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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!【同シリーズ4/10コミック発売!】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第20章 子どもが増える理由

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364.卵を割るといつも何かいる

 眠り込んだリリスをじっと見つめたイヴは、ぷすっと指を突き刺した。鼻に刺さった指で目の覚めたリリスが、苦笑いして起き上がる。


「ママ」


「おはよう、イヴ。指を刺しちゃダメよ」


「あい!」


 元気に返事をするイヴは、笑顔で隣のスイの鼻に指を突っ込む。さっきのいい子のお返事は何だったのか。引き攣る笑顔で、イヴの手を取ったリリスが引き抜いた。指先を浄化して、鼻を押さえて涙ぐむスイに謝る。


「ごめんなさい、イヴったら気に入ったみたいで」


 鼻に指を入れる行為が、なぜかお気に召したお姫様である。自分の鼻にも突っ込もうとして、リリスに止められた。癖になると困る。いけないと言い聞かされて、イヴは渋々諦めた。


 今まで知らなかった感覚に惹かれるが、叱られてまで入れたいかと問われたらそうでもない。イヴはひとまず鼻穴指入れ攻撃を封印した。


 そこへ朝食のパンを受け取ったルシファーが戻ってきた。大きな卵も抱えている。


「卵を拾ったから焼いて食べよう」


 イベントで使う大きな鉄板を取り出し、魔法陣で高さを固定する。魔法で火を燃やし、熱した鉄板に割った卵を流した。風で割った殻を捨てるルシファーは、後ろから聞こえた鳴き声に青褪める。


「なんだ?」


「パッパ、何かいるぅ」


 指さすイヴは、リリスの腕に抱かれて大きく両足を振った。母を蹴飛ばした彼女は、慌てて動きを止める。しかし両手は鉄板の上で鳴く生き物に伸ばされていた。


「これは大変だ」


 プータナーがひょいっと卵の中から小さな生き物を回収する。白身がべたりと付いたそれは、ドラゴンに見えた。鱗があり背中に鬣に似た棘がある。背中に小さな羽が付いていた。


「る、ルキフェルっ!」


 驚きすぎて、召喚してしまう。魔力を込めた呼び声に反応した水色の髪の青年は、転移で現れて首を傾げた。


「何?」


「これ、竜族か?」


「ちょっと見せて」


 卵の白身をべったり纏う小型のドラゴンもどきを両手で掴み、じっくり眺める。さっと尻尾を掴んで裏返し、観察してから思い出したように浄化を施した。プータナーは手を洗ってよく拭いている。


「これ、ドラゴンだけど……どこの子だろう」


 種類がよく分からない。熱い鉄板で焼ける卵から生まれたのか。火竜のように見えるが、色は青くて水竜を思わせた。だが分類はともかく、保護対象なのは間違いない。


 まだ両親に庇護される幼い竜だった。竜族の頂点に立つ瑠璃竜王ルキフェルが「ドラゴン」と断言したことで、種族だけは確定した。両親を探すため、ルキフェルがこの子竜を預かる。


「ルシファーったら、また拾ったの? アシュタに叱られるんだから」


 腰に手を当てて叱る口調のリリスだが、彼女自身もルシファーに城門前で拾われた一人である。偉そうに言える立場ではなかった。実際、リリスを拾ったことで「元いた場所に置いて来なさい」と叱られた記憶も新しいルシファーは苦笑いする。


「卵から生まれたのか? 悪いことをしちゃったな」


 中身が生きていると思わなかった。そう呟いたルシファーだが、鉄板の上には黄身の割れた目玉焼きが完成している。下で燃やした火を止めて、ルシファーは首を傾げた。


 卵の白身も黄身もある。美味しそうに焼けているが、あの子竜は卵のどの部分だったのか。


「黄身と白身以外の……卵膜?」


 唸るルシファーへ、イポスが指摘した。


「あの子竜は卵の中身ではなく、後から飛び込んだんだと思います」


 イポスは見ていた。ルシファーが卵を割った時、白身と黄身以外に固形物はいなかったのだ。そう言われて、ルシファーはほっとした。


「よかったぁ、見落として炙ったかと思った」


 口出し出来なかったグシオンは、なるほどと納得する。魔王が大公に叱られた話をよく聞くが、この確認不足が原因らしい。懲りないところがルシファーたる所以だった。

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