入れ替わりの原因と今後の対策
「まずは、二人が入れ替わった原因を推測して、それについて今後の対策を練っていきましょう。
階段から落ちてぶつかったショックで入れ替わったという事ですが、創作の世界では、入れ替わりの背景には、思春◯症候群、代々神社の家系の娘に受け継がれる力、お地蔵さん、魔女の力や超能力、不思議な道具など、様々な不思議な力が働いているというケースが多いですよね。
鷹宮さん、虎田さん、心当たりのあるものはありますか?」
黒崎に言われ、ましろとよしのは首を捻った。
「そう言われても…、神社の娘でもないし、魔法や超能力なんて使えるわけないし…。」
「神様やお地蔵さんに入れ替わりをお願いしてもいませんし、不思議な道具も持っていませんね…。」
入れ替わるという異常事態にはあるが、特に不思議な力に関わっているわけではない二人にはピンとこない様子だったが、黒崎も、特にそういう方向の回答を期待していなかったらしく、頷いていた。
「まぁ、そうですよね…。では、一番あり得そうなのは、思春◯症候群的な方向で、鷹宮さんと虎田さんが無意識にお互いになりたいという願望を持っていたところに、接触により入れ替わってしまったという線ですかね…。」
黒崎は顎に指をかけ、考察していた。
「とすると、入れ替わりの解消にはお互いの願望を満たし、また元の自分に戻りたいと願う事が必要かと思われるのですが、その願望についてはそれぞれ自覚がありますか?」
「何言ってるのよ。私はこのド天然妹になんてなりたいなんて思っていない!今すぐにでも、元の自分に戻りたいと思ってるのに…!」
黒崎の言葉をブンブン首を振って否定するましろだったが、空と海から疑問の声が上がった。
「え。でも、虎田さん、訊問会ではよしのちゃんと会長の仲の良さに嫉妬してたよね?」
「してたしてた。私より妹を庇うし、優先する!って言ってた。」
「そ、それは、妹より彼女の方を優先するべきじゃないっ?って、当然の権利を主張しただけで、嫉妬ってわけじゃっ…。」
怯みつつもそう主張しようとするましろだったが…。
「はい。階段から落ちる直前にも、虎田さん、『家でも、生徒会でも、義隆先輩といつも一緒で…、私だってあんたが羨ましかったし、妬ましかった!』って言ってました。」
「…!そうなのか?」
人差し指を突き付けてキッパリ言い放つよしのに、俺が驚いて聞くと、ましろは真っ赤になって否定した。
「は、はあ?////そそ、そんな事、いい、言ってないしっ!
さっき、打ち合わせ通りの茶番とはいえ、義隆くんが私の姿をした妹を庇って見詰め合った時、『ホラ、やっぱり妹がやらかしたら庇うんじゃない!私の体を使って兄妹でラブシーンしてんじゃねーよ!』とか苛ついてなんかいないからっ!」
「苛ついてたのか…」
「「苛ついてたんですね…」」
「「鉄板のツンデレ…」」
拳を振るうましろの熱弁は却ってましろがよしのに嫉妬をしていたという事実をこの場の全員に印象付けてしまった。
「ち、違う〜〜!別にツンデレとかじゃないんだから〜〜!!勘違いしないでよねっっ!!」
「「「「……。(そのセリフ自体、ツンデレテンプレートなんだ(です)けど…)」」」」
涙目になっているましろを俺、黒崎、渥美兄妹は生温かい目で見守り、よしのは丸無視して話を進めた。
「ましろさんが、私に嫉妬していたように、私もお兄様の彼女のましろさんを羨ましいと思っていました。
私もお兄様のことが男性として大好きでしたからっ。」
「よ、よしのっ?////」
「「「「……!」」」」
皆の前でよしのに熱っぽい瞳で再び告白され、俺は動揺した。
入れ替わった直後にも男性として好きだと言っていたが、寝ぼけていたせいか何かだと思っていた。
しかし、今のよしのは意志の籠もった強い瞳で俺を見据え、誤魔化しようもないぐらいハッキリ告げて来た。
「お兄様。あなたが好きですっ!今まで気持ちを押し殺して来ましたけど、あのNTRビデオレターで傷つくお兄様の姿を見てから、気持ちが抑えられられなくなってしまいました!」
「よしの、何をっ…!お、俺達は、兄妹でっ…!」
ツインテールを揺らしてうるうるした瞳で迫って来るのは、ましろの姿をしているよしのだと分かっているけれど、よしのでもましろでもない全く別の少女のような感覚に陥り、俺はタジタジになった。
「今は、《《兄妹ではありません》》。ましろさんになっています。」
「……!」
「さっき、皆の前で縒りを戻したフリをしようと提案したのは、NTRビデオレターの件をうまく収める為もありましたが、例え、演技でもお兄様の彼女として振る舞いたかったからです。
体が戻るまでで構いません。《《私をお兄様の期間限定の彼女にしてくださいっ》》!!」
「なっ! いくら体が入れ替わっていようと、そんな事、倫理的に許される筈がっ」
「駄目ですかっ? ぐすっ。私の事、気持ち悪いですかっ?」
「いや、そ、そうじゃなくて…」
さっきから、どうしたというんだろう。バクバクと心臓がうるさい。
俺の袖をキュッと握って、涙に濡れた瞳で縋るように見てくるよしのが《《女の子》》に見えて、どう扱ったらいいのか途方にくれていると…。
「や、やめてーーーっっ!! 私の体でラブシーンしないでってばっ?離れてぇっ!!」
ドンッ!
