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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 11章 幽霊船

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11話

「レティ、機関室はどこにあると思う?」

怒るハーヴェルをよそに、俺はレティに聞く。


「え・・・?でも・・・。」

レティは気まずそうにハーヴェルを見る。


「イシュバーン!!俺の質問に答えろ!!」


「・・・全く。俺にはお前の相手をする義務はない。まあ、決闘のためお前がわざわざ対価を払うというのであれば、話は別だが。」


「――イシュバーン、貴様・・・。」

ハーヴェルが信じられないといった表情をする。


一体(いったい)何にそんなに(こだわ)っているのか知らないが、俺なんぞを気にしていては、お前も所詮はそこまでということだ。他を当たったらどうだ?」


「・・・金があれば、俺と決闘をするか。」

ぽつりとハーヴェルが呟く。


「―ふん、そうだな。わざわざ決闘をするのであれば、せめて金貨でも投げてよこすぐらいはしろ。」

俺はニヤリと笑う。


「・・・・・・」

ハーヴェルは何も返事をしない。


―さすがに馬鹿馬鹿しくなったか


もちろん本当に金貨を投げてよこす、なんてことはしないだろうと思っていてこその言動である。

ハーヴェルは俺とは違い、特に決闘などの勝負事に対しては高潔な精神を持っている。おそらく、勝負事に対して金を絡ませるのはそのプライドが許さないだろう。


あるいは仮にハーヴェルが俺との決闘に乗り気であるとしても、後半であれば金貨を持つような場面もあるが、原作上今の時期はまだ序盤である。その片鱗を見せてはいるとはいえ、今はまだハーヴェルは平民であり、勇者に任命される前。原作の進行具合を鑑みて、ハーヴェルの手持ちを推測したというのもある。


「レティ、機関室はどこにあると思う?」

もう一度レティに聞く。


彼女はチラッと黙り込むハーヴェルを見て、


「きっと、船の下の方じゃないかな?」


「・・・ガーランドの話では、機関室を見れば、この船が実際に動いていたかどうかが分かると言っていたな。」


「うん。でも、危険だと思う・・・。実際に機関室を見て、この船が本当に動力で動いているかどうかを確認しても、きっと意味のないことだとボクは思うよ。」


とはいえ、何もしないのであればやはり状況としては相も変わらずジリ貧だろう。


「レティはここでラズリーを見ていてくれないか?機関室には俺が行ってくる。」

レティは船の下の方だと言った。階段を降りていけばいずれその場所に辿り着くだろう。


「待て、イシュバーン。」

しばらく黙り込んでいたハーヴェルが口を開いた。


「何だ?」


「――俺も行く。」


「・・・分かった。」

本音を言えば、ハーヴェルにはラズリーとレティを見ていて欲しかったが、ここから機関室に行くとなればそれなりの距離を移動する必要がある。


そして、確かに俺一人で探索するというのも、若干の戦力不足である感は否めないことだった。



ギィィィィ

相変わらず船の軋む音がする。船は大海原に浮いているので、時折、揺れているのが分かる。


「イシュバーン、先ほどのことは覚えておけよ。」

ハーヴェルは静かに言う。


「決闘云々のことか?本当にお前が金貨を得たなら、もっと有意義なことに使うべきだろうな? 頭を冷やせということだ、ハーヴェル。」


「・・・」

黙るハーヴェル。


しかし、今は海も穏やかだが、場合によっては嵐に遭遇する日もあっただろう。そう言った日をこの船はどのようにして乗り越えたのだろうか?


「―やはり魔法か?」

俺は独り言を言う。


現在の状況を生み出すことのできる魔法の種類は、結界の魔法だろう。

どのような結界を生み出すことができるかはその種類によるだろうが、強力な結界を発動させる魔法使いは確かに存在する。


――だが、結界の効力が百年以上もの間保持されているということは、流石にあり得ないのではないだろうか?


いくら優れた魔法使いであるとしても、結界を維持するためには張り直しをするという作業が不可欠であるはず。


俺は先ほどから言葉を発しないハーヴェルを見る。こいつも魔法のセンスはあるが、そういった魔法に関する知識についてはそれほど詳しくはないはずだ。そしてそれは、自身の扱うことのできる魔法以外であれば猶のことだろう。


今の俺たちのメンバーの中では、そういったことに詳しいのはラズリーであるが、そのラズリーは先ほどから明らかに様子がおかしいということも気になることだった。

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