今日から元カレの妹始めます♡ 《虎田ましろ視点》
入れ替わりなんていう非現実的な現象に巻き込まれた私は、今日から、NTRビデオレターの件で私を断罪した元カレの妹として過ごさなければならなくなった。
何なの?この異世界転生、悪役令嬢婚約破棄ものでありそうなとんでも状況。
元カレ、義隆先輩とそのママとの夕食後、その妹、鷹宮よしのの部屋(義隆先輩の隣の部屋)に初めて戻ると、水色と白の色調で統一された、シンプルかつ女の子らしい整頓された小さな部屋をキョロキョロ見回した。
「ふんっ。いかにもあの女の部屋らしいわねっ。」
鼻を鳴らすと、一人になってホッとした私は、すぐに水色のうさぎのぬいぐるみの置かれた狭いベッドの上に倒れ込んだ。
ドサッ
「つ、疲れたぁっ……。」
取り敢えず、義隆先輩の自宅の前でしてしまった失言は、反抗期という事にして誤魔化したけれど、お陰で、家事をしなければならなくなりそうだし、下着メーカーに勤めているという義隆くんのママは、やたら体のサイズを測るよう勧めてくるし……。
ただでさえ、これから慣れない家で過ごしていかなきゃならないのに、前途多難だった。
そう言えば、ド天然妹は、今私の家で私の家族と過ごしているんだっけ?
自信満々の様子だったけど、却って不安だわ。嫌だけど、連絡してみるか……。
そう思い、スマホをカバンから取り出し、私の番号にかけてみたが、繋がらない。
仕方なく、メールを入れた。
『ましろよ。
こっちは義隆先輩の家に来て、今のところあんたののママに怪しまれていないけど、『反抗期』だっていう設定にされるし、家事をやらされる事になるし、やたら体のサイズを測るよう勧められたり、大変だったわ。
そっちはどう?うまくやってるんでしょうね?』
「送信っと!」
『……なら、よしのも、…好きだから、……かも……ないな。』
……!
メールを打ち終わった途端、隣の義隆先輩の部屋から途切れ途切れに声が聞こえて来た。
ベッドの置かれた側の壁に耳を当てると……。
『うわっ。よしのもか……!どちら……ても……事この上ないよな……!ハハッ……!』
全部は聞き取れないけど、甘く優しい口調で『よしの』という単語がよく聞こえてくる事から、どうやら、義隆先輩は、私と入れ替わった妹と電話をしているらしいと分かった。
「あいつぅっ……!だから、電話に出なかったのね?人が大変な思いしてるってのに、イチャイチャ電話しやがって、変態兄妹めぇっ……!」
私は何だか無性に腹が立ってしょうがなくて、固く拳を握り締めた。
妹の鷹宮よしのは、元々兄である義隆先輩に恋愛感情を抱いていた。
そして、そんな妹を大事にしていた義隆先輩は入れ替わってから彼女にアプローチにグラグラ揺れていた。いや、揺れているどころか、彼女を見る目はまるで……!
『今や私はましろさんの体。お兄様とは肉体的には兄妹ではありません。
→環境を新たにアプローチすれば、ワンチャンLOVEに発展する可能性があるかもしれません!』
鷹宮よしのの言葉を思い出し、私は苦い顔になった。
「このままじゃ、あの女の狙い通りじゃない!」
寝取という奴に騙されて、あんなNTRビデオレターを送ったのは確かに私の失策だったかもしれないけど、だからって、昨日まで彼女だった私を速攻で捨てて、私の体に入れ替わった妹とくっつくとかあり得ない!
このまま体が入れ替わったままだとしたら、私は目の前で私の体の妹と元カレが結ばれていくのを、妹として見守らなきゃいけない地獄が待ってる。
そんなの、許せるわけないじゃない!!
このままにしておくわけにはいかないわ。なんとか、あの女の弱みを握らなきゃっ。
そして、私はすっくと立ち上がると、机の奥のブックスタンドに立てかけてある、彼女の日記帳を手に取った。
腹黒参謀の家で、あの女と打ち合わせをした時は、机の上に置いてある日記帳はお互い見ないし、触らないと取り決めをしていたけど……。
「バッカじゃないの?そんなの、守るわけないでしょうが!」
私はニヤリと笑って、白い革表紙のその冊子を開いたのだった……。




