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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 11章 幽霊船

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19話

「お菓子・・・?」

一体何を言い出すんだ、こいつは。こんな所で食べられる物が出てくるとは到底思えない。


「そこに座ってて!」

そう言うと、いそいそとそいつは右手にある扉の先に向かう。


「あれ・・・?えっと、おかしいな?」

部屋の奥をごそごそと探すが、お目当てのものが見当たらないようだ。


どうしたものかと焦ったが、おかしげなものを出されなくて一安心ではある。


「おかしいなあ?あ、いたた・・・。」

するとどこかを気にするような声が聞こえてきた。


様子を伺いに厨房に行くと、頭を押さえて蹲るそいつが見えた。


―どういうつもりだ?

声をかけるのを一瞬ためらってしまう。

しかし、百年以上も放浪していた船で準備された食事などと、一体(いったい)何を企んでいるのかを知る必要がある。


「どうした?」


「・・・うん、大丈夫・・・。」

すると、よろめきながら立つ女。


「こんな所で食べられる物があるとは到底思えないが、何か見つけたのか?」


「うん、ここにはね、私とあの子でこっそりと隠しておいたお菓子が――」


そこまで言うと、急に能面のような表情になる女。


「そう・・・ね。こっち、こっち。」

そして、突然俺の袖を引っ張り出す。


「おい・・・!急にどうしたんだ!」

訳が分からない。


俺はその手を振り払う。


「ひどいよ・・・。」

こちらを見て涙目になる女。


「あ、いや、すまない・・・。」

何故か後ろめたさを感じる。


「案内、するから・・・。」

そう言うと、俺をどこかに案内したがる女。


―罠か?いや、どこからが罠だ?

相手の意図が全く分からない。何をするつもりだ?


だが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。レティたちの行方について何か分かるかもしれない。


―やむをえないか

ラズリーの姿をした、ラズリーではない存在。そんなものに翻弄されっぱなしであり、我ながら非常に情けないと思った。


俺は女の後をついて行くことにした。




途中、蠢くモノたちとすれ違うが、女は気にした様子もない。


「・・・おまえには―。あれらが見えないのか?」

蠢くモノの一体を指で示し、女に問う。


「見える・・・?みんな知り合いだからね?」


―知り合い?

そんなことは聞いていないし、それらと知り合いというのもかなり奇妙な話だ。一体アレは何だと言うのか?


「知り合いなのか?あれは一体何だ?」


「ふふ、みんな、優しくしてくれるよ?」

会話が嚙み合っていない。


―さっきから何だ、これは?

まるで何かの映像の録画を見ているような気分だ。


「・・・気にしても仕方ないか。」

俺はあえて女に聞こえるようにして言う。


「うん、だからね、行こ?」

こちらに振り向いて言う女。だが、その目はどこか虚ろで、ここではないどこかを見ているようだ。


「こっち、こっち。」

俺たちは蠢くモノの脇をすり抜けるようにして船底へ向かう。




すると、とある扉の前で俺たちは立ち止まる。


―こんな場所あったか?

ここに来るまでの道には見覚えがあったが、辿り着いた先は見たこともない場所だった。



「―お姉ちゃん、その人をどうするつもり?」


そう言ったのはサフィラだった。その表情には怒りが浮かんでいるように見える。



「・・・そこをどきなさい、サフィラ。」

すると、低く、静かな声で言う女。


「・・・どかない。僕はこの人にお姉ちゃんを助けてって、頼んでいるんだ。そんな人をどうするつもりなの?」


「・・・助ける?」

不思議そうな顔をする女。


「そう。この忌々しい場所から僕たちを解き放つことができるのは、彼しかいない。」


「―ふふ。・・・あはは!!ここは私たちに残された最後の楽園よ?サフィラ、貴方のために私が用意したと言うのに!」


「もういいんだ・・・。僕たちはこの時代にいちゃいけない・・・!」


「・・・」

すると、女はギィっと扉を開けて、その中に入って行った。


「―おい!待てよ!!」


俺は女を追いかけようとして、


「・・・お兄ちゃん、この先にあるモノを見たら、それをすぐに壊してほしいんだ。お兄ちゃんの技ならそれが出来るから。他の人たちはきっと大丈夫。」


「おい、あいつは―、ラズリーは、どうなる!?」


「あの子は、気の毒だけど―。」


俺はそこまで聞いて、すぐに走り出す!!!


「―必ずだよ!この船から出るにはきっと、そうするしかないんだ!!」

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