? 過去形?
「さっき光っただけじゃなくて、甲羅の色も変わっただろう? それでね、精霊眼で見てみたら聖獣に進化したみたいだ」
「せ……?」
「聖獣。ピカとチロは神獣。その次が聖獣だね」
「しょのちゅぎは?」
「亀さんがそうだった、霊獣だよ」
「おぉ……」
「ロロが名前をつけた事で進化したんだ」
ほお……そんな事があるのだね。ほお〜。それはまた、凄いのだ。
「いやいや、ロロ! 僕は何百年と生きて来たけど、こんな事は初めてだよ!」
え……やっぱディさんって何百歳なのだ。本当は超お爺さんなのか?
「いやいやいや、ロロ。そこじゃない!」
「かめしゃん、ちょっぴりえらくなった」
「んん〜、簡単に言えばそうかな」
「しゅごいねー」
「アハハハ! もう、さすがロロだよ!」
ディさんに、高い高いをされてクルクルと回られてしまった。驚いたのだ。
高い高いなんて、もうされる歳じゃない。その上クルクル回られると、思わず『とおッ』とパンチしちゃいそうになっちゃったのだ。いかんいかん。それは俺じゃない。
でも、神獣のピカやチロはテイムできないのだろう? 霊獣の亀さんはできちゃうのか? その上、進化しちゃったのか? それって、どうなのだ?
もしもーし、駄女神さーん。見ているかな? こんな事で、良いのか?
「格の違いだよ。ロロなら、もしかしたら出来るかもって思ったんだ。だってロロは山盛りの加護を持っているからね」
そうかよ、山盛りなのか。こうなったら、いくらでも来いだ。慣れっこになっちゃったのだ。
「で? お名前は何だって?」
「くーちゃん」
「くーちゃんかぁ。可愛いねー」
俺の名付けのセンスってどうなの?
自分でも思うよ。だって、フォリコッコだから、フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃん。亀さんは、クーちゃん。
クーちゃんはね、なんとか神話に出てくるクールマて亀さんから貰った。
これでも一応、ちゃんと考えたのだ。だって、いくらなんでも亀さんだからと『かーちゃん』は可哀そうなのだ。
そうなると、当然黙っていないのが土人形……いや、プチゴーレム達だ。
いつの間にか、俺の前で横一列に並んで座って尻尾をブンブンと振っている。とっても期待の眼差しで見られている気がするのだ。目がキラキラしているぞぅ。
「ほら、ロロ。待ってるよ」
「えぇー、でぃしゃん。らって五つもらよ」
「そうだねー」
無理。凝った名前なんて絶対に無理だ。だから悪いけどさ。
「いっちー、にっちー、さっちー、よっちー、ごっちー」
プチゴーレム達が、次々とペカーッと光った。うむ、満足なのだ。ふふふん。
「アハハハ! 数じゃない!?」
「もう無理なのら」
「可愛いからいいよー!」
プチゴーレム達は嬉しそうに尻尾をブンブンと振っている。
亀さんはまだ寝ている。寝ている間に、お名前が決まっちゃったよ。しかも進化しちゃった。いいのかな?
プチゴーレム達は満足したらしくて、畑へ走って行ったのだ。またパトロールしてくれるのだろう。
うちの子達は、みんなお利口さんなのだ。
お読みいただき有難うございます!
やっとお名前が決まりました。
ロロちゃんらしいと思うのですが、如何でしょう?^^;
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宜しくお願いします。