「きゃんっ。」
「ハッ」
ましろがよしのをどついて俺達の間に割って入り大声で喚いたので、よしのは転び、俺は我に返った。
「いったぁい。ましろさんにだって、私が羨ましいのなら、お兄様と妹としてイチャイチャすればいいじゃないですか?今の状況、ましろさんにとっても悪い状況じゃないと思いますけど…」
よしのがお尻を擦りながら主張すると、ましろは、カーッと赤くなった。
「よ、義隆先輩と、妹としてイチャイチャ…! ////べ、別にそんなの、望んでなんかっ…!」
「はいはい。お三人さん。そこまで! 三角関係の決着を着けるのはまた今度にして、今は今後の対策について話し合いましょうか。」
「「「!////」」」
パンパンと手を打ち鳴らしてた黒崎に声をかけられ、他の生徒会メンバーの前ですごい場面を繰り広げてしまった事に俺達は赤面した。
「はうっ。昼ドラも真っ青な入れ替わりの修羅場に止めるのも忘れてつい見入ってしまった…!」
「ほうっ。体は元カノ心は妹VS体は妹心は元カノ。会長これは翻弄されちゃうよね…!」
空と海は、詰めていた息を吐き出し、それぞれ呑気な感想を述べていた。
「今までの話を纏めますと、鷹宮さんは、お兄さんの彼女である虎田さんを羨ましいと思っていて、虎田さんは認めていませんが、その言動から元彼の妹を羨ましいと思っていた可能性が高いという事ですよね。
鷹宮さんは会長の彼女になりたい。虎田さんは会長の妹になりたい。お互いにそう思っていたと仮定したならば、会長がその願望を充分に満たしてあげた時に、入れ替わりも解消されるのではないでしょうか?」
「「……!!」」
「「なるほど……!」」
黒崎の論理展開に、よしのとましろは複雑そうな顔で、お互いの顔を見合わせ、空と海は感心したように頷いていた。
黒崎の言う通りにすれば入れ替わりが解消されるという保証はないが、今は、可能性があると思われる事は全部試してみなくてはならない。
よしの(実の妹)とましろ(やらかした元カノ)の願望を満たしてあげるなんて、倫理や心情に加えて、それぞれ体が入れ替わっている状態で限度があるだろうが…。
「黒崎、分かったよ。どこまで出来るか分からないが、かりそめの彼氏と兄として二人の為に俺が努力できる事はしてみようと思う。」
「お兄様……!////」
「義隆先輩……!////」
俺は決心を固めると大きく頷き、よしのとましろをチラリと見遣ると二人は不安と期待の入り混じった瞳でこちらを見上げていた。
✽あとがき✽
読んで下さりありがとうございます!
以下の作品を入れ替わりの参考にさせて頂きました。
「君の名は」
「山田くんと七人の魔女」
「俺があいつであいつが俺で」
「このすばらしい世界に祝福を」
「青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない」
「ドラゴンボール」
入れ替わりを題材にしたものでオススメの作品がありましたら、ぜひお知らせ下さいね。




