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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
1部 転生した悪役貴族 1章 迅雷のイシュバーン

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16話

あれから、未だ俺はジンライの制御を完璧にできたとはいえない状態だった。


―このままじゃあまずいな、そろそろ模擬戦だというのに。


内心ではかなり焦っている。魔法演習にしても、ルディの魔法訓練にしても、その間何か得るものはないかと目を光らせていたが、今の段階ですぐに活かせそうなことはなかった。


今日もやるか。


目を閉じて

「ジンライ」

俺の身体を雷が覆い、そして

―ビュン


やはり、目標地点からずれる。

まだまだ、空間把握が甘いのだろう。目を閉じた状態で距離感・方向を把握することができれば。問題はどうやってそれをやるか、だ。


こんなところで踏みとどまることはできない。

―もう一度。


「ジンライ」

バリバリバリッ

―ビュン


さっきより大きくずれた。

「ふぅー」


マナポーションを飲み、俺は空を見上げる。満点の星空は今日も綺麗だ。


そういえば。広い空間を認識する時、レーダーというものがあった。あれは電磁波を使用したものだった。ソナーのように音波を自在に操ることはできないが、電磁波なら。


―俺にもできるのではないだろうか?


そう思い、周りに電気を少しだけ放出してみる。


ピリピリッ

だが、特にこれと言って変化は見られない。


もう一度。今度は目を閉じて。

ピリピリッ

すると、目を閉じた状態にもかかわらず、周囲の光景がぼんやりと輪郭になって浮かんできた。


これは思いもよらない成果だ。

特に、うっそうと生い茂る森の中でも他の動物、たとえば向こうの茂みの奥にはボアがいる、といったことまで判別できるようだ。


もちろん、欠点もある。これは生体に強く反応し、無機物の様子はそのまま透過するか、ぼやけてしまうようだった。この魔法?を使用する場合、単体で使用するか、ジンライと組み合わせる時は、周囲の状況を確認して使用することが必要だろう。


さっき茂みの奥にボアがいたな。この距離なら気づかれはしないだろう。


「天に住まう神イシュヴァルよ、その名において我は命じる。唸れ!サンダーボルト!」

そう唱えると、あっさりボアに命中した。


ちなみに、サンダーボルトを単発で放出するのであればこれくらいで問題ないのだが、複数のサンダーボルトを一度に放出するとなると、それは長ったらしい詠唱になるし、必要な魔力もかなり多くなるらしい。


よく物語で複数のファイアーボールを同時に放つことができる魔法使いがいるが、そんな真似は俺にとってはできない。


宮廷魔術師くらいになれば、そんなことすら詠唱省略をできるらしいが、別に俺は宮廷魔術師を目指すわけではない。


俺は、自分自身の戦闘スタイルを極めていくことこそが最優先だった。


「今夜はステーキだな。」


これまでは親父と弟がいたために、おおっぴらにボア肉を食うことができなかったが、今は違う。これだけの量の肉を一気にステーキとして食う事すらできるのだ。


っと、思考が食い物の方にいっていた。今はそれどころではない。


さっきの空間を把握する魔法はその通りにレーダーとでも名付けておこう。


目を閉じ、レーダーを放つ。すると、周囲の様子がぼんやりと分かる。

その中で、俺は移動したい地点に目印をつける。

そこだ!

「ジンライ!」

バシュッ


目を開いてみると、まさに移動したい地点にピッタリと着地していた。


―成功だ。ついに、やったのだ。


「うおっしゃあああああああああああああ!」


俺は叫んだ。だが、次の瞬間に、すぐに冷静になる。


このやり方は模擬戦では実践的ではない。目を閉じ、レーダーを使用し、着地点を決め、ジンライを発動させるまで数秒くらいは必要なのだ。

そんなことをやっていると魔法剣に直撃するだろう。


レーダーという思わぬ副産物を得たことは喜ばしいが、魔法剣の発動を見てからでもジンライによって回避することが必要だった。


しばらく時間をあけ、マナポーションを飲む。まだマナポーションには余裕があるとはいえ、ジンライの魔力効率の上昇も今後の課題だろう。


もっとも、今は目を開けた状態で、瞬時にジンライを発動させることが重要である。



魔力も回復してきたことだし、今度は目を開けた状態で鍛錬を続けることにする。


「ジンライ」

バリバリバリッ

―バシュッ


やはり、目を開けた状態だとうまくレーダーが使用できないためか、距離がずれる。


もう一度。今度は距離の正確性を意識して。

「ジンライ」

―バリバリッ

―バシュッ


今度は、距離はほとんど同じだが、方向が微妙にずれる。


俺の目指すものは、魔法剣の射程ギリギリでやられたふりをすることである。距離か方向が少しでも狂えば、直撃するおそれがあるのだ。


「―これはまだ鍛錬が必要だろうな・・・。」


俺はもう一度空を仰ぎ見るのだった。

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