元カノとの新たな関係
よしのから、女子同士の話し合いが終わったとメールを貰って、黒崎と共にリビングへ戻ると……。
果たして、どんな話が行なわれたのか分からないが、気まずそうな表情のましろと、にこにこ笑顔のよしのが、帰り支度をして待っていた。
「私、この姿で自分の家に帰れないわ。しばらく義隆先輩とド天然妹の家にご厄介になるわ」
「私も同じくです。ましろさんのお家にお世話になる事にします」
二人の決断に黒崎と俺は納得して頷いた。
「まぁ、妥当な判断ですね……」
「ああ。親には説明のしようがないもんな。ウチの母のみなら、ワンチャン分かってくれるかもしれないが。
それなら、俺はよしのとして家で生活するましろのサポートをするとして…、よしのは一人で大丈夫か?」
「はい。大丈夫です。ましろさんから聞いた感じですと、ご両親はとてもお優しい方だそうですので、うまくやっていけると思います!」
俺の問いに、よしのは明るい笑顔で答えてくれ、幾分かは安心できた。
「何かあったら、連絡してくれよ」
「はい。何もなくても連絡します。ふふっ。離れた場所からお兄様と連絡を取るするなんて、まるで恋人のようで楽しみです♡」
「よ、よしのっ。こんな時に、何言ってんだよっ」
上目遣いでそんな事を言ってくるよしのに焦っていると、ましろがこちらをジロリと睨んで来た。
「私の体を使ってイチャイチャしないでったら! そうと決まったなら、早く行きましょう? 他人の家でも今は休める場所でゆっくりしたいわ。今日はとても疲れちゃった!」
「ああ。同感だな。誰かさんのせいで俺達も今日はとっても疲れたよ。」
こんな状況でも自分ファーストな元カノを睨み返してやると、黒崎は苦笑いで宥めて来た。
「まぁまぁ。これから、会長と鷹宮さん=仲の良い兄妹を演じなければならないんですから、喧嘩は控えめに。」
その後、黒崎に何度も今日の礼を言い、彼の家を後にした。
「お兄様、ましろさん、よろしくお願いしますね?
私も精一杯ましろさんを演じてみせますから。」
「ああ。こちらは、任せておけ。よしの、無理はするなよ?」
「本当に頼むわよ?」
ガッツポーズを取るよしのに俺とましろは声をかけ、駅で別れた。
ツインテールを颯爽と靡かせて歩き出す妹を見送りながら、か弱いと思っていた彼女の意外な強さを知り、そして彼女とこれから別れて生活する事に二重の寂しさを感じていた。
「「……。」」
そして……。ましろと俺は微妙な顔を付き合わせて、歩き出した。
昨日までは彼女と彼氏。
↓
さっきまでは、NTRビデオレター(偽)を送り付けて来た元カノとその罪と虚乳を暴いた元彼氏。
↓
そして今からは、仲の良い妹と兄。
信頼感最悪の者同士で、ハードな状況を乗り越えなくてはならない。
「おい、ましろ。家に入ったら、『よしの』と呼ぶからな? 小憎たらしい物言いは控えろよ?」
「分かってるわよ! そっちこそ、人の事、ぞんざいに扱うのはやめてよね。『お兄様』!」
俺達は睨み合い、ふいっと顔を逸らした。
前途多難であった……。
✽
そして、20分後ーー。
50坪程の広さに、モダンなデザインの庭付き一戸建て。
自宅に到着した俺とましろ(体はよしの)だったが……。
「ここが義隆先輩の家?随分小さいわね?」
これから自分が世話になる家の前で、腰に手を当ててそんな失礼な事を宣うましろに、俺は顔を顰めた。
「ここ界隈じゃ、結構大きめの家だとすら思うが……。お前、どんなところで暮らしてるんだ?」
「ウチはこの2倍、いや3倍はあるわ。」
「そんなに大きいのか? ああ、そういえば、親が社長だって言ってたな?」
付き合い始めた頃、聞いていた事を思い出し、色々と納得した。お嬢様として何不自由なく暮らしていたのだろうが、ここではもちろん同じ生活を送る事は出来ない。
「うちは共働きだから、二人共帰りが遅い。平日は自分達で食事を作ったり、掃除、洗濯をしなければいけないから、お前もちゃんと手伝えよ?」
俺が言い聞かせるように言ってやると、ましろは目を大きく見開いた。
「え。義隆先輩の家、共働きとは聞いていたけど、ママそんなに帰りが遅いのっ? 家事を自分でやるなんて嫌よっ!そんなの、学生の仕事じゃないわっっ!児童虐待で訴えてやるっっ!!」
「お前、大げさな……!それぞれの家の事情があるんだから、少しは歩み寄れよっ。今までよしのは、きちんとこなしてくれて…」
ワガママお嬢様全開で、庭の中心で家事の断固拒否を叫ぶましろに、呆れて文句を言っていると……。
ドサッ。
「……!! よしの……! 今までそんな風に思ってたの? |||||||| 」
「「え」」
後ろから声が響き、俺達が振り向くと、カジュアルなスーツ姿のウチの母親=鷹宮義江(46)が家の前の道路に立ち、買い物袋を取り落としていた。
「か、母さん……。今日に限ってどうして、帰りが早いんだ……。|||||||| 」
「え。(この人、義隆くんのママ?!)」
俺の呟きを受けて、口元を押さえたましろは、三つ編みのあしらわれた薄青の髪を揺らして、急に猫撫で声を出して来た。
「えーと、お兄様ぁっ。ど、どうしましょう?」
「知らねーよっ!!」
今更、猫を被っても遅い妹を俺はヤケ気味に怒鳴り付けたのだった。
✽あとがき✽
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