104ー絞めらんねー
「ふふふ。はい、果実水ですよ。ディさんもどうぞ」
「マリーさん、有難う」
「まりー、ありがと」
そっか、俺に合ったお仕事か。
そう考えると、今趣味でやっている刺繍にもっと付与できる様になれたらいいな。
もっとリア姉とレオ兄を、守ってくれる様にリボンもバージョンアップしたい。それに、ポーションだ。そうだった、ポーションは売れるのだ。
上級のポーションが作れる様になれたらいいな。魔石にも付与できる様になりたい。
俺はディさんの隣に座って、両手でコップを持ってコクコクと果実水を飲む。ピカとチロも飲んでいる。コッコちゃんはいらないのかな?
「コケ」
「コッコ」
「しょうなの」
お昼の後にお水をもらったらしい。いつもよく喋るコッコちゃんが、分かる様になってきたのだ。
主に2~3羽が代表して話してくれる。リーダーさんかな? 日替わりだったりして。
そんな事をされると、余計に区別ができないのだ。やっぱおリボンでも、つけるべきか? 七色もないよ。レインボーじゃん。
鶏冠の色が違うとか、一目見ると分かる様な特徴があったら良かったのに。七色の鶏冠のコッコちゃん。それも良くない?
「ロロ、行こうか?」
「うん、でぃしゃん」
「コケッ?」
「こっこちゃんはおるしゅばんなのら」
「コッコ」
「うん、おねがいね」
「コケ」
お留守番は任せて。と言ってくれた。何を任せるのやら。コッコちゃんは弱っちいのに。
でも、お利口さんだから安心してお留守番を頼めるのだ。誰もいない時に勝手にどこかに行ったりする心配はない。一応、柵の中には入っていてね。
ディさんとマリーと手を繋いで歩く。後ろにはピカ、俺のポシェットにはチロだ。
最近はこれが定番になっているのだ。教会にもよく行くようになった。
少し前は、教会まで歩くのも疲れていたのに、大分慣れてきた。行きも帰りもちゃんと自分の足で歩いている。
前はマリーに抱っこしてもらったり、ピカに乗ったりしていた。俺も成長しているのだ。
今日は先に『うまいルルンデ』に行く。
扉を開けて入るとエルザがいた。
「ロロ坊ちゃま、ディさん、おばあちゃん。コッコちゃんですか?」
「そうだよ、エルザ。ご主人は忙しいかな?」
「もうお昼のピークは過ぎたから大丈夫ですよ。呼びますね」
「ああ、裏に回っているよ」
「はい、分かりました」
直ぐに出て『うまいルルンデ』の裏へと向かう。居たよ、居た居た。コッコちゃんが4羽だ。おや、雛がいるのだ。良かった、淡い黄色の雛だ。3羽もいるのだ。
「でぃしゃん、きいろらね」
「そうだね。普通の雛だ」
普通とは如何に。うちの雛は普通じゃないのか? ないよな。色も違うし大きさも違う。
ピヨピヨと鳴きながら、親コッコちゃんの後を付いている。ここのコッコちゃんも柵の外に出ている。そこは一緒なのだね。
コッコちゃんはお利口さんだから、柵の扉を上手に開けちゃうのだ。
此処のコッコちゃん達はお馬さんとも仲良くしているみたいだ。『うまいルルンデ』には、お馬さんが2頭いるのだ。
「こっこちゃん、おいれ」
「コケッ」
「うん、げんきらね」
「コッコ」
最近コッコちゃんとばかり話しているぞ。いいけど。
「よう、ディさん」
「オスカーさん、雛が孵ったんだね」
「おうよ、丁度一週間で孵ったんだ」
「誰が温めていたの?」
「メアリーだ。俺だと『お座り』しなかったから、メアリーの方が良いかと思ってさ」
「相性もあるみたいだけど、あんまり関係ないみたいだよ。あれは本当のテイムじゃなかったんだ」
「そうなのか?」
「そうなんだよ。本当にテイムしたらコッコちゃんが光るんだ」
「ほう、そう言えば、光らなかったな」
「でしょう? (仮)って感じかな。でもコッコちゃんは、お利口さんだから大丈夫でしょう? オスカーさんにも懐いているし」
「おう、そうなんだよ。懐いてこられると可愛いんだ」
それからディさんは、コッコちゃんにクリーンする事を話していた。俺は毎朝クリーンするけど、そんなに毎日しなくても大丈夫だと思うよ。
でも、朝ごはんをあげる時についでにしちゃうのだ。コッコちゃんだけじゃなくて、柵全体にクリーンする。その方が気持ちが良い。気持ちの問題なのだ。
「クリーンか。それは気付かなかったな」
「ロロがしているんだ。そしたら、コッコちゃんの臭いがしないよ」
「そりゃ、いいな」
そうだろう? 『うまいルルンデ』は食堂なのだから余計に良いと思うのだ。
雛も孵っていると確認した事だし、次は孤児院に行こうかな。
その時、オスカーさんが言い難そうに俺を呼び止めた。
「あー、それとロロ。ディさんから聞いたか? コッコちゃんだけどな、1羽だけだけど貴族に渡すかも知れない。どこから聞きつけたのか、フォリコッコがいるなら是非食べてみたいと言ってきたんだ」
「うん、きいたのら。しかたないのら」
「そうか」
「うん。おしゅかーしゃんとこのこっこちゃんらし」
「そうか。俺も本当は嫌なんだけどよぉ」
そうだよね。オスカーさんだって、可愛いって言っていたもん。
「だからな、大きくなったらそのまま引き渡そうかと思ってんだ。俺には絞めらんねーよ。そんな可哀想な事できねー」
「しょうらよねー」
「おう。引き渡すのだって悲しくてよぉ」
あらら、オスカーさんが涙目になってるのだ。身長も高くてガタイの良い体で、どっちかというとイカツイのに。涙脆いのだね。
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