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屋根部屋令嬢の師匠はイケメン幽霊!? 虐げられた令嬢の逆転劇!・完結  作者: まほりろ・ネトコン12W受賞・GOマンガ原作者大賞入賞


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2話「記録の魔法」




「フィーネ、やっと降りてきた!

 ほんとにグズなんだから!!」


私が屋根部屋から降りると、階段の前でニナが待ち構えていた。


「申し訳ございません。

 ニナ様」


私は書類上はこの家の跡継ぎだけど、家での扱いは使用人同然。


ニナを呼び捨てにすることも許されていない。


「あなたの話し声が屋根部屋から聞こえてきたわ。

 誰かと会話してたの?」


ニナに尋ねられ、内心どきりとした。


「いいえ、私一人です」


アレクさんごめんなさい。でも、本当のことは話せないんです。


彼をいないことにしてしまった罪悪感に、胸がズキズキと痛む。


「そうよね、あんたじゃ野良猫一匹養えないもんね。

 あまりにも退屈すぎて、イマジナリーフレンドでも作っちゃったのかしら?

 それともノミにでも話しかけてるのかしら?」


ニナが口に手を当ててケラケラと笑う。


私はスカートの裾をきゅっと握り、彼女の話題が別のことに移るのを待った。


反論しても酷い目にあうだけ。耐えるしかない。


「表情ひとつ変えないなんて、つまんない女ね!」


フン、と言ってニナが廊下を歩いていく。


どうやら気が済んだらしい。


私はニナの後をついて、彼女の部屋へと向かった。


八年前にニナに乗っ取られた部屋へ。




  ◇◇◇◇◇◇





「はぁ……やっと終わった」


ニナの部屋に行った私は、髪を梳かせば「下手くそ!」と物を投げつけられ、ドレス選びを手伝えば「センスがない!」と罵られ、ハンカチに刺繍をすれば「遅い!」と引っ叩かられた。


毎日のことだけど、やはり辛い日もある。


『おかえり、フィーネ。

 また酷くいじめられたんだね』


アレクさんは私の頬に出来たあざを見て、悲しげに眉を下げた。


アレクさんが私の頬に伸ばした手は、私の体を通り過ぎていく。


それはいつものこと……。


寂しいけど仕方ない。


でもアレクさんの優しさは伝わってくる。


「大丈夫、いつものことだから」


『ごめんね。何もしてあげられなくて』


「ううん、アレクさんが話を聞いてくれるだけで救われているわ」


にこりと笑うと、アレクさんの表情が少しだけ和らいだ。


『ところでニナ、叔父さんの書斎や、ニナの部屋に忍ばせたガラス玉は回収してきたかい?』


「はい」


私がアレクさんに教わった魔法。


ガラス玉を媒介に、その部屋で起きたことを記録する。


『再生してみて』


「はい」


だけど、彼らはとりとめのない話をするだけで、なかなか証拠を記録できないのだ。


位置が悪くて記録できなかったり、かといって、わかりやすい場所に配置すると怪しまれるし、なかなか難しい。


アレクさんに教わったとおりに、ガラス玉に魔力を込める。

 

『このゴミクズ!

 満足に髪も梳かせないの!

 役立たず!!』


ニナが私に物を投げつけるところがしっかりと映っていた。


『やったね。

 一つ目は成功だ』


「ええ! ついにやったわ!

 もう一つはどうかしら?」


これで、ニナが私を虐待している証拠を抑えた。


だけど、それだけでは弱い。


彼らを追い出すには、叔父が悪事を働いている証拠を記録しなくては……!


私は叔父の部屋から回収したガラス玉に魔力を込めた。


『ワハハハ!

 兄貴が死んでくれたお陰で、侯爵家の財産を好きなだけ使える!

 フィーネなどに渡すものか!

 この屋敷はわしのものだ!』


書斎で裏帳簿を片手に、黒い笑顔を浮かべる叔父様がバッチリ映っていた。


『こんなに綺麗に映っているなんて!

 大成功だ!!』


「ええ!

 これなら叔父様達を追い出せるわ!!」


思わず顔が綻んでしまう。


「叔父様達が、お父様が残した財産を無駄遣いするのを見ているのは、耐えられなかったの!」


彼らを追い出せるだけで、元気が出てきた。


「叔父と叔母様とニナを追い出して、私がこの家の後を継ぐわ!」


長かった! ここまで来るまで本当に長かったわ!

 

「私が女侯爵になったら、アレクさんの封印を解く方法を探る為に、沢山本を買うわ!

 図書館にも行くし、学者も雇うつもりよ!」


私がにっこりと笑うと、アレクさんは嬉しそうに微笑んだ。


『僕のことは気にしなくていいのに』


「そんなわけにはいかないわ」


アレクさんを元の姿に戻したい。


彼の温もりを知りたい。


「待っててお父様、この家を伯父様達から守ってみせる!

 だって私が本当の後継者なんですもの!」


私は勝利を確信し拳を握りしめた。







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