100ー大所帯
「でもね『うまいルルンデ』ではお客さんから要望があるらしくってさ。孵化させて、食べ頃になったら一羽食べてみようかって話も出ているんだ」
それは、仕方ない。『うまいルルンデ』に任せるのだ。俺は飼ってるコッコちゃんを食べたりできない。て、だけなのだ。
「どこからか、貴族が聞きつけたらしくてさぁ。フォリコッコがいるなら、食べてみたいと言って来たんだって。コッコちゃんのお肉なんて珍しいからね」
「しかたないのら」
「え、そうなの?」
「らって『うまいルルンデ』に、ちゅれて行ったこっこちゃんは、もうおしゅかーしゃん達のものなのら」
「へえ〜、ロロなら反対すると思っていたよ」
反対なんてしないのだ。でも、何度も言うけど俺は食べられない。そんなの無理なのだ。
だって、もうコッコちゃん達はお友達なのだ。それに雛から育てたら、もっと情が移ってしまうと思うのだ。
「アハハハ、そうだね。どっちにしろオスカーさん達が、孵化に成功したらの話だよ。今いるコッコちゃん達の卵は必要だからさ。看板料理になっているからね」
「うん。卵もうまうまらから」
「そうだよね〜」
ディさんと2人で軒下に座って話していたのだ。ピカも寝そべっている。その背中にはチロが寝ている。
「おや?」
ディさんが何か気になったらしい。
「ロロ、あれは何かな?」
ディさんが、指差した場所。そこには、ニコ兄とドルフ爺さんが実験している白いマッシュが見える。
ドングリの粉の上に、並べて伏せてある白い大きなマッシュ。
「りかばまっしゅ」
「え? そう呼んでるの?」
「しょうなのら。にこにいと、どるふじいがじっけんしてるのら」
「ど、どるふじい?」
そうなのだよ、ドルフ爺さんだ。俺達は、ドルフ爺と呼んでいる。
「あれ、本当はリカバリーマッシュって言うんだよ。状態異常から回復してくれるって意味で付けられたんだ。て、なんの実験なのかな?」
「りかばまっしゅを、しょだてるじっけんなのら」
「あれを育てるの?」
「しょうなのら。りかばまっしゅが生えてた木があるから、いけるかもっていってたのら」
「へぇ~、それは凄いお爺さんがいたものだね」
「しょうなのら。にこにいの、ししょうなのら」
「師匠?」
「しょうら。いろいろおしょわってるのら」
「それは凄い。ニコは良い子だからね」
「うん、しょうなのら」
この辺りのじーちゃんやばーちゃんに、1番可愛がられているのはニコ兄だ。
畑を手伝っている事もあるけど、ニコ兄は頑張り屋さんだし素直だから可愛がられるのだ。
「あらあら、ディさん。来ていたのですか?」
「やあ、マリー」
「まあまあ、お茶でも入れましょうね」
出た。マリーの必殺技だ。相変わらずなのだ。
「まりー、ボクはじゅーしゅがいい」
「はいはい。りんごジュースでいいですか?」
「うん」
よっこいしょと腰を上げる。家の中に入って行くと、ピカだけでなくコッコちゃん達も付いて来る。親鳥7羽に、雛が5羽だ。大所帯になったのだ。
「コッコ」
「ピヨ」
「ピピ!」
「わふん」
ああ、人間より多いのだ。口々に話しかけてくる。
「まりー、ぴかとこっこちゃんも欲しいって」
「はいはい、待って下さいね」
賑やかなのだ。もう、足のやり場がないぞ。下手したら雛を踏ん付けてしまいそうなのだ。
思い思いの場所で、座り込むコッコちゃん達。
ピカはいつも俺の側にいる。その周りにコッコちゃんだ。結局、俺の周りに集まっている。
「アハハハ! モコモコだね。でも、ここのコッコちゃんて臭いがないよね」
「ディさん、それはロロ坊ちゃまですよ。毎朝コッコちゃん達に、クリーンなさっているんです」
「ロロ、そうなの!?」
「うん。ばっちいのはいやらから。家のなかに入ってくるし」
「アハハハ、そうか〜!」
最近、分かったのだ。ディさんは意外にも笑い上戸なのだ。よく、笑っている。釣られて俺達も笑ってしまう。良い事なのだ。家の中が明るくなる。
「孤児院と『うまいルルンデ』にも教えてあげよう」
なんだ、みんな気付かなかったのか? 特に『うまいルルンデ』は食べ物を扱うのだから、余計に気を付けないといけないのだ。
清潔に保つ事は大事、とっても大事なのだ。ただ『クリーン』と言うだけで何もかも綺麗になる。そんなの、超便利じゃないか。どんどん使っちゃうのだ。
「もしかしてロロは、コッコちゃんだけじゃなくて柵の中全体にもクリーンしているのかな?」
「しょうなのら」
「そっか~、そうかそうか~」
何なのだ? ディさんが嬉しそうな顔をしている。ニッコニコなのだ。
「ロロ、クリーンはとても汎用性が高い魔法だから、生活魔法とも呼ばれているんだ。ヒューマンでもある程度の年齢になったらみんな使えるようになる」
ほうほう、そうなのか。そういえば、うちはみんな使えるのだ。
「だけどね、こんなに広範囲に使える人はあまりいないんだ。だから、人前で広範囲には使わないようにね」
そう言って、俺にウインクをする。またウインクだ。バチコーンと。長い睫毛で風圧が起こりそうなのだ。
「わ、わかったのら」
「うん、お利口だね」
そうだったのか。知らなかったのだ。俺は普通に柵いっぱいをクリーンしていたのだ。だって、便利なのだから。
それよりも、俺はもう一つ考えている事があるのだ。
お読みいただき有難うございます!
100話です!まだ2章なのですが…^^;
夜に、活動報告を更新予定です。多分。
公開できる筈…
応援して下さる方は、是非とも評価やブクマをお願いします!
頑張る力になります!花粉症には負けないぞー!^^;
宜しくお願いします。




