17話
そもそもお姉ちゃんとはどんな人間であるのか、会ったことはない。
しかしきっと俺の良く知る人に似た姿をしているのだろうと、何となくそんな感じがした。
「・・・だが、決して友好的な存在であるとは思えないんだよな。」
それこそが問題である。
「とにかく、今はラズリーとレティが心配だ。」
俺は大急ぎで食堂にまで戻ることにした。
ギィィイィイィ
静かに漂う船を、走る―
―キィ
食堂の扉を開けると、中には俯いているラズリー一人だけだった。
「ラズリー!」
呼びかける!
「・・・イシュバーン。」
涙目になっているラズリー。
「無事か!?レティはどうした!」
「・・・分からないわ。目を離した隙に突然姿が見えなくなったの。」
やはり、転移魔法陣でどこかに飛ばされたのだろう。
「おそらくは転移魔法陣だ。敵の正体が段々分かってきた。」
「・・・みんなを探すの?」
そう言うラズリーの口元が笑った気がした。
―??
気のせいか?
「―そうだな。だが、それには敵を倒す必要がある。きっと強敵だろう。」
違和感を覚えるが、気にしないことにする。
「・・・そう。私も行くわ。その敵はどこ?」
「分からん。だが、甲板に行けば、手がかりがあるはずだ。だが、ラズリーは・・・」
きっとあの勇者はまだそこにいるはずだ。
「——私も連れて行って?」
そう言って、微笑むラズリー。
「あ、ああ。」
微笑むラズリーに得体の知れない何かを感じるが、それはわずかな違和感でしかない。
ぴょんっと跳ねて、
「行きましょ!」
何故だか嬉しそうにするラズリー。
「・・・」
そのような反応をするのは彼女らしいと言えば彼女らしい。――こんな船の上でなければ。
あの場所に行けば何か分かるかもしれない。
俺はラズリーを連れて、上に登ることにする。
「♪♪」
途中、うようよといる黒いモノを気にした様子でもない。
―こいつは誰だ?
しかし、ここは気が付かないふりをした方が良さそうだ。
甲板に出ると、やはりと言うべきか、先ほど戦った勇者がいた。
だが、あれほど感じたプレッシャーも今は、感じはしない。
―なぜなら
ギュッと俺の裾を掴む彼女の手の方が、ずっと恐ろしく感じられるからだ。
「・・・後ろに下がっていてくれないか?」
「うん!」
そう言うと、ソレはにっこりと微笑んで、俺から離れた。
「―ふぅ。」
俺は目の前の敵をまっすぐ見る。今のため息が安堵のため息であることは、決して悟られてはいけない。
・・・目の前の黒い騎士も強敵であることに違いはない。気を引き締めなくては。
ぐっと剣を構える嘗ての勇者。そして―、
「・・・光よ。」
光の刃を放ってくる!
―その攻撃はもう見飽きたぜ?
それをひらりと躱し、素早く踏み込み、魔力と闘気を込めた全力の拳を叩き込む!
「すごいすごい!」
後ろからそんな声が聞こえるが、気にしない。気にしてはいけない。
硝子のはじけるような音とともに、かつて「勇者であったはずの何か」が盛大に吹き飛んだ。
―ハリボテの勇者か
しかし、その手に持つ聖剣だけはホンモノである。
タンッと距離を取り、相手の攻撃に備える。
―おそらく次の攻撃は
すると、
思った通り、剣を突き立てる動作をする黒い騎士―
「その手は食うかよ。」
一度見た攻撃である。およその射程については既に把握している。
目の前に迫り来る光の塊に対して、上に跳ぶ!!!
―もっとだ!!!迅雷!!!
更に上に跳躍し、上から見えたのは、剣を振り下ろし、大きく隙を晒した敵の姿だった。
「―雷切」
俺は手に雷切を作る。
そして、空中で止まった次の瞬間、剣を下に向け、全身に魔力を充填させ、空を蹴る!!!
「オオオオオオオオオオ!!!!」
動きを止めた黒い騎士に向かって垂直に剣を突き立てる!!!
自由落下のスピードと雷切の威力が合わさって、まさに雷のような一陣の閃光が走る――
敵の静かなる叫びが聞こえた気がした。
タンッ
少し離れた位置に着地する。
黒騎士は何度か再生しようと試みるが、真っ直ぐ上から雷切が突き刺さっており、少しずつ欠片になり、やがて消えたのだった。




