第3616話 明日の事はジーナには内緒です。(イーリーの雑貨店はイーリーのみが緊張感に包まれています。)
午後の研究所の3階 所長室。
「主、明日はダニエラ様とカールラ様が食事に来られますね。」
ヴィクターが言ってくる。
「・・・明日のメニューなんだったかな?」
武雄が考える。
「確認をお願いします。
それで・・・ジーナには言わないでよろしいのでしょうか?」
「驚き顔を見たいので、秘密で。」
「わかりました。
では・・・まぁ、前回と同じように出迎えるとしましょう。」
ヴィクターが頷く。
「うん、で、これから出ます。」
「はい、エリカ様の指輪探しですね?
ラルフ様の所からすぐに行けばよろしかったのでは?」
「昼食を屋敷で取らせたかったのと、イーリーさんに事前に準備させようと思って時間を取りました。」
武雄が言う。
「イーリー様の?雑貨屋でですか?」
「ええ、雑貨屋で。
宝石の類も扱っているでしょうし、事前に言えば他の店から持ってくるでしょう?」
武雄が言う。
「まぁ・・・知らない所で買うよりか協力工房を介した方が、良いかもしれませんね。
普通なら。
でも貴族家ですから、そこまで心配なさる必要はないと思いますが・・・まぁ、侯爵家の婚礼指輪を選んだ店としてイーリー様の名が上がりそうですね。」
ヴィクターが言う。
「懇意にしているのを大々的にアピールしないとね。
今後の輸出入業もありますし。」
「少々作為的ですが、まぁ、家の為ですから致し方ないでしょう。」
ヴィクターが頷くのだった。
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イーリーの雑貨屋。
店の扉には「CLOSE」の札が掛けられ、一般客が入ってこないようにされていた。
「・・・街中の有名商店にお願いして、揃えたが・・・
流石にキタミザト家の名を出すと、皆が代金は後払いで良いと言ってくれたが。
これで足りるのか!?」
イーリーが目の前に並んだ指輪を見ながら言う。
「「・・・」」
セレーネとルアーナが何も言わずにイーリーの苦悩を見守っている。
「うーん・・・これだけ集めたら十分と思う反面、気に入るものがなかったらと不安になる。」
イーリーがぶつぶつ言う。
「・・・お昼だし、一旦屋敷に帰ろうか?」
「うん、そうだね。」
セレーネとルアーナが言いあう。
「2人とも待って!待ってください!」
イーリーが2人を引き留める。
「イーリー様、私達一旦屋敷に戻って、アリス様達とまた来ます。」
ルアーナが動じずに言う。
「イーリー様、キタミザト様からの伝言が来てから方々に掛け合って集めたではないですか。
あとはアリス様、エリカ様が気に入って買えば、その代金を仕入れ元に払う、選ばれなかった方は費用負担なしで品物を戻す。
これだけですよ。」
セレーネが言う。
「うん、そうですが・・・一人は心細いです。
居てください!
昼食代も払います!」
イーリーが言う。
「いえ、こういう時は奢られてはならないとキタミザト家から言われています。」
「曰く、『昼食代を我々に奢る金額があれば、物品の購入費にあてるべき』です。
なので、昼食をここでと言われたら自分達で費用を出します。」
セレーネとルアーナが言う。
「・・・しっかりした方針ですね。
とは言え、キタミザト様とアリス様、エリカ様の訪問を1人待っているのも気持ちが焦るというか、余計な事を考えるというか・・・心細いです!」
イーリーが言う。
「はぁ・・・ルアーナ、屋敷に行って予定が変わった事を伝えてきてください。」
セレーネが言う。
「わかった。
ルフィナ達に伝えます。
では。」
ルアーナが店を出ていく。
「さてと・・・イーリー様、エリカ様への一番売りたい物から順に並べてください。
いまいち、どれを売りたいのかわかりません。」
セレーネが言う。
「・・・・・・意匠別に並べて良いでしょうか?」
「それも選ぶ際の陳列で間違ってはいないと思いますが・・・イーリー様の方が並べ方を知っているかと思います。
そうしないのはなぜですか?」
「借入店別に並べています。
この中から1つないし3つ売れますが、他は借りた店に戻さないといけないからです。」
イーリーが言う。
「なるほど。
混在しないようにという事ですね。
・・・なるほど、売り手側の事情という事もあるのですね。」
セレーネが頷く。
「ええ、そういう事もあります。
今回は高価な物を借りてきているので、取り違いは出来ません。」
「では・・・借入店別で良いので、意匠の並べ方を同じにしましょう。
そうすればキタミザト様方も見やすいでしょう。」
セレーネが言う。
「そうですね。
そういう並べ方をしましょうか。」
イーリーが動き出すのだった。
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