18話
「セバス、これは今日の肉だ。」
「これは・・・!坊ちゃん、この肉は何の肉でしょうか?」
「サラマンダーだ。森で遭遇した。」
「なんと・・・!坊ちゃん一人で倒されたのですか?」
「当然だろう?俺以外に誰が倒せるというのか?」
「ええ、ええ、それは・・・その、そうですが、でも本当に?」
「ふっ。有難く受け取っておくが良い。・・・ちなみに食えるのか?」
ここで俺がサラマンダーを倒したと言ったところでセバスは信じるかどうか分からない。さらっと次の話題に進む。
「ええ、そうですね、料理長に聞いてみます。」
そう言うと、セバスは調理室に向かう。俺も肉を持って、その後に続いて調理室に向かうことにする。ちなみに肉はそれなりの重さがある。
「サラマンダーの肉ですって?」
料理長が言う。―名前は・・・確かロドリゴだったか?まあ料理長は料理長だ。
「食えますが・・・。冒険者でも雇ったんですかい?」
「ええ、それが、坊ちゃんが一人で倒したと。」
「坊ちゃんが?・・・そういうこともあるんですかねえ?」
セバスも料理長もサラマンダーの具体的な強さについて今一つピンと来てはいないらしい。
俺も一瞬で仕留めたから、まともに戦ったとは言い難い。しかし、装甲の厚い皮膚を持っていたことからも、単純に戦闘をした場合苦戦することは間違いなかった。
「サラマンダーの肉はどうやって食うんだ?」
俺は顔を出して料理長に聞いてみる。
「やっぱり唐揚げですかねえ?サラマンダーの肉は鶏肉のような味なんで、カリカリの唐揚げができるんですよ。」
「なんだ、そんなに高級品ではないんだな。」
「いえ、坊ちゃん。酒場なんかでは高級品ですぜ。なんせエールにピッタリなんでさぁ。」
「今日はもう遅い。明日の夜はボア肉のステーキとサラマンダーの肉の唐揚げで決まりだな。セバス。エールがあるならみんなに出してやってくれ。」
「あるにはありますが。でも良いのですか?」
「構わん。親父にバレたら、このイシュバーンが大酒を食らったとでも言っておくがよい。」
「流石は坊ちゃん!話が分かりますねぇ。」
料理長が顔を綻ばせて言う。
「ふっ。感謝するがよい!」
そう言って俺は自室に戻ろうとすると。
「坊ちゃん、今日の飯はどうしますかい?」
そうだった、今日は俺の飯の希望が通るんだったな。
「なら、少しだけそのサラマンダーの唐揚げとやらを作ってくれないか?」
「ガッテンでさあ。」
翌日の早朝、俺はいつもの自主練ではなく、森に入り、サラマンダーの様子を見に行くことにする。
サラマンダーの死骸は昨日と変わらずそこにあったが、そこにもう一体のサラマンダーがおり、どうやら昨日俺が倒したサラマンダーを食っているようだった。
・・・ちょっとグロい。この森は、実はそこまで安全な森ではなかったのかもしれない。
「そうは言ってもここでの鍛錬を怠る気にはならないんだよな。」
むしろ、今の俺にとっては好都合だ。これから降りかかる厄介ごとの数々を乗り越えるためには、実際に動く敵を相手に鍛錬することが必要である。
その点、ボアやサラマンダーは、鍛錬するには恰好の相手である。
肉にもなるし。ぶっちゃけ、鍛錬の相手というよりは、食料確保の方がモチベーションとしては大きいかもしれない。
ただし、狩をする際には、取りすぎないようにしなければ、生態系に悪影響を及ぼす。
特にサラマンダーは、遭遇頻度からして、そんなに数がいないのかもしれない。
それだけには注意する必要があった。
ちなみに昨日のサラマンダーの唐揚げは、それは美味かった。昨日の残りもまだあるだろう。
――今日の夜はセバスに言ってエールの一つでもこっそり出してもらおうか。
俺はサラマンダーの死骸を食うサラマンダーを放置し、夜の食事を楽しみにしつつ、その場を立ち去ることにするが、
―存在進化
「・・・?」
なぜか分からないが何の脈絡もなくそんな単語が思い浮かんだのだった。




