109ー畑を見に行く
「とっても可愛いネーミングなのですッ!」
可愛いかぁ? マンマだと思うぞ。女神がそれで良いなら、俺に文句はないけど。この世界の主神が、決めた事なのだから。
「あのエルフが見たら、きっと分かるのです!」
そうだろうね。ディさんの精霊眼だ。なんでもお見通しの精霊眼。あ、そうなのだ。思い出した。
「ボクも、しぇいれいがんほしいのら」
「それは無理なのですぅ。種族的に精霊眼は無理ですぅ」
なんだよ。詰めが甘いな。
「でもぉッ! ロロのお兄さんが『鑑定眼』をもう直ぐ使えるようになるのですッ!」
それはディさんが言ってたよ、ずっと前にね。今更だよ。俺は? 俺はないの?
「ロロはまだまだちびっ子なのでぇ……」
指を弄んでモジモジし出したぞ。目も合わせようとしない。何処を見てんだ? 何だ? 後ろめたい事でもあるのか?
「まだちびっ子の時から、そうポンポンと高度な魔法を使うのは良くないのですぅ。ヒューマンという種族はそんなに強くないのです。その中でも、ロロは特別に魔力量が多いのです。もう少し大きくなるまで我慢なのです」
「わかったのら」
女神が愛おしむ様な表情で俺を見る。どうした? 急に女神らしくなったぞ。
「ロロにお礼を言いたかったのです。いつも食べられてしまって、何千年も進化できなかったコッコちゃんを進化させてくれました。有難うなのです」
なんだ、今日はそんな事で呼んだのか? 態々さ。
「いいよー」
「フグッ! ぎゃんカワ!!」
また、両手で顔を覆って仰け反っている。真面な事を言ったかと思ったら、直ぐにこれだ。
これは性格の問題なのだよ。何度も言うけど、見掛けは良いんだ。さすが女神なのだ。
ああ、何故かリア姉の顔が思い浮かんだぞ。いかんいかん。リア姉はこんなに酷くはないのだ。
「でも、ロロ。いくら魔力量が多いと言っても、魔力切れには要注意なのです。魔力切れになると、頭に激痛がして意識を失うのです」
「ええー、しょれはいやら」
「ロロは多少の事では、なりませんけどね。覚えておいてください」
「わかったのら」
「また、遊びに来てくださいー!」
と、言って女神が手をブンブンと振っていたのだ。
そして、俺は目が覚めた。ああ、目ざめが悪いぞぅ。
「ロロ、おはよう」
「れおにい、まらねむいのら」
もっといい夢を見てから起きたい。爽やかな目覚めを求むのだ。
「もう時間だよ。起きよう」
「うん」
着替えて……いや、レオ兄に着替えさせてもらって一緒に下へ降りて行く。
「マリー、おはよう」
「おはよー」
「はいはい、おはようございます!」
マリーはもう朝食を並べている。今朝も美味しいコッコちゃんの卵料理が並んでいる。今日は何だろうなー?
「ロロ坊ちゃま、レオ坊ちゃまと一緒にお顔を洗ってきてください。それからですよ」
「わかったのら」
「ほら、ロロ。いくよ」
「うん」
俺ってまだ3歳なのだ。分かる? 3歳だよ。3歳児ってどれだけ自分で出来ると思う?
そんなに出来ないのだ。服を着替えるのだって、自分一人ではできないし、顔を洗うのだって洗ってもらうのだ。歯磨きだって、チェックが入る。レオ兄の厳しいチェックが。
女神が魔法は、もっと大きくなってからだと話していた。
「大きくなりたいなぁ……」
「ロロは今のままでいいよ。可愛いんだから」
「えー、早く大きくなりたいのら」
「ゆっくりでいいよ」
レオ兄が、まるで父親の様な目線で俺を見る。父性だね、有難い。良い兄と姉で良かった。
だから余計に思うのだ。早く大きくなって、俺も役に立ちたい。
今日もディさんは来ている。片手に大きな籠を持って、畑にいるのだ。ディさん用の麦わら帽子まで用意してある。
余程、ニコ兄の野菜が好きなのだろうね。畑の中でクルッと回ったり小躍りしている。
俺はその後ろをトコトコと付いて行く。そのまた後ろはコッコちゃんファミリーだ。雛も一緒に付いてくる。ゾロゾロと。
先頭を行くディさんが、ランララ~ン♪とか歌っていて、後ろのコッコちゃんがコケッコと鳴いている。にぎやかなのだ。
マリーが近くで、ニコニコしながら見ている。
平和だ。お天気も良くて、暑くも寒くもない。時々、ソヨソヨ〜ッとそよ風が頬を撫でていく。
ピヨピヨと鳴いているよ……幸せの青い鳥さんではなく、黄色いコッコちゃんの雛達が。
「コッコッコ」
「ああ、いってたね」
「クック」
「うん、わかったのら」
「ロロ、コッコちゃんは何て言ってるの?」
「にこにいが、てちゅらっている畑を、みにいきたいのら」
「ニコの!? 僕も行きたい!」
だよね~。ディさんはニコ兄のお野菜の大ファンだから。いや、信者とでもいうのか。推しか? 推し活しちゃうか?
「まりー、にこにい見にいってくるのら」
「はいはい。お昼までには帰ってきてくださいね。ディさんとピカの側を離れたら駄目ですよ」
「わかったのら」
ほら、マリーもまだ心配性なのだ。これは、もしかしてずっと続くのかな?
取り敢えず、俺はピカに伏せをしてもらって背中に乗る。
畑の中の小道は歩き難いから。と、雛達が一緒に乗りたそうに、ピヨピヨと訴えてきたのだ。小さな羽根をパタパタさせている。
可愛いなぁ〜。ほら、おいで。乗せてあげよう。
淡い黄色した普通の雛2羽とピンク色した雛だ。コッコちゃんファミリーみんなで行くらしい。
お読みいただき有難うございます!
陽が落ちるとまだ肌寒く感じますね〜
週明けにはリリの3巻が発売になります。
発売記念SSを投稿する予定ですので、そちらも宜しくお願いします!
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目指せトップ10入り!(まだ言ってる^^;)
宜しくお願いします!




