元カノと妹の衝突→その結果
今でこそ、友達も出来て生徒会でも書記を務め、周りともうまくやっているよしのだが、入学当初は、成績や運動などで思うような結果が出ず、兄である俺と比べられて、人に心ない事を言われる事もあったらしい。
そんな時よしのは北階段の地下前や裏庭でよく泣いていた。
落ち込んだ人間が、どこにいたいか、よく分かっているよしのは、最初からましろの居場所に心当たりがあったのかもしれない。
そして、俺が北階段の方へ向かうとーー。
「まぁ、それで関係が、元通りなれるかは難しいかもしれないですけど…。
私がましろさんの立場だったら、そうします」
「…!」
階下からよしのが誰かに話しかけているような声が響いて来て、俺は急いで階段を下りて行った。
「妹よりは、やらかしてしまった元カノの方がまだ可能性はあると思いますしね…」
「鷹宮さん…」
「…!!(よしの…!ましろ…!)」
予想通り階段の踊り場にいるましろにその少し上の位置にいるよしのが話をしていた。
意外にも険悪な雰囲気にはなっていないようで、ホッとしたのも束の間…。
「それと、もう一つだけ言いたい事があります…。」
「な、何よ…。」
今までどういう話し合いをしていたのかは分からないが、ましろがツンとしながらも、話を聞く体勢になっているのに驚いていると、次なるよしのの発言に更に度肝を抜かれる事になった。
「さっき、ましろさんは、Aカップと言ていましたが、Aは一番下のサイズではない事をご存知ですか?」
「?!」
「?!!」
よ、よしの…!?お前は一体何をっ??
「ご自分に合っているものを身に着けないと、余計に胸が育たない事もありますから、一度きちんと測って、場合によっては、AAや、AAAなどのサイズのもの身に着けられた方がよい場合も…」
ああ…! 真剣な表情での、よしののその発言が、純度100%の優しさから出来ている事を俺は知っている。
うちの母親は下着メーカーに勤めており、常日頃から、体にピッタリした下着を身に着けるよう言い聞かされているよしのにとって、胸のサイズを気にするましろがきちんと体のサイズにあった下着を身に着けているか、気になってしまったんだよな。
だが、この状況、この立場で、ましろにとっては残酷な程に大きな自身の胸に手を当てて、そんな事を主張されたらっ…。
「きゃっ!」
「お前っ!やっぱ、バカにしてんだけだろっ。殺してやるぁっっ!!」
言い終わらない内に、ましろは般若の表情で、階段半ばに立っていたよしのに掴みかかり…。
「「きゃぁぁっ!」」
バランスを崩し、二人は共に階段からもつれ合うように共に落ちて行く瞬間ーー。
「よしのっ…!!ましろっ…!!」
必死の思いで伸ばした手は舞い上がった彼女達の髪にも僅か届かず…。
ガタタタッ!ドサドサッ!!ゴン!!
けたたましい音を立てて、二人は階段を転げ落ちて行った…!
「よしのーーっ!!ましろーーっ!!」
階段の踊り場に倒れている二人に駆け寄り、まず、俺はよしのを抱き起こし呼びかけた。
「よしのっ!よしのっ!大丈夫かっ!?」
「うう…ん…。あっ…??」
「よしの…!」
その呼びかけに瞼を震わせ、青い瞳が俺の姿を捉えたとき、意識が戻った事に安心したが、次の瞬間、彼女は鼻に皺を寄せ、俺に対して強い嫌悪の表情を浮かべた。
「義隆先輩義隆先輩…!! こんな時まで『よしの、よしの』って…!! 触らないでよ!! 大嫌いっ!!」
ドンッ!
「わっ! よ、よしの…。い、一体、どうしたんだ…!?」
穏やかなよしのが今まで見せたこともないような激しい怒りを露わにし、突き飛ばして来た事に俺が強いショックを受けていると…。
「う、ううん…」
「ましろ…!」
傍らにいたましろも、目を覚まし、ゆっくりと起き上がって、俺を見ると、パチパチと瞬きをして頬を紅潮させた。
「ハッ。お兄様…!! わ、私、言いたい事があったんです。
私、お兄様の事が大好きですっ!! ずっとずっと、男性として好きでしたぁっ!!」
「は、はぁっ?!ま、ましろっ…!?」
更に、さっきまで俺に散々恨み事を吐いていたましろに、乙女の顔でいきなり告白されて俺は戸惑った。
「ひっ!!ど、どうして、私がもう一人いるの!?」
「きゃっ!!ど、どうして私がもう一人いるんでしょうか!?」
よしのとましろは互いの姿をまじまじと見ると人差し指を相手に向け、悲鳴を上げた。
「????」
俺は、目の前の状況を整理出来ず、ただ目をパチクリするばかり。
二人の中身がどうやら、入れ替わってしまったようだと結論付けたのは、その5分後の事だった…。
✽あとがき✽
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