第3627話 さて・・・一番面倒な事を聞こう。(外交局から入手した噂について。)
「はぁ・・・アンナローロ、魔王国側から報告、検討依頼はなかったか?」
ヴァレーリがアンナローロに聞く。
「はい、一番知りたかった第3皇子一家領の屋敷候補の情報を頂けました。
他の事項はキタミザト殿が言ってくれました。
こちらからはありません。」
アンナローロが言う。
「では、政策関係の続きで、我が国王都からの依頼を・・・しないといけないんですよね・・・」
武雄がやる気なしで言う。
「うん?キタミザト殿がやる気が全く感じないな。
面倒事か?」
「・・・いえ、面倒です。」
「そうか。
否定なのか、肯定なのかわからんが・・・聞いてみようか。」
ヴァレーリが首を傾げながら言う。
「まずは人事局からです。
ジーナもついこの間までエルヴィス家の跡取りのスミスのお付きとして通っていました。
王立学院の教える内容に変更が加わり、周辺国の地理と歴史が新たに始まります。
その中で魔王国の歴史も教えようという事で私が添削する事になりましたが、お二人に見て貰った方が良いかと。
こちらに誤認があれば訂正して欲しいですね。
ですが、あくまで我が国で教えるので、人事局がアズパール王国としての公式見解を決めて資料を作りますので、文言はどれだけ訂正されても、その通りに教えるかは保証しかねますが。」
武雄が言いながら、ヴァレーリとブリアーニの前に人事局から貰って来た資料を置く。
「ふむ・・・まぁ、アズパール王国の教育だからな。
これを直せと言った所で直す、直さないは貴国が決めればいいのはわかるが・・・」
ヴァレーリが資料を手に取る。
「ブリアーニ王国も必要なんですね」
ブリアーニも手に取る。
「はい、とりあえず私が魔王国とデムーロ国に行った際に知った内容は、少し説明しましたが、知らなかったようですね。」
「まぁ、主観は貴国だからな。
領土拡張期だったのもあったから魔王国の事情は知らないだろうな。」
ヴァレーリが言う。
「あー、ブリアーニ王国も隣国になるからは成り立ちは知っておいた方が良いかもね。」
ブリアーニが言う。
「はい、子供達に教える、教えないは我が国の大人達が決めますが、大人達に教えておく事も必要かと思います。」
武雄が言う。
「なるほど・・・それは確かに。」
ブリアーニが頷く。
「わかった。
とりあえず、アズパール王国の考えを知るに良い機会という事だな。
この資料への訂正と、こっちの歴史資料は部下達に検討させて、何かしら回答を出させよう。」
「あ、うちも一度持ち帰って、内容の確認と歴史資料を送るわ。」
ヴァレーリとブリアーニが言う。
「ありがとうございます。」
武雄が軽く礼をする。
「で・・・こっちが本題なのですけど。
最後まできいてください。」
武雄がヴァレーリに言う。
「うん?そういう聞き方から察するに悪い内容のようだな。」
ヴァレーリが言う。
「ええ、私達にとっては良い内容ではありません。
外交局から聞かされたのですが、ウィリプ連合国の中央政府大統領や連合各国の国王が集う、新年挨拶で発したそうなのですが・・・あくまで間に何人か入るので確実な話ではありません。」
武雄が事前説明をし始める。
「うむ、続きを。」
ヴァレーリが頷く。
「『魔王国打倒を宣言し、アズパール王国に協力するように要請を出す』というのが4年後の開戦時に我が国へ通達される内容になると。」
武雄が言う。
「・・・ほぉ・・・我等を指名か。」
ヴァレーリが目を細めながら言う。
「先ほども言いましたが、何人か間に入っている伝聞情報の為、真偽は不明です。」
武雄が言う。
「だが、アズパール王国の外交局に話が上がる程度には大きい声だったようだな。」
「事が事だけに・・・と言っておきます。
無視しても良かったのですが、魔王国が独自に情報を拾われてしまうともっと大事になる、かといって魔王国の機嫌を逆なでするような内容をどうやって伺うか・・・
困った外交局が色々と魔王国と交渉している私に言ってきました。」
武雄が言う。
「ふむ・・・まぁ・・・貴国の上層部は我が国をちゃんと理解しているようだな。」
ヴァレーリが考えながら言う。
「私がちゃんと報告していますからね。
特に陛下と外交局長には一番に教えているので、この情報を無視は出来なかったのでしょう。」
「ふむ・・・で?」
「我が国の立場は、この発言で弱くなってしまいました。
ウィリプ連合国と魔王国の双方から『協力しろ』と言われたら、難しい立場になりますからね。
そしてウィリプ連合国と魔王国の双方が侵攻して、我が国が戦場になります。
もしウィリプ連合国に協力すれば、慣例の戦争の停戦は破棄されて魔王国の強大な武力で我が国の町や村は壊滅します。
逆に魔王国に協力しても、侵攻して来るウィリプ連合国は奴隷制度に積極的ですから、我が国の住民がどんな扱いを受けるのか・・・
我が国だけが割に合わないという結論になりました。」
武雄が言うのだった。
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