ディス・イズ・ザ・修羅場
まだ俺達が小学校低学年の頃、家族で行った動物園で、閉園時間になっても、触れ合いコーナーのうさぎともっと一緒にいたいと泣くよしのに、俺がウサギのぬいぐるみを買ってやるから泣くなと宥めた時は両親に驚かれた。
『おにーしゃまっ! よしのはこのうさぎたん、いっしょう、たいせつにしますっっ!』
『お、おうっ、喜んでくれてよかったよ。』
正直、お土産コーナーでよしのが気に入ったぬいぐるみは思ったより高くて、もらったお年玉をほぼ使い切ってしまってちょっとショックだったが、ぬいぐるみを抱えたよしのの嬉しそうな笑顔を見たら、すぐにそんな気持ちはどこかへ行ってしまった。
それから、この可愛い妹の幸せを守る為ならどんな事でもしてやると心に誓った。
だが……。
『今のお兄様を想うちょっと悪い私よりも、前の方がいいと言うならっ……。また前のようにお兄様への想いを押し殺して、いい子の私に戻りますっ。ふぐっ…。』
よしののこれからの幸せを思えば、きちんと拒絶して言い聞かせるべきなのに、どうして、抱き締めてしまったんだろう……。
どうして、(ましろの姿の)よしのの温もりと柔らかな感触を愛おしいと思ってしまうんだろう……。
今まで自分をコントロール出来ない時なんてなかったのに……。
✽
ピンポーン!ピンポーン!
「「ハッ!」」
突然のチャイムの音に、広い天蓋付きベッドの上で、俺もよしのも同時に飛び起きた。
「あっ…お兄様っ!//私、寝ちゃってたんですね??」
「あっ…よしのっ!//す、すまん。俺も一緒に寝てしまったようだ。」
気付けば窓の外は薄暗くなっている。
あれから、数時間俺達は眠りこけてしまったらしい。
ピンポーン!
ピンポーン!
「ど、どなたでしょう? 早く出なくっちゃ……わっ?」
「よしのっ。気を付けっ……」
よしのは、急いで立ち上がろうとし、体に巻いていた毛布の端を踏みつけ、落としてしまい……。
スルッ!ファサッ……。
「っ……!!!?////」
「キャアアアッ!!!?////」
よしのは、寝ていた間に下着が上に捲れてしまい、小さな胸が露わになってしまっていた事に気付き、悲鳴を上げた。
「ああ〜ん!だから、下着はピッタリしたサイズじゃなきゃダメなんですよ〜!!お、お兄様に見られちゃいましたぁっ……。自分の体じゃないのに、メチャメチャ恥ずかしいですぅっっ!!///」
すぐに下着を元の位置に戻したものの、恥ずかしがって、その場に体を隠すように座り込むよしのに、俺は何と声をかけたらいいか分からなかった。
「す、すまんっ……。///いや、でも、ピンク色のはチラッとしか見てないからっ…!」
「ピ……!///全部しっかり見られてるぅっ……!」
「あ、いや、そのっ……!」
ピンポーン!
ピンポーン!
「「……!!」」
俺達が慌てふためく中、再びチャイムの音が鳴り響く。
「お、俺出るよ。よしのは服着てろ?」
「あ、は、はいっ…。」
「はい、虎田でっ……。……!!」
取り敢えず、インターホンへと手を伸ばした俺は、その画面を見て愕然とする。
『よ、義隆先輩っ……??』
そこには、悲壮な表情を浮かべた(よしのの姿の)ましろの姿があった……!
「ま、ましろっ……! ||||||||」
「えっ! ましろさんっ!? ||||||||」
俺と急いで着替えているよしのは青褪めた顔を見合わせた。
✽
俺とよしのは、取り敢えず、思わぬ訪問者を出迎え、冷静に説明しようとした。
「ま、ましろっ。これは、違うんだっ…!よしのとは、ただ、一緒に寝ていただけでっっ……!」
「ま、ましろさんっ! ごめんなさい!今度私の姿でお兄様の前で全裸になっていいですからぁっ!」
「一緒に寝ていただけ??|||||||| 全裸になっていい??||||||||
この変態兄妹がぁっ…!っていうか、私の体で何をしたぁーーっっ!!?」
慌てて服を着た為、髪はボサボサ、シャツはクシャクシャの状態で、やはり動揺を隠せなかった俺達の発言は、ましろにとって逆効果でしかなく、彼女は涙を吹き飛ばしながら悲痛な叫びを上げたのだった……。




