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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 11章 幽霊船

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13話

「まずい!!!ハーヴェル、食堂まで戻るぞ!」


振り返るが――


ハーヴェルの姿がどこにもない。


「おい!ハーヴェル!!?」

俺は焦ってハーヴェルを呼ぶが、やはり返事はない。


―まじかよ

先ほどまでは確実にいたのだ。それこそほんの数秒前までは!!!


「・・・くそ!」

ハーヴェルを探すのは後だ!今は食堂に置いてきた二人が心配だった。


俺は大急ぎで機関室を出る。

先ほどとは異なり、ゴゥン、ゴゥンという音が聞こえる。おそらく船に備え付けられたスクリューが回転している音、あるいはそれに連なる部品が動く音だろう。しかし、これは明らかにおかしなことだった。なぜなら―


―動力源の魔石は割れて使い物にならなくなっているはずではなかったのか!?


だが、そのことについて今考えたところで仕方ない。今は、食堂の二人が気になった。


走る―

廊下に出たとき、俺はその異常な光景を目の当たりにした。




人のような不気味な黒いモノがそこかしこにうろついている


―何だ、こいつらは!!??

ギョッとして立ち止まる。


「・・・どうする?」

物陰に隠れて息を潜める。


―だから言ったのに

すると、いつか見た男の子が目の前に現れていた。今は魔眼を使ってはいないが、明らかに見ることができている。


―彼女が魔力を使ったんだ。僕も今は姿を見せられる


「・・・どういうことだ。」

声を押し殺す。本当は大声で問い詰めてやりたいが、今そうするわけにはいかない。


―僕はサフィラ。この船の仮初の主さ


「皇帝、サフィラ・・・!」

やはりこの船はロデリア聖王国のもの、そして、この船は―


―そう、僕たちの。ロデリアの最後の希望だった


「・・・」

俺はここで何が行われたのかを察する。何よりも、今現れている不気味な黒い影にはどこか見覚えがある。


「―ゼヘラか。」

やはり、俺の知るあいつらと、ロゼリオ聖王国を滅ぼした者どもは同一の存在。


・・・そうだね。僕たちも最初はただのならずものの集団だと思っていた


「・・・違ったのか?」


俺の問いかけに対し、無言で頷く。


―僕たちが敗れるとは露にも思わなかった。僕たちには数多くの優秀な魔法使いがいたし、何よりもフリージアの加護を受けたラスティアがいたから


「・・・まさか、神の愛し子か。」

フリージアとは、神々の中でも氷を司る存在のはずだ。


―そう。よく知っているね


神の愛し子とは、文字通り、神の権能の一部を行使することのできる者であるらしい。もちろん、原作には記述のみの存在であるし、実際にもそういった者は出てこない。伝説の存在であるとされる。


よく似たものに極大魔法の使い手があるが、それらは現在使い手がいないだけで、過去にはその使い手が居ることが明らかにされており、言ってしまえばただその存在が珍しいだけ。しかし、神の愛し子はそれとは全く異なり、文字通り伝説上の存在である。


―――この世界には神がいる―――


俺たちが詠唱の際に呼ぶ存在は、神代の時代、かつて実在したとされる。その神話上の存在を呼び出すことができる者もいる、そういった話だった。


もちろん、神の種類によっては、決して愛し子を持たないとされる神もいる。例えば、サンダーボルトでお馴染みのイシュヴァルなどは、人を守護するどころか、人間を取るに足らない存在として、国を丸ごと滅ぼしたなどという話がある。


「だが、神の愛し子はラスティアといったか? そんなやつがいて、敗北することなどありえるのか?」


・・・僕の、せいなんだ

そう言うと、サフィラは顔を大きく歪ませ、姿を消した。


「・・・は?」

―まじかよ!どうすればここから脱出できるのか聞きそびれた!


俺は物陰から姿を現すが、先ほどからうろつく不気味なモノは、俺の様子を気にした様子はない。


船上をうろうろしている不気味なモノたちだが、こいつらにどうやら攻撃する意思はないということ。何を目的としているのかは知らないが、今はまだ船をうろついているだけのようだ。


「速くラズリーたちの所に戻ろう!」

俺は急いで彼女たちがいる食堂へ向かうのだった。

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