入れ替わり 元カノ→妹《虎田ましろ視点》
裕福で優しい両親に蝶よ花よと育てられて、小さい頃から、周りの皆に容姿端麗、才色兼備、非の打ち所のないお嬢さんって持て囃されていた私=虎田ましろ(15)
難関私立高校にもトップクラスの成績で難なく受かり、入学後は、この私の可愛らしい姿に懸想した名前も顔も知らないような男子共が蛆虫のように湧いて、告白して来たけれど、片っ端から振ってやった。
だって、どいつもこいつも自分の欲望が透けて見える猿ばっかり。私に釣り合うような素敵な男子なんて皆無だったから。
だから、その日も差出人不明のラブレターで体育館裏に呼び出され、ベンチに座って人待ち風にしていたその男に開口一番に告げてやった。
「あなたね?私を呼出したの。言っておくけど、私は誰とも付き合うつもりはないから」
「え」
いきなり振られて驚いた表情になったその男の顔は流石に私も知っていた。
この学校の生徒会長で、成績優秀(テストはいつも学年一位)運動万能、長身でイケメンと女子達に人気の鷹宮義隆だった。
確かに他の男子よりは容姿が整っているし、女子達が騒ぐのも分からないではないけれど、私の好みには該当しなかった。
「女子達に人気がある生徒会長だから、断られないと思った? 甘いわね? 私に言い寄るなら、ハリウッドで名を上げるか、油田の一つもプレゼントする覚悟で行かないと…」
「い、いや、あのな…。確かに俺は、生徒会長の鷹宮だが、君に告白なんて…」
役不足だと言っているのに、更に反論しようとするその男に私はイラッとして強い言葉が出てしまった。
「調子に乗らないで。このナルシスト男…!」
しかし、その男は私の言葉に顔を顰めると、私の後ろを指差し叫んだ。
「だから、俺じゃないって…!! 告白して来たのは、そこにいる人じゃないのか?」
「え」
後ろを振り返ると、ちょっとゴツい男子(※ましろは顔が思い出せないのですが、この時の男子は寝取拓郎です)が涙目になっていた。
「バ、バカ野郎! 誰がお前みたいなキツイ女に告白なんてするかよ? か、からかってやっただけなんだからなっ。」
「はあ?」
その男子は、私に背を向けると、スタコラと逃げて行った。
「「……」」
後には気まずい沈黙が流れ、後ろをそろりと振り返ると、私がラブレターの差出人だと思い込んでいた男子=鷹宮義隆が声を殺して笑っていた。
「フッ。ククッ。俺、告白した事ないけど、フラレるの初めてだ…!ハハッ。面白い奴だな。お前」
「…!!///」
好みじゃないにも関わらず、その時の彼の笑顔が何だかすごく胸に刻みついてしまって、その後も彼の事を目で追ってしまい、寝ても覚めても彼の事ばかり考えている自分に気付いて……。
その一週間後ーー。
「私、あんたと、つ、付き合ってあげても、いいわよ?」
「???」
先週と同じように、体育館裏のベンチに座っていた彼を見つけると、何故か駆け寄ってそんな事を口走ってしまい、目を丸くされたのだった…。
私の決死の告白は、何故か彼に受け入れられ、喜んだのも束の間、そのすぐ後、彼には大事な妹がいて、その思い出のベンチで待っていたのは彼女だった事を知ったのだ。
生徒会の仕事やら、妹の事やらで優先され、彼女である私との時間を作ってくれない義隆先輩に私は不満を募らせ…。
烏合の衆の男子の一人に、唆されるまま、スタジオを借りて、AV動画に合わせてアテレコを録音し、偽のNTRビデオレターを作り…。
それから…。それから、どうしたんだっけ?
とても大きな事があったような気がするんだけど思い出せない…。
そして、何故だか頭がずきずき痛む。
額を押さえながら、私は記憶を探った。
今をときめくセクシー女優のAmuちゃんはGカップーー。
卒業した天野麻美先輩の今彼は持久力無限大ーー。
燃えるゴミの日は水曜日ーー。
違う。そうじゃない…!
どうでもいい断片的な情報だけ浮かんでくる…。
思い出さなきゃいけないのは、もっと重要で…、もっと胸を抉るような…。
「…のっ!よしのっ!大丈夫かっ!?」
「うう…ん…。あっ…??」
突然体が抱き起こされ、聞き慣れた彼の声に私の意識は現実に引き戻された。
「よしの…!」
…!!
その心配そうな呼びかけに、NTRビデオレターを義隆先輩に渡した後の記憶が一気に蘇る。
義隆先輩に、瞬速で別れを告げられ、生徒会、風紀委員会の訊問会にかけられた事。
NTRビデオレターが偽物だと証明され、胸のサイズまで晒された(※自分でバラしています)屈辱。
そして、義隆先輩にゴミだと罵られ先生の元へ連行されそうになったところを逃げ出して、自殺するように見せかけた事。
そして、ド天然妹に見つかり、兄への想いを告白され、Aカップ以下かもしれないとか再度バカにされ、激昂した私は奴に掴みかかり、揉み合った末に奴と共に階段を落下して行った事。その痛みと衝撃。
そして、今ーー。
目の前で私を抱き起こしながら、妹の名を呼ぶ義隆先輩に燃えるような怒りが込み上げて来た。
「義隆先輩…!! こんな時まで『よしの、よしの』って…!! 触らないでよ!! 大嫌いっ!!」
ドンッ!
「わっ! よ、よしの…。い、一体、どうしたんだ…!?」
義隆先輩を強い力で突き飛ばすと、 彼は強いショックを受けたような表情になった。
何よ!今更そんな傷付いたような表情をしても、私にやった仕打ちを思えば当たり前……。ん?今、義隆先輩、私によしのって呼びかけた??
「う、ううん…」
「ましろ…!」
…!!! ||||||||
近くに倒れていたツインテールの少女が呻き、義隆先輩は彼女にましろと呼びかけた。
う、嘘でしょっ…。
私は、目の前の光景を信じられない思いで見詰めていた。
どう見ても私としか思えないその娘は、目を覚まし、ゆっくりと起き上がって、義隆先輩を見ると、パチパチと瞬きをして頬を紅潮させた。
「ハッ。お兄様…!! わ、私、言いたい事があったんです。
私、お兄様の事が大好きですっ!! ずっとずっと、男性として好きでしたぁっ!!」
「は、はぁっ?! ま、ましろっ…!?」
〜〜〜!??
目の前で、乙女の顔で義隆先輩ににじり寄り、いきなり告白する私に頭はキャパオーバーになった。
「ひっ!!ど、どうして、私がもう一人いるの!?」
思わず叫んだ私を見て、もう一人の私も目を見開き悲鳴を上げた。
「きゃっ!!ど、どうして私がもう一人いるんでしょうか!?」
私達は人差し指をお互いに向け、まじまじと相手の姿を見て固まっていた。
「????」
義隆先輩は、カオスな私達の状況を見て、ただ目をパチクリするばかり。
私達の中身がどうやら、入れ替わってしまったようだと結論付けたのは、その5分後の事だった…。




