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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 12章 Snow Labyrinth

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1話

「・・・はあ?」

俺と、ここで暮らす?? 何を言っているんだ、こいつは。


気が付けばいつの間にかスクリュー音も止まり、静寂が周囲を包んでいた。


「―そう。この子もそれを望んでいるわ。」

自分の胸に手を当ててそんなことを言う女。


「・・・笑えない冗談だ。ラズリーを返してもらおう。」

具体的にどうすれば良いのかは分からないが、とりあえず無理やりにでも連れ帰るしかないだろう。


「貴方がここに居ればいいのよ。」

そう言うと、手のひらをゆっくり上にして、何かを溜めるような仕草をする。


―何だ?

不思議に思って見ていると、女の手の上に魔力の輝きが溢れるのが見えた。


「―!」

俺は素早く後ろに回避するが―


どぷんっ


―は???

俺の周囲に水球ができ、俺の身体はすっぽりとそれに覆われてしまう!


ガボガボッ


―――まずいっ!!!気道の中まで水が入り込んできやがった!!!!!

離脱しようと手足をバタつかせるが、どうにもこうにもならない。


―水の魔法

ラズリーは水、氷の属性を使用することができる!

そして、ラズリーが本当にこいつの転生体であるのであれば、その属性も同じ可能性が高い!


「―苦しまずに楽にさせてあげる。」

ゆっくりと手を前に広げるラスティア。


すると、どんどん周りが冷えていくのを感じる。


―やっべえ!!!

氷ついてきやがった!!!どうする???考えろ!!!


ガボッ


俺の雷は不定形であり、纏わりつく水を直接攻撃することはできない!かといって、通常の物理攻撃で水を殴っても意味がないことは明らか!!!まして気道の中の水など頼みの迅雷・雷切を以てしてもどうしようもない!!!!!!


咄嗟のことで気が動転する。どうにか思考を巡らせているうちにも、どんどん自身の周囲が氷に覆われていく!!



――ダメだ!落ち着け!!冷静な判断をしなくては!!!!



『電気分解』

そのとき、突然、その単語を閃いた。両の手に素早く魔力を集中させ、繊細な魔力操作に全力を注ぐ!!!


―おおおおおおおおおお!!!!

そして自分の周囲にそれを展開させる!!!



パアアアアン!!!

今まで俺の周囲を取り囲んていた水球が割れ、蒸発する!


俺は直ちに電撃を切る!!!水の電気分解で発生するのは、水素と酸素!



―冷や汗ものだぜ!!!


「ゴホゴホッ!―何しやがる!!!」


「まあ!さすがイシュバーンね!」

何故か嬉しそうなラスティア。


「・・・水はだめね。」

ぽつりと呟くラスティア。すると、こちらに手を広げ、それを瞬時に展開する!


—多重魔法陣!

俺の知る限り、それで展開される魔法は―!!!


―間に合え!!!

俺は自分の周囲に再度電撃を展開させ、熱を!!!熱を保つ!!!




「コキュートス」




ラスティアがそれだけ呟くと、

キィンという甲高いとともに、キラキラと舞う冷気に氷つく大気、氷結された世界が顕現する。




―せええええeeeeeeeeeeeeええええええええええふ!!!

一度(いちど)見ておいてよかった!!こんなの生身で食らったらアウトだ!!!


この規模であれば、おそらくこの船全体が凍り付いていることだろう。以前ラズリーの展開したコキュートスよりも一段と輪をかけて威力は高そうだった。


―こいつ、まじでヤル気だ!!!

ここはまずい。せめて甲板に出る必要がある!こんな狭い所であの女とやり合うのは分が悪い!


「―あら?」

女は手を顎にあて、首を傾げる。


「・・・おかしいわね?」

そう言うと、そっと爪を噛むラスティア。


何事かをブツブツと呟いているが、俺はその間に、その場を離脱することにする!!!




「――あばよ!迅――!!!!?」


その瞬間、垣間見た彼女は、(ひど)(さび)しそうな様子でこちらを見つめていた。それはもうずっと長い間、独りぼっちでただ自分の爪を噛むことしかできなかった、ほんのちっぽけな少女のようで。




――迅雷


一陣(いちじん)の雷光となり、俺は一気に駆け上がった。






「はあ、はあ・・・。」

何とか食堂まで戻って来た。だが、ここも凍り付いている。


とにかく熱を保たねば、すぐに凍えることになるだろう。魔力量が心配だが、もはや気にしている場合ではない。


「どうする・・・?」

本当ならば、あの女に迅雷を叩き込むべきなのだろうが、それが仮に成功したとして、助かることができるのは俺だけ。


「それじゃ意味がねえんだよ!!!」

ドンっと机を叩くが、


「―ッ!」

机の上が信じられない位、冷たい。


―打開策はないか?

だが、今の所、俺ができる可能性のあることは、迅雷で接近し、手刀を打ち込むことでその意識を刈り取ることぐらい。


「・・・だが、アレに、そもそも近づけるのか?いや、近づけたとして狙い通りにいくか?」


相手の手の内が謎であるので、できれば無暗に接近することは避けたいし、ラスティア相手に「意識を刈り取る」といった生ぬるい方法が通用するとは到底思えない。



「――どうすりゃいいんだよ・・・。」

俺は途方に暮れる他なかった。

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