113ー霊獣
そうだ、大きな亀さんに気を取られていたけどオレンジ色した雛達だ。亀さんにキックをお見舞いしていた。
「ふぉーちゃん、りーちゃん、こーちゃん、ちゅよいんらね」
「あ、そうだよ。この雛達強いね」
「ね〜」
「ピヨッ!」
「ピヨピヨッ!」
「ピピッ!」
まだまだアル! 余裕アルね! 役に立ったアルか? と、口々に話してくる。ピヨピヨと鳴きながら、パタパタとジャンプしている。
そんな事、他の雛は出来ないのだ。まだヨチヨチ歩きなのだから。
亀さんはお婆さんだし、お腹が空いていたから弱々だったのではないかな?
「わふ」
「え、しょうなの?」
「ロロ、この亀さんはそんなに強くないんだ」
強くないのか? それでよく長生きできたのだ。あの魔獣が闊歩している森でさ。
「だから、珍しいんだよ」
「へぇ〜」
「わふわふん」
「え? 魔法?」
ピカが教えてくれたのだ。この亀さん、魔法が使える。でも、その魔法というのが『擬態』と『硬化』なんだって。
もしも強い魔獣に出会ってしまったら、手足を甲羅の中に入れて岩に擬態をして体を硬化させる。気配まで消して、それこそ本物の岩みたいになるのだそうだ。それで、魔獣をやり過ごすのだ。
打撃攻撃なんて、動くのが遅くて出来ない。手を動かしているうちに、ガブリとやられてしまう。魔法も攻撃魔法は使えない。それに、草食なのだそうだ。
ゆっくりと移動しながら、森に生えている草をモシャモシャと食べる。
魔獣がいたら、擬態と硬化でやり過ごす。そうやって何百年も生き延びてきた。
「ひょぉー! しゅごいのら!」
「アハハハ、そうだろう? 本当に珍しいんだよ」
「わふ」
ピカも、初めて見たと言っている。
「かめしゃん、たいへんらったねー」
モシャモシャと夢中でお野菜を食べている。腹ペコ仮面なのだ。
「ねえ、ロロ。この亀さんも飼ってあげたら?」
ディさんが言い出した。
うちにはコッコちゃんファミリーがいるのだ。まだ増えるだろうし。
その上、大きな亀さんなのか? 大丈夫なのか? 飼うからには、可愛がってあげたいし。
「だって、森に帰すのは可哀想じゃない? もうお年だし」
「んんー」
俺は腕を組んで考える。
いいのか? 飼ってしまって、お世話が出来るのか?
餌はどうだろう? うん、大丈夫だ。お野菜の葉っぱが沢山ある。
亀さんのお家はどうするのだ? どんな環境が良いのだろう?
「でぃしゃん、かめしゃんはおみじゅのあるところに住んでるの?」
「この亀さんは陸亀の一種なんだ。それにもうお年だからね。体が浸かる程のお水は必要ないよ。時々ロロの魔法で、水を掛けて甲羅を洗ってあげるといい。普段は飲み水だけで大丈夫だよ」
「しょっか」
なら、大丈夫か? どうしよう? こんな時は、大雑把なマリーに相談なのだ。
「まりー」
「はいはい、どうしました?」
「かめしゃん、かってもいい?」
「はい、いいんじゃないですか?」
お、迷わず答えた。これは、あんまり考えていないのだ。
「亀さんはちょこまか動かないでしょう?」
「もう、おばあしゃんなのら」
「あらあら、そうなんですか?」
お野菜をペロリと全部食べちゃった亀さん。
「ふぅ〜、とっても美味しかったわぁ〜」
喋ったのだ。喋れると知らなかったマリーは驚くかな?
「あらあらまあまあ! 話せるのですね!」
手を叩いて面白がっている。目がキラキラしているのだ。何故に?
「長生きしている亀は、縁起が良いと言いますよ!」
そうなのか? 亀は万年みたいな感じか?
「このかめしゃんは、れいじゅうなんらって」
「え? 何ですか?」
「マリーさん、霊獣なんだよ」
マリーが首をキョトンと傾げた。理解できてないぞ。
ディさんが説明してくれた。今日2度目だ。
「あらあらまあまあ! それは凄いですね!」
マリーも、今日はダブルを大サービスなのだ。
ピカとチロの方が、もっと凄いのだけどマリーは分かっていない。
「けろ、でぃしゃん。かめしゃんが帰りたかったらしょのほうがいいのら」
「そうだね、聞いてみよう」
そうそう。亀さんの希望を聞いてみよう。
「ねえ、かめしゃん。うちにいる? 森にかえるならおくっていくけろ」
「ええぇ、ほんとにぃ? いても良いのかしらぁ?」
「いいよー」
「じゃあ、お世話になるわよーぅ。安全だしぃ、とぉっても美味しいお野菜もあるしぃ嬉しいわぁー」
簡単に決まってしまったのだ。
どうやら亀さん、森に帰るのも一苦労らしい。道中何があるのかも分からない。
森から来る時も、何日も掛かったそうだ。人に突かれ蹴られ、馬車に轢かれそうになりながら、移動して来たらしい。
そういえば、森に煩いのがいると話していた。棲み難くなったのかな?
「ほんっと、安全だしぃお野菜は美味しいしぃ、ありがたいわよーぅ」
亀さんは、お水を飲んでお野菜も沢山食べた。うちにいる事になって安心したのか、軒下にのっしのっしと移動してスピーッと眠ってしまった。
森から何日も掛けてやって来て、疲れたのだろう。
それにしても、首や手足をのべーッと伸ばして無防備に眠っている。これでよく今迄生き延びてきたものだ。
「ありゃりゃ」
「アハハハ、お年だからね」
「コッコちゃん達が賑やかですけど、平気でしょうか?」
「うん、いいんじゃない?」
ディさんも、アバウトなのだ。
お読みいただき有難うございます!
明日4月1日はリリの3巻発売を記念して、発売記念SSを投稿します!
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ロロくんも頑張りますよ〜(๑˃̵ᴗ˂̵)/
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