第478話 現状の確認と皇子妃達との談話。
クリフ達王家の者が居る宿の一室にて。
「そういう物なのですね。」
武雄がクリフとニール、そして文官から現状の説明をされて頷く。
席の前には町周辺の大地図が広げられていた。
「タケオ様、どうしますか?」
アリスが聞いてくる。
「町長殿、対応方法としてはどうなのですか?
規定通りなのですか?」
「・・・規定を拡大解釈しています。
本来ならこの町を防衛することが主義務ですが・・・そうすれば近隣の村に魔物が向かうと見捨てないといけないのです。
実は若干ですが、魔物達が居る所とこの町の距離と近隣との村との距離では村の方が近いので討伐規定での近隣の村の防衛という所を拡大解釈しています。
両殿下そしてキタミザト殿とアリス殿には申し訳ないのですが、万が一、この町に向かって来たならば対応していただくしかないと考えています。
もちろん、王都からの後詰が間に合うのでしたらそちらで対応をいたします。
ですので、何卒、その間はご辛抱頂ければと伏してお願いいたします。」
文官が頭を深々と下げる。
「自分たちの身は自分で守るようにと言われていますから問題はございません。
それに私達に依頼が出来ないというお立場も理解させて頂きました。
そうですね、近隣の村を見殺しにする状況ではないでしょう。
私は町長殿のやり方で異議はありません。
ですが、もう少し情報が欲しいですね。」
「うむ、確かにな。
兵士の報告を信じないわけではないが詳細が少ないとは感じる。
だが、近寄ってどこかに移動されるわけにもいかないのが現状だな。」
ニールが頷く。
「そうですね・・・
ヴィクター。」
「はい、主。」
「コラとモモを連れて偵察してきなさい。
コラ達なら人間ではわからない所の詳細もわかるでしょう。
それと基本的に接触は厳禁です。
また状況がわかったらヴィクターは戻って来なさい。コラとモモはその場で監視を続行。
異常時の報告はモモが門前辺りからの遠吠えで。」
「畏まりました。」
「ご主人様、私はどうしますか?」
「ジーナとミアは門前まで同行して・・・コラとモモの前足の付け根にこのナプキンを結んできなさい。
町長殿、うちの配下を偵察に行かせます。
ナプキンがある魔物は攻撃しないように通達をお願いします。」
武雄は大き目のナプキンをジーナに3枚渡す。
「はい、ご主人様。」
「わかりました、主。」
ミアがジーナの肩に乗り2人して頷く。
「ラジコチカでしたね、報告は受けております。
わかりました。その様に至急通達を出します。」
町長は部屋の隅に居た男性に目配せをして退出させる。
「ミア達はこの場で待機。モモの遠吠えが聞こえるようにタマは窓際で聞いていなさい。」
「ニャ!」
タマが返事をする。
「ではヴィクター、行きなさい。」
「はい。では皆さま、一旦失礼させて頂きます。」
ヴィクター達が退出して行く。
「きゅ?」
アリスに抱えられているクゥが武雄に向かって鳴く。
「ん?クゥ、どうしましたか?
行きたかったですか?」
「きゅ。」
クゥが頷く。
「んー・・・別に行っても見てくるだけなので面白くないと思いますよ。」
「きゅ~?」
クゥは諦めたようにアリスの腕の中で丸くなって寝始める。
「はは。では、この件は情報待ちでしょうか。」
武雄が皆に向かって言う。
「うむ。タケオはどうする?
宿に戻るのか?」
ニールが聞いてくる。
「そうですね・・・待っている間にクリフ殿下の用事を片付けましょうか。」
「そうか・・・アリス、すまんがよろしく頼む。」
クリフがアリスに向かって頭を下げる。
「陛下からも言われております。上手く聞き出せるかはわかりませんが・・・やらせて頂きます。」
アリスが答える。
「うむ。
すまんが人払いした一室を用意して貰えないか?」
「畏まりました。すぐに手配をいたします。
隣室も必要でしょうか?」
「あぁ。」
「畏まりました。」
文官は退出して部屋を用意しに行くのだった。
「で?兄上、唐突に始めて良いのでしょうか?
