102ーほしいアルね
いやいや、コッコちゃんの雛はまだ言葉が分からないって言ってなかったか? え? マジ? 聞こえたのだ。
俺が温めて孵した、鮮やかな濃いオレンジ色の雛3羽が俺の足元に並んでいる。
この子達はもう言葉が分かる。今、俺に話し掛けてきたのだ。雛達が俺に訴えてきたのだ。
数週間あれば大きくなるアルよッ! 直ぐに役に立つアルよッ! 任せるアルねッ!
なんて、言ってきたのだ。その言葉はどうなのだ? もしかして、アチョー! とか、言っちゃうのか? 肉体派なのだね。
「ピヨ~!」
「ピヨピヨ~!」
「ピヨヨ~!」
えぇー、俺は苦手なのだよ~。
雛達が、お名前を付けて欲しいアルと言ってきた。ちゃんとテイムしてほしいアルと。
この言葉の語尾だ。しかも肉体派なのだろう? 先が不安で仕方がないのだ。
「ぴか、どうしゅるのら?」
「わふッ」
いいんじゃない? なんて、呑気に言っている。
「ちょっとちょっと。何て言ってんの? 僕にも教えてよ」
「でぃしゃん、あのね」
と、俺はディさんに話した。この3羽の雛は、もうしっかり話しているという事と、お名前をつけてちゃんとテイムして欲しいと言っていると。
「ああ、そっか。コッコちゃん達には名前を付けてないもんね」
「しょう。お名前がほしいアルっていってるのら」
「アハハハ! 何その喋り方! そんな喋り方をしているの?」
そうなのだ、雛達が本当にそう言っているのだから仕方がない。
すると、知らん顔して眠っていたコッコちゃん達がピクッと顔をあげて、みんな俺の足元にやって来た。
大人のコッコちゃん達が俺に訴えたのだ。
「コッコ」
「コケッ」
「クククッ」
「えぇッ!?」
「なになに? もしかして、コッコちゃんみんなが名前を付けてって言ってるの?」
「しょうなのら。しょれは無理なのら」
だって、どのコッコちゃんなのか見分けが付かないのだ。みんな同じに見えるのだから。
「ククゥ」
「コケコ」
「ココッ」
それは駄目だね。まさか見分けが付かないなんてね。本末転倒だよね。と、言われちゃった。もうこの際だから……
「ばんごうなら、らめ?」
「クク~」
「コケコ」
「クックック」
あれれ? なんだか少し気不味く感じるのは気の所為かな? ジト目で見られている気がするのだ。
そんなの名前とは言わない。番号なんて有り得ない。唖然失笑だ。と、言われちゃったのだ。
ほらまた難しい事を言っている子がいるぞ。四字熟語なんて、どうして知っているのだよ。
「らって、こっこちゃんはみんなこっこちゃんなのら」
「コッコ~」
「クックック」
「コケッ」
仕方ないね~。妥協してやろう。許容範囲だ。だって。
コッコちゃんが、そう言ったその時なのだ。
コッコちゃん達の体が、ペカーッと光ったのだ。そして羽をバタつかせながら、コケーッと一鳴きした。
「アハハハ!」
それを見ていたディさん。何故かお腹を抱えて大爆笑だ。笑い上戸なのだ。って、いやいや、それどころじゃない。
「でぃしゃん、こっこちゃんがぺかーって」
「そうだね、これで本当にテイムした事になるんだろうね。アハハハ!」
ディさん、涙を溜めながら笑ってるよ。そんなに可笑しい事なのか? 俺は訳が分からないぞ。
ディさんが、説明してくれたのだ。
森で、手を翳して『お座り』と言った。あの時には光らなかった。コッコちゃんが『お座り』で大人しくなったから捕まえられただけの事だったらしい。(仮)のテイムの様なものだ。
それでも、能力に見合わないと駄目らしい。コッコちゃんが受け入れないと座らない。(仮)にもならないのだ。
本当にテイムすると、さっきみたいにコッコちゃんの体が光るそうなのだ。
なら、『うまいルルンデ』や教会でもテイム(仮)の状態なのか? だってコッコちゃんは、光っていなかったよね。それでも良いのかな?
「ギルドで登録しているし、コッコちゃんはお利口さんだから大丈夫だよ」
大丈夫ならいいのだけど。それにしても、最近コッコちゃんフェスティバルなのだ。
毎日毎日、何かとコッコちゃんに振り回されている。まあ、これだけの数がいて、その上雛まで生まれてしまったのだから仕方ない。
なのに、俺の野望が叶えられていないのだ。
そう、コッコちゃんに乗る事なのだ。未だにピカが許してくれない。どれだけ心配性なのだ。
「コッコちゃんフェスティバルかぁ。アハハハ、それはいいや」
「ボクはこっこちゃんにのりたいのら」
思わず、腕組みをしてしかめっ面で訴えた。
「ロロは、ずっと言ってるね」
「しょうなのら」
「わふ」
「わかってるのら」
ほら、ピカがすかさず「駄目だよ」と言ってくる。本当、大丈夫なのに。
「わふん」
「うん、わかったのら」
乗りたいなら僕が乗せる。だって。今はピカで納得しとくよ。心配掛けたくないから。
さて、俺が孵化させた鮮やかな濃いオレンジ色の雛3羽だ。この子達にはお名前を付けなきゃと思っている。だって、俺が孵化させたのだから。でもなぁ……んー……フォリコッコだろう……んー。
「ふぉーちゃんと、りーちゃんと、こーちゃん」
なんて、なんとなく口に出したら、3羽の雛がペカーッと光ってしまったのだ。いやいや、待って。ちょっと待って。
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