第3631話 ヴァレーリとジーナの摸擬戦実施。(実力者同士は決着まで行かなくても引く時は引く。)
エルヴィス侯爵邸の庭。
木剣を正面に構えるヴァレーリと小太刀の木刀でタイ捨流の構えをとるジーナが見合っていた。
「「・・・」」
両者が出方を伺っている。
「・・・アンナローロ殿、勝敗は?」
ブリアーニがアンナローロに聞く。
「ダニエラ様は戦闘では負けないと思います。
私としてはヴィクター殿の娘さんのジーナ殿がどのくらい保つのかが気になります。」
アンナローロが言う。
「ダニエラは木剣1本で大丈夫?
・・・戦闘の初めはロングソードを背に、腰にショートソード、右手にハルバードって言っていたと思うんだけど。」
「戦争の際はですね。
日常の訓練では木剣だったり、ロングソードだったり、ショートソードだったりと武器は選ばずに周囲と合わせておこなっているので大丈夫でしょう。」
アンナローロが言う。
「ふむ・・・うん?ダニエラ、構えを変えましたか?」
ブリアーニが言う。
ヴァレーリが正面に構えていたのを、右手のみにし、剣先を下げて、左手は握って左胸に当て、半身に構える。
見ようによってはフェンシングの下段の構えのようにも見える。
その構えを確認して、ジーナがジリジリと近づいていく。
ヴァレーリは下段の構えから身動きせずにジーナの行動を注視している。
「あの左手、殴る用かな?」
武雄がボソッと言う。
「いや、邪魔になるからじゃろう?」
エルヴィス爺さんが武雄の言葉に呆れながら言う。
「侯爵様、ダニエラ様ならあり得ます。
むしろジーナが振ってきた木刀を掴むのではないかと思っておりますが。」
ヴィクターが言う。
「・・・木剣だから可能だという事かの?」
「いえ、刃を磨いた切れ味の良い剣でもすると伺っていますが。」
「凄いの。」
「ヴィクター、振ってきた剣を掴むのは、握り手ですか?刃ですか?」
武雄がヴィクターに聞く。
「・・・さて、私も見たわけではありませんが、刃の部分ではないでしょうか。」
「なるほど・・・握り手部分なら私も出来そうだなぁと思ってみたり。」
武雄が言う。
「タケオなら出来そうじゃの。」
「主なら出来るかもしれません。」
エルヴィス爺さんとヴィクターが言う。
「そういえば、準備をしている時にジーナがボソッと言っていましたが、主、ジーナと摸擬戦をしたのですか?」
「ええ、王都でリツの所に1泊で遊びに行った時にね。」
「スミス様の精霊のマリ殿の訓練を頑張ったのに何も出来なかったと言っておりました。
相変わらず、1対1は強いようですね。」
ヴィクターが言う。
「ダニエラさんには勝ってはいませんけどね。」
「まぁ、ダニエラ様は異常・・・別格ですので。」
「うむ、ヴィクター、訂正になってないの。
わしから言わせればタケオの戦闘の話を聞く度にタケオも異常じゃと思うがの。」
「私が異常なら、エルヴィスさんの孫娘のアリスもですよ?」
「ははは、安心するのじゃ。
アリスは昔から異常じゃよ。」
エルヴィス爺さんが笑いながら言う。
「お爺さま、私が異常者とは笑えませんよ。」
アリスが言ってくる。
「ふむ?そうかの?
むしろ個々人で性格が違うからの。
自分を正常とするのなら、他人は全て異常者じゃよ。」
エルヴィス爺さんが言う。
「・・・なんだか変な理屈に聞こえますが・・・」
アリスが言う。
「ま、私からしたらアリスさんもタケオさんも十分異常なんですけどね。」
エリカが言う。
「あ!ジーナちゃんの間合いにもうすぐなりますね。」
アリスが言う。
ジリジリとジーナがヴァレーリに近づいていくが、ヴァレーリは全く動かずに見ている。
「・・・はっ!」
ジーナが右足を踏み出しながら思いっきり振り始める。
「・・・」
ヴァレーリが軽く後ろに飛び、ジーナの振りを避ける。
「ふっ!」
ジーナは迷わずに左足を前に出しながら、燕飛をする為に突き上げをし、ヴァレーリの顔めがけて刺突を開始、仰け反らせてから袈裟斬りしようとするが。
「・・・」
ヴァレーリが木剣を持つ右手を左に捻り、腕を軽く上に移動させ、ジーナが打ち込んでくる際の頭の位置に剣先を移動させる。
「!?」
ジーナが後ろに強引に飛びのく。
「ふむ・・・綺麗過ぎだな。」
ヴァレーリが木剣を肩に担ぎながら言う。
「ありがとうございます!」
ジーナが立ち上がり頭を下げる。
「まだするか?」
ヴァレーリがジーナに聞く。
「今一度、お願いできますでしょうか。
今度は魔眼の発動状態でお願いします。」
「うん、わかった。
魔眼でかかってくると良い。」
ヴァレーリが言う。
「・・・何もしていないのに、ジーナ様は諦めたという事?」
カーティアがヴァレーリとジーナの戦いを見ながら言う。
「私達始めたばかりの者達からすればわからないやりとりがあったんだろうね。」
ルフィナが言う。
「あれの意味がわかるのは、まだ、先だろうね。」
セレーネが言うのだった。
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