119ー思っていた
「でぃしゃん、ごーれむ?」
「そうだよ。あれは立派なゴーレムだ。ロロの魔力で動いているんだ。小さいから、プチゴーレムかな? アハハハ」
ピカもそう言っていた。俺の魔力なのか。魔力なんて込めたつもりはないのだ。
もしかして、俺はまだディさんがよく話している『魔力操作』が全然できていないのかな?
だから、コッコちゃんの雛もオレンジ色で強くて、土人形も動いてしまうのだろうか?
むむむ、と腕を組んで考え込む。お目々が寄ってしまうのだ。
「わふッ?」
ピカまで隣で首をコテンと傾けている。
ピカさんや、尻尾をワフワフと動かすのはやめてほしい。首筋に当たってくすぐったいのだ。
「ロロ、何考えているの?」
「でぃしゃん、らってボクはポカポカぐるぐるしてるのら。れも、らめなの?」
「そんな事ないよ。ロロはゴーレムを作る時や、卵を温める時に何を考えていたか覚えているかな? 卵を温めながら何を思っていた?」
「元気にうまれてくるんらよって」
「そうだね、とっても元気な雛が生まれてきたよね」
え……。
「で、ゴーレムの時は?」
「ぴかのこぶんらよって」
「うん、立派なピカの子分だね」
えぇ……!?
な、なんと……そういう事なのか? ちょっと違うのだ。斜め上を行き過ぎなのだ。
「アハハハ。なんて楽しいんだろう」
いやいや、楽しくはない。でも、まあ……悪い事ではないのだ。
ディさんが、プチゴーレム達とオレンジ色した雛達を見て、微笑みながら言った。
「うん、いい事だ」
「うん、でぃしゃん」
そうだ、良い事なのだ。ピカの子分で畑をパトロールしてくれている。安心じゃないか。土人形もとい、プチゴーレム。
フォーちゃん、リーちゃん、コーちゃんも頼りになる。元気で良いのだ。
「ロロ、それだけじゃないだろう?」
え? 俺は本当に、もう何もしていないのだ。分からないなぁと、コテンと小首を傾けた。
「オレンジ色の雛達だよ。ハイコッコちゃんて何なの?」
「あ……」
そうだったのだ。女神が話していた。進化したのだった。
「もしかして進化させちゃったのかな?」
「うん、しょうみたいなのら」
「アハハハ! 凄いや!」
ディさん、大ウケなのだ。お腹を抱えて爆笑している。何故に?
「コッコちゃんは弱いから進化なんて出来なかったんだよ。なのに凄いよ! ロロの魔力かな?」
「しょうみたいなのら」
「これは新発見だね! ギルマスに報告しなきゃ」
そんなになのか? あんまり大事にはしたくないなぁ。
「ロロ、またオレンジ色の雛を孵してよ」
「えぇー」
「だって、進化したのが3羽だけなんて寂しいじゃない。生き残って増えてほしくない?」
「んー、しょうかも」
「なら、もっと数を増やしてよ」
「んー、考えとくのら」
「え? 乗り気じゃないの? どうして?」
だってなぁ。偶然生まれたオレンジ色の雛達なのだ。だから、温める時にどれくらい魔力を与えたのか、そんな事を全然覚えていないのだ。
「ロロ、何を考えていたのか思い出してみて」
「えっと……元気に生まれてくるんらよって」
「そう。それでいいんだよ」
そうなのか? そんな事でいいならやるよ。
「わかったのら」
ハイコッコちゃんが、この世界にたった3羽だけなのも確かに寂しいのだ。
「あれ? ディさん来ていたんですか?」
リア姉とレオ兄が戻って来たのだ。
「おはよう、朝から楽しいものを見せてもらったよ」
「アハハハ、ロロですね」
「才能が溢れ出しているね。ロロは元々土属性魔法に適性があったんだ。それに、ハンカチやリボンの事といい付与魔法に秀でているのかも」
「ふふふ、ロロはそんな事思っていないと思うわ」
「リア、君はもっと魔力操作を練習しなよ」
あらあら、また言われているのだ。だから、一緒に練習しようと言っていたのに。
「分かってますぅ~」
そんな、口を尖らせても可愛くはないのだ。ツンデレさんじゃあるまいし。
「ロロ……」
「りあねえ、なにもおもってないのら」
「そう?」
ふゅ~、危なかったのだ。顔に出ちゃっていたのだ。
「2人は今からどうするの?」
「ギルドに行きますよ。報告しないと」
「そうだね、頼めるかな?」
「はい」
「ねえ、レオ。今日は報告してから森に行かない?」
「姉上、ホーンディアだろう?」
「そうよ。今日こそは仕留めてやるわ!」
何かな? ほーん……ん?
「ロロ、ホーンディアって言ってね。左右に二本ずつ角がある鹿の魔獣なんだ」
「ひょぉー!」
「お肉も美味しいわよ」
「おにくッ!」
「アハハハ。リアは何故そのホーンディアを狙っているんだい?」
「はい、剣帯を作ってもらうんです」
「ああ、前に言っていたね。魔魚を売ったお金で足らなかったの?」
「いえ、充分なんですけど。姉上の拘りなんですよ」
「別にいいじゃないぃ」
リア姉がその鹿の魔獣に拘っている理由だ。
今使っている剣帯は父さまから貰った物だ。それと同じ革で作りたいと拘っているのだ。
ホーンディアの革は、水に強く、伸縮性、通気性に優れた特性を持ち劣化しにくい。その上、滑らかで軽いという一級品なのだ。
「同じ物で作ってもらおうと思ったら、革がないって言われちゃって」
「ああ、だから狩るのか」
「はい」
「僕の弓も作ってもらうんです」
レオ兄が、いつも背中に背負って持って行っている弓を持ち出してディさんに見せた。
お読みいただき有難うございます!
リリの3巻が無事に発売され、ホッと一息。次は4巻だぁー!
ロロも応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをして頂けると嬉しいです!
よろしくお願いします!