義姉上達には何と?」
とニールが言うと。
「ニール、平気よ!わかっているわ!」
と、文官が退出したのとは別の扉が開きローナを先頭に第1皇子一家と第2皇子一家が入って来る。
「あ、タケオさん、お久しぶりです。」
エイミーが挨拶してくる。
「リネット殿下、エイミー殿下、クリナ殿下。
お久しぶりでございます。」
「ローナ殿下、セリーナ殿下、アン殿下。
お久しぶりでございます。」
武雄とアリスは立ち上がり礼をする。
「はい、お久しぶりです。」
リネットが挨拶を返してくる。
武雄はその表情を見ていて「随分と自然に笑顔を返されるようになったなぁ」と思う。
「ん?タケオさん、私の顔に何か?」
リネットが武雄に聞いてくる。
「失礼しました、リネット殿下。」
武雄は頭を下げる。
「ん?タケオさん、リネッ・・・お母様に何かありましたか?」
「失礼な事を言って打ち首になりませんか?」
武雄はエイミーに聞く。
「しませんよ。」
リネットが苦笑しながら言う。
「いえ、王都でお会いした時よりも笑顔が自然でしたので緊張が取れて来たのかと。」
「ええ。苦笑ばっかりですが、王都程緊張していません。
正確には緊張している暇がないというか・・・緊張を常にしていて慣れてきたというか・・・
タケオさん、皇子妃って大変なんですよ・・・剣を振り回している方が楽でした。」
リネットが苦笑を武雄に返す。
「・・・作法でしょうか。」
「はい・・・とっても面倒です・・・エイミーがなんであんなに上手く出来るのかわかりません。」
「お母様、慣れです。」
エイミーがぴしゃりと言う。
「うぅ・・・エイミー殿下は厳しいんです・・・キタミザト殿どうすれば良いのですか?」
リネットが本音を漏らす。
「お・母・様?・・・口調。」
「・・・タケオさん、何か解決方法はありますか?」
リネットが涙目になりながら聞いてくる。
「・・・私は平民ですし・・・その辺の作法はまったくわかりませんね。」
「いや、タケオ、王都で食事会があるはずだぞ?
王家の者達と新任の貴族達で。」
クリフが言ってくる。
「・・・どうしましょうか・・・知り合いでも作っておきましょうかね。」
「タケオ、食事会で失敗しないために何かするのか?」
ニールが聞いてくる。
「例えば対面に今の感じでニール殿下がいらっしゃった場合。
私はニール殿下の食べる方法を見て真似るとかでしょうか。」
「なるほどな。誰かを真似るという手があるな。」
「ええ。ですが、上手く行くかはわからないのでスープぐらいしか摂れないかもしれないですから部屋に何か簡単に食べれる物を用意しておくしかないですかね。」
「手を付けないのか?」
「失敗するよりかは手を付けない方が良いでしょう。
それに料理長に頼んで下げた料理を部屋に移動させて貰っておくとかして後でゆっくりと食べましょうかね。」
「私もそうしよう。」
リネットが呟く。
「タケオさんは平気でもお母様はダメです。」
エイミーが言ってくる。
「なんでぇ?・・・なんで新貴族の方が優遇されるの!?」
「違います!これからお母様は常にそういった会合に出ますからちゃんと覚えないとダメです。」
「はぃ・・・」
リネットがガックリとしながら答える。
「はは、まぁあまり急がずに覚えれば良いだろう。」
ニールが苦笑しながら言う。
「で、アリス、これがアシュトン子爵の孫娘の資料よ。」
ローナがアリスに資料を見せる。
「同い年の・・・クラリッサ・ブリース・アシュトン?」
アリスは資料を見ながら呟く。
「ええ、だから聞きやすいとは思うのよ。
で、クリフに嫁げるかの意思を聞いてね。」
「上手く行かないかもしれませんが・・・」
「それはそれよ。
結果がどうなるかはわからないけど、この娘を強引に嫁がせることをする気はないわ。」
「ええ。だからアリス、気楽に聞いて来て貰える?
決まらなくても別に構わないから。」
ローナとセリーナがアリスの後押しをする。
「わかりました。
あのタケオ様も来ますよね?」
アリスは少し怖気づいたのか武雄に救いを求める。
「私は厨房に行ってから向かいますから。
序盤戦はアリスお嬢様のみでよろしくお願いします。」
「え!?来てくれないのですか!?」
「お菓子を用意してからいきます。
それまでは雑談でもしてれば良いのでは?」
武雄は普通に返す。
「わかりました・・・頑張ります。」
アリスは覚悟を決めるのだった。
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